「仕事でミスが増えた」「家事の段取りが悪くなった」などと悩むことはありませんか?
認知症と聞くと高齢者が発症するイメージを持つ方が多いと思いますが、65歳未満で発症する「若年性認知症」があります1。仕事や家庭生活などに大きな影響を及ぼすため、初期症状の見逃しは深刻な問題につながることも。
本記事では若年性認知症について、診断時のチェックポイントや初期症状、受診先などを解説します。
若年性認知症の原因とは?
若年性認知症は高齢者の認知症と基本的な病態は同じですが、発症年齢が若いために生活や就労への影響が異なります。
若年性認知症の原因疾患は、以下のように多岐にわたります。
- ・ アルツハイマー型認知症:52.6%
・ 血管性認知症:17.0%
・ 前頭側頭型認知症:9.4%
・ 外傷:4.0%
・ レビー小体型認知症/パーキンソン病:4.0%
・ その他:12.7%
令和2年の調査によると、若年性認知症の当事者は10万人に50.9人ほどといわれており、決して珍しくありません1。
若年性認知症の症状について
若年性認知症は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などの原因によって起こり、病気ごとに診断基準が異なります。診断基準としてはNIA-AA(米国国立老化研究所/Alzheimer病協会ワークグループ)による診断ガイドラインやDSM-5基準などがあり、詳細を知りたい方は各疾患の診断基準をご覧ください。
参考までに各疾患の主な症状を紹介します2〜5。
原因疾患 |
主な症状 |
アルツハイマー型認知症2 |
・ゆっくりと進行する認知機能の低下 |
血管性認知症3 |
・認知機能障害 |
前頭側頭型認知症4 |
・進行性の異常行動または認知機能障害 ・特徴的な行動(社会的な不適切さ、無関心・無気力、共感の欠如、固執、食習慣の変化、遂行機能障害) |
レビー小体型認知症5 |
・進行性に認知機能の低下、注意や明晰さの著明な変化 ・特発性のパーキンソン症状(動作やふるえなどの症状) |
(文献2~5を参考に作成)
表中に記載した内容には「診断に必ず必要な項目」と「補助的に使われる項目」の両方が含まれています。実際の検査は疾患(病気)ごとに異なるため、あくまで参考としてご覧ください。
なお、若年性認知症の診断は複数の原因疾患を考慮する必要があり、専門医による慎重な診断が求められるケースが多くみられます。
若年性認知症の初期症状
若年性認知症の初期症状をいくつか紹介します2。
- ・ 仕事や家事のミスが増える
・ ぼんやりして反応が遅くなる
・ 物事の段取りが悪くなる
・ もの忘れが増える
・ 計算ができなくなる
・ 文字の書き間違いが増える
・ 知っている場所で道に迷う
・ 存在しないものが見える(幻視)
若年性認知症の平均発症年齢は54.4歳といわれています1。忙しい年代のため「疲れているのかな」と見逃され、発見が遅れるケースも珍しくありません。気になることがあれば受診を検討しましょう。
若年性認知症はどこで診断してもらえるのか
若年性認知症の診断に対応している医療機関の特徴や受診方法を解説します。
かかりつけ医
持病で受診している、定期的に健康診断を受けているかかりつけ医に、まずは気軽に相談してみましょう。継続して受診している医師であれば、以前との変化が伝わりやすいかもしれません。
かかりつけ医での詳細な検査や診断が難しい場合、認知症専門医へ紹介するケースもあります。
認知症専門の医療機関
何科を受診するか迷う場合は、脳神経内科や精神科の診療科を検討するとよいでしょう。「もの忘れ外来」という認知症専門外来を設けている病院もあるため、地域の病院を確認してみるのも良い方法です。
どこに行けばよいか分からない場合、高齢者福祉相談窓口や保健所、精神保健福祉センターなどに問い合わせると、認知症の知見を持つ医療機関を紹介してもらえるケースもあります。
若年性認知症を診断する流れ
医療機関を受診すると「問診→検査→診断」の流れで診察が行われます6。
問診 |
|
検査(一例) |
|
診断 |
|
(文献6を参考に作成)
若年性認知症の場合、似た症状があらわれるほかの病気を見逃さないよう、判断は慎重に行われます。
若年性認知症と診断された場合の対処法
若年性認知症と診断された場合の対処法について、いくつか紹介します。
・治療やリハビリテーション
・生活上の注意
・受けられる支援
若年性認知症の当事者は、働いている方も多く「これからどうなるのだろう」「まだ若いのに」などと不安に思うケースは珍しくありません。
治療やリハビリテーション
若年性認知症の治療の目的は進行を遅らせたり生活上の不便を減らしたりすることで、原因疾患ごとに行われる治療やリハビリテーションの内容が異なります7。
生活上でできる工夫
若年性認知症では物をどこに置いたか忘れたり、薬の服用を忘れたりすることもあります。困りごとに応じて、以下のような工夫を行うのもよいでしょう8, 9。
困りごとの例 |
家庭でできる生活上の工夫 |
どこに物を置いたか忘れる |
・物は決まった場所に置く |
忘れ物が多い |
・持って行くもののリストを作る |
用事を忘れる |
・カレンダーやスケジュール帳に予定を書く |
薬の飲み忘れや飲み間違いが増える |
・飲み方ごとに薬を分けられる容器を使う |
ひとり歩き |
・近所の方や警察に事情を話し、見かけたら連絡してもらうよう依頼する |
(文献8、9を参考に作成)
本人によるメモやカレンダー、スケジュール帳への記載が難しい場合、ご家族や周りの方が記載して確認する方法もあります。
受けられる支援
介護保険が適用されるのは通常は65歳からですが、認知症と診断された場合は40歳から利用できます10。
介護保険で利用できるサービスの例は、以下のとおりです10。
- ・訪問介護
・訪問看護
・ショートステイ(短期入所生活介護)
・デイサービス(通所介護)
・デイケア(通所リハビリテーション)
・施設への入所
ご自身の財産管理や契約などに不安がある場合は、「成年後見制度」を利用する方もいます11。
状況や希望に応じて適切な支援は異なるため、医療機関のケースワーカーや主治医、ケアマネージャーなどとの連携が大切です。
まとめ
若年性認知症の診断は「問診→検査→診断」の流れで、脳神経内科、精神科、脳神経外科などの専門医が行います。もの忘れ外来を利用する方法もありますが、まずはかかりつけ医へ相談するのも良いでしょう。
若年性認知症は「疲れているのだろう」などと見過ごされやすい病気ですが、早期に診断を受けることで適切な治療や支援につながります。
気になる症状があれば早めの受診を検討しましょう。