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成年後見制度の手続きとは?費用や必要書類、注意点をわかりやすく解説
更新日:2024-12-26

成年後見制度の手続きとは?費用や必要書類、注意点をわかりやすく解説

成年後見制度の手続きとは?費用や必要書類、注意点をわかりやすく解説

「成年後見制度の手続きって、何から始めればいいのだろう?」

「必要な書類や費用がわからなくて不安…」 

成年後見制度を検討されている方の中には、慣れない手続きに不安を感じる方も少なくないでしょう。

この記事では、成年後見制度(法定後見制度、任意後見制度)の仕組みや手続きの流れ、必要な書類や費用についてわかりやすく解説します。記事の後半では、注意点も説明しているので、安心して制度を活用できるよう、ぜひ参考にしてください。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症などによって判断能力が低下した方を、法的に保護・支援するための制度です。ご本人の代わりに財産管理や契約の締結・取消しなどを行う後見人等が選定され、例えば「悪質な業者にだまされて不要な商品を買わされた」といった場合に契約の取消しができるなどのサポートを行います1

成年後見制度の役割

成年後見制度は、被後見人の権利や利益を守りながら、必要な支援を提供する役割を担います。成年後見制度の主な役割には次の3つがあり、後見人等がこの中でどの役割を担うのかは家庭裁判所により決められます1,2

役割 具体的な内容
財産管理 預貯金や不動産の管理を担当し、契約の代理や取消しを適切に行う。
身上監護 生活環境や健康状態を把握し、必要な医療や福祉サービスが受けられるよう手続きを進める。
報告義務 家庭裁判所に業務内容を定期的に報告し、不正を防ぐ。

成年後見制度の種類

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。それぞれの制度は、利用のタイミングや支援の内容が異なります。

法定後見制度

法定後見制度は、家庭裁判所が選任した成年後見人等が、判断能力が低下した本人を支援する仕組みです。支援の必要性に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分かれ、支援できる範囲が異なります。

類型 対象となる方 成年後見人等が代理可能な行為
補助 判断能力が不十分な方 申立てにより裁判所が定める行為(民法13条1項の行為の一部)
保佐 判断能力が著しく不十分な方 借金、相続の承認など民法13条1項記載行為の他、申立てにより裁判所が定める行為
後見 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 原則としてすべての法律行為

どの類型に該当するかは、医師の診断書などに基づいて、家庭裁判所が最終的に判断します。なお、サポート役として任命された方は、それぞれの類型にもとづいて「後見人」「保佐人」「補助人」と呼ばれます。

任意後見制度

任意後見制度は、本人がしっかりとした判断能力を持っている間に、自分が信頼できる人(=任意後見受任者)を任意後見人に選び、将来本人の判断能力が低下した場合に支援してもらう内容の契約を結ぶ仕組みです。

任意後見契約書は、必ず公証役場において公正証書で作成されます。そして、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所の審判によって任意後見監督人が選任されて初めて契約の効力が発生します。

任意後見制度について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 法定後見制度と任意後見制度の違い

以下に、「法定後見制度」と「任意後見制度」の主な違いを表形式でまとめました。

法定後見制度 任意後見制度
利用方法 家庭裁判所に後見等開始の審判の申立てを行う 本人と任意後見受任者が公証役場で契約を締結
後見人等の決定

家庭裁判所が選任

本人が任意に選べる(任意後見受任者の同意が必要)

後見人等の権限の範囲

「後見」「保佐」「補助」の類型に基づく 本人と任意後見受任者の話し合いによって決定

後見等の開始時期

判断能力が低下した後に、申立てを行い開始 判断能力がある段階で契約を締結し、判断能力が低下した後、申立てにより任意後見監督人が選任されてから開始

法定後見制度は、判断能力が低下した後、速やかに支援を受けたい場合に利用できる制度です。一方、任意後見制度は、判断能力があるうちに自分の希望を反映させたい方に向いています。

