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質の良い睡眠による効果と睡眠不足の影響を解説【睡眠のプロ監修】
更新日:2025-01-17

質の良い睡眠による効果と睡眠不足の影響を解説【睡眠のプロ監修】

質の良い睡眠による効果と睡眠不足の影響を解説【睡眠のプロ監修】

「昨夜はよく眠れなかったから、今日は集中力が続かない」

「忙しくて睡眠不足が続いているけど、大丈夫かな…」

こうした悩みや疑問を抱える方は多いのではないでしょうか。

睡眠は単なる休息以上に、私たちの健康や生活の質を支える大切な役割を担っています。

この記事では睡眠によって得られる効果や、睡眠不足がもたらす影響について解説をしていきます。睡眠習慣を見直すきっかけとして、ぜひ参考にしてください。

睡眠の効果と寝不足による影響

質の良い睡眠は、私たちの心と体の健康に様々な良い効果をもたらすことが明らかにされています。逆にいうと睡眠をしっかり取れないと健康や仕事の効率などにリスクが生じることとなります。

では、具体的に睡眠は私たちの心身にどのような影響をもたらすのでしょうか。

疲労回復の効果

まず、睡眠は1日の疲労やストレスから回復する重要な役割を担っています。睡眠時に分泌されるホルモンが、細胞の修復や再生を促進し疲労を回復してくれるのです1

集中力、判断力の向上

睡眠は、記憶の定着や集中力の向上に効果があることも知られています2。十分な睡眠が取れないと日中の眠気が生じることに加え、注意力が低下し、事故のリスクも高まります。

また、判断力も低下するので仕事の効率も落ちてしまうなど、様々な不調をきたします1

免疫機能の向上

睡眠時間が6時間未満の人は、7時間以上の人に比べて、風邪の発症率が高いという研究もあります3

睡眠不足が続き、いわゆる「睡眠負債」がたまった状態になると、免疫機能が低下して病気にかかりやすくなる恐れがあります。

生活習慣病などの発症リスクへの影響

睡眠時間が極端に短いと、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、うつ病などの発症のリスクが高まるとされています1

認知症の発症リスクへの影響

睡眠不足は、認知症の発症リスクを高める可能性もあります。

海外の研究によると、50歳、60歳、70歳時点で短時間睡眠だった人は、7時間睡眠の人と比べて認知症の発症率が30%増加したことが明らかになっています4 

適切な睡眠時間は何時間?

睡眠による効果を得るためには、「睡眠時間」と「睡眠の質(睡眠休養感)」を満たすことが大切です。ここでは、睡眠時間と死亡リスクの関連性について解説していきます。

死亡リスクが低いとされるのは7時間睡眠

米国国立睡眠財団の研究では、成人にとって理想的な睡眠時間は7〜9時間とされ、特に、7時間前後の睡眠が健康に良いと多くの研究が示しています5

睡眠時間が6時間未満まで短くなると、死亡リスクが有意に上昇するという研究6がある一方で、実は睡眠時間が長すぎても良くないとされています。

国立がん研究センターの調査によれば、毎晩7時間の睡眠をとる人と比較して、10時間以上の長時間睡眠をとる人では、男性で1.8倍、女性で1.7倍も死亡リスクが高まるという結果も報告されています7

ただし、必要な睡眠時間は個人差があるので、ショートスリーパーも稀に存在します。また、加齢によっても変化します。

必要以上に長く寝ようとしたり、短すぎることがないように心がけましょう。

日本人の平均睡眠時間は短い

睡眠時間について、現代の日本では平均睡眠時間が7時間22分と、世界33か国の中で最も短いです8

平均睡眠時間が6時間未満の割合も、男性が37.5%、女性が40.6%と男女それぞれ約4割の人が睡眠不足に陥っていることが指摘されています9

このような状況からも、健康のための睡眠対策が求められています。 

年齢別に適切な睡眠時間は変わる?

理想の睡眠時間は年齢によっても変わります。

厚生労働省が2023年に発表した『健康づくり』指針では、年齢ごとに推奨される睡眠時間が示されています1 

こども(小学生)     9〜11時間
こども(中学生・高校生)  8〜10時間
成人 6時間以上
高齢者  床上時間が8時間以上にならないようにする

高齢者は床上での時間が8時間を超えないようにして、適切な睡眠を取ることが推奨されています。 

睡眠の質をチェックする方法

睡眠の質をチェックする方法として、「ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)」という評価方法があります。

この評価方法は、睡眠障害を見つけたり、治療の効果を確認したりするために、病院や研究機関で広く使われています。

PSQIでは、次の項目が質問されます10,11,12

通常の寝床につく時間、寝付くまでの時間、通常の起床時間、実際の睡眠時間、睡眠に関する困難と頻度、睡眠の質、睡眠薬の服用、日中の居眠り、意欲

睡眠の質をあげることも大切

睡眠の効果を十分に得るには、睡眠時間の確保に加えて睡眠の質をあげていくことも必要です。

睡眠の質のことを「睡眠休養感」ともいいます。

質をあげるためには、まず毎日同じ時間に寝起きすることがとても大切です。体内時計が整い、自然と良い眠りにつけるようになります。

日中に日光を浴びることで体内時計が調節されるので、起床後に朝日を浴びるなど工夫しましょう1

さらに、日中の適度な運動も夜ぐっすり眠るために重要です1 

また、寝室の環境作りにも気を配ってみましょう。心地のよい温度と湿度を保ち、明るすぎず静かな環境で就寝できるようにすると心地よく眠れます。

下記の記事では、短い時間しか睡眠が取れない方のために、少しでも意識して欲しい5つのポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

睡眠と健康の関係を知って、適切な睡眠を意識しましょう

適切な睡眠習慣は、心身の健康を維持し、記憶力や集中力の向上にも繋がります。

一方で、睡眠不足などの睡眠に関する問題を抱えている場合、健康リスクを高め、仕事や日常生活に思わぬ悪影響を及ぼす可能性があります。 

十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を上げる方法を知り、実践することで適切な睡眠習慣を身につけていきましょう。

(参考文献)

1, 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