それぞれの特徴を正しく理解し、状況に合わせた適切な選択を検討しましょう。

成年後見制度の手続きの流れと費用

成年後見制度の手続きや費用は、法定後見制度と任意後見制度で異なります。それぞれの手続きの大まかな流れは以下の図の通りです。

成年後見制度の手続きの流れ

参考文献3をもとに、編集部作成

法定後見制度の手続きの流れと必要書類 

 ステップ① 申立人の決定と必要書類を準備

◯ 申立人の決定

申立人として手続きを進めるのは、本人や配偶者、子、孫など四親等内の親族が基本です。市区町村長が代わりに申し立てることもあります。

◯ 必要書類の確認と準備

申立てには、以下のような書類が必要です。

  • ・申立書
  • ・住民票
  • ・戸籍謄本
  • ・医師の診断書(本人の判断能力を示すもの)
  • ・財産状況を確認できる資料
  • ・本人情報シートの写し(福祉担当者が作成)

必要な書類は、手続きを行う家庭裁判所によって内容が異なる場合があります。そのため、事前に家庭裁判所で必要書類を確認するのがおすすめです。各地の裁判所の所在地や電話番号は、裁判所のホームページから確認できます。

ステップ② 家庭裁判所へ申立てを行う

必要書類を準備したら、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てを行います。申立ての方法は、郵送または直接持参の2つです。書類が受理されると家庭裁判所による審理が開始されます。審理では、申立人が提出した書類をもとに、必要に応じて手続きの背景や状況について説明を求められる場合があります。

ステップ③ 面談・判断能力の確認

家庭裁判所では、申立人や本人との面談が行われます。面談で聞かれる事項は、本人の生活状況や判断能力についてです。また、必要に応じて医師による鑑定が行われることもあります。

ステップ④ 後見人の選任

家庭裁判所は、面談や鑑定の結果をもとに後見人(または保佐人、補助人)を選任します。親族が選ばれる場合もありますが、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることも珍しくありません。選任された後見人は、被後見人の利益を守り、財産管理や法律行為を代理等する役割を担います。

ステップ⑤ 後見人としての活動が開始

選任後、後見人の職務が正式に始まります。まず、被後見人の財産状況を記載した財産目録を作成し、家庭裁判所へ提出します。その後に行うのは、預貯金や不動産の管理、医療・福祉サービスの手配など、日常生活を支えるための活動です。後見人の業務が適切に行われていることを確認するため、定期的に家庭裁判所へ報告書を提出します。

成年後見人の選任に必要な費用

法定後見制度の申立てには、費用がかかります。主な費用は、以下の通りです3

  • 収入印紙代 3400円(内訳:申立手数料800円、登記手数料2600円)
    郵便切手代 申立てをする家庭裁判所にご確認ください
    医師の診断書作成費用 数千円程度
    鑑定費用(必要な場合)

    多くの場合は10万円以下(個々の事案によって異なります) 

これらの費用は、申立人が負担します。また、成年後見人には報酬が発生します。報酬額は、後見人としての事務内容や管理する財産の内容などに基づいて裁判所が決定します4

任意後見制度の手続きの流れと必要書

続いて、任意後見制度の手続きの流れと費用について解説します。

ステップ① 任意後見人を選ぶ

最初に行うのは、任意後見人を選ぶことです。候補者には家族や親族、友人のほか、弁護士や司法書士などの専門家も含まれます。特別な資格は不要ですが、信頼できる人物であることが何より重要です。この段階では、「任意後見受任者」として位置づけられます。

ステップ② 公証役場で手続きを行う

次に、任意後見契約を結ぶための準備として、公正証書作成に必要な書類として、本人確認ができる身分証のほか、任意後見契約の内容を記載した文書などの書類を準備し、公証役場で手続きを行います。

ステップ③ 法務局で登記を行う

公正証書の作成が完了した後、公証人が法務局に対して契約内容について登記をするよう申請します。この登記によって、契約が正式に認められ、第三者にも契約の存在が公示される仕組みとなります。

ステップ④ 判断能力が不十分になった後、申立てにより任意後見監督人が選任された場合、契約の効力が発生

本人の判断能力が低下した際には、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申立てます。監督人が選任されることで、任意後見契約が有効となり、契約内容に沿った支援が始まります。

なお、申立てに必要な主な書類は以下の通りです5

  • ・申立書
  • ・戸籍謄本
  • ・任意後見契約公正証書の写し
  • ・成年後見等に関する登記事項証明書
  • ・診断書
  • ・財産に関する資料
  •  

財産に関する資料として、財産目録など各家庭裁判所が定める書式に記入する場合があります。

任意後見契約に必要な費用

任意後見契約の公正証書の作成にかかる主な費用は、以下の通りです5

  • 公正証書作成手数料 11,000円
    登記嘱託手数料 1,400円
    印紙代 2,600円
    その他 書留郵便料など

また、任意後見人に対して契約内容に基づいた報酬が支払われます。この報酬額は、業務内容や負担の程度を考慮し、事前に取り決めた契約条件に基づいて設定されるのが一般的です。

成年後見制度を利用する際に注意したいポイント

ここでは、成年後見制度を利用する際に注意するべきポイントについて紹介します。

申立ての取り下げが難しい

成年後見制度の申立ては、一度行うと簡単には取り下げられません。この制度は、本人の権利や利益を守ることを目的として設けられているため、取り下げるには家庭裁判所の許可が必要であり、その際にはやむを得ない事由が求められます。 

申立人の意向や状況の変化のみでは許可が下りない場合が多いため、申立てを行う前に、家族や関係者と十分に話し合うことが重要です。

費用負担の見通しを立てておく必要がある

成年後見制度を利用する際には、申立手続きや後見人への報酬などの費用が必要な点に注意しましょう。主な費用は、申立手数料や登記手数料、郵便切手代などです。また、状況によっては鑑定費用が追加されることもあります。 

また、後見人の報酬は本人の財産から支払われます。報酬は、月額2〜6万円程度が一般的で、被後見人の財産額が多い場合はさらに高額になることがあります。

希望通りの後見人が選ばれない場合もある

成年後見制度では、希望する後見人が必ず選ばれるわけではありません。家庭裁判所は、被後見人の生活や財産を適切に管理できる人物かどうかを判断し、最善と考えられる人物を後見人に選任します。

その際、候補者の適性や過去の行動履歴も慎重に検討されるため、希望通りの結果にならない場合があります。

家庭裁判所の許可が必要な場面がある

本人の財産や権利を保護するため、特定の手続きには家庭裁判所の許可が必要とされます。たとえば、本人が居住する家の売却する場合などです。

許可を得るには、後見人が手続きの理由や必要な書類を家庭裁判所に提出し、承認を受ける必要があります。特に大きな契約を進める際には、事前に許可の要否を確認し、計画的に進めることが大切です。

成年後見制度の手続きは、地域包括支援センターでも相談できます

成年後見制度は、判断能力が低下した方を支えるための制度です。成年後見制度を使う事で、認知症などで判断能力が低下した場合でも安心して生活が送れる可能性があります。

手続きについては、費用や家庭裁判所の許可が必要な場面など、注意点が多くありますので、特に申立ての準備や後見人の選任は、慎重に対応しましょう。

慣れない手続きで不安なことも多いかと思いますが、各市区町村には、地域包括支援センターをはじめ様々な相談窓口が用意されています。不安を抱えている方は、こうした相談先をぜひ活用してみましょう。

(参考文献)

1. 法務省. 成年後見制度・成年後見登記制度Q&A. (最終閲覧日:2024年12月18日)

2. 長崎家庭裁判所. 成年後見人のためのQ&A(平成30年 11版). (最終閲覧日:2024年12月18日)

3. 家庭裁判所. 成年後見制度 利用をお考えのあなたへ. (最終閲覧日:2024年12月18日)

4, 厚生労働省. 法定後見制度とは(手続の流れ、費用). (最終閲覧日:2024年12月18日)

5. 厚生労働省. 任意後見制度とは(手続の流れ、費用). (最終閲覧日:2024年12月18日)

6. 大阪家庭裁判所. 成年後見人等の報酬額のめやす. (最終閲覧日:2024年12月18日)

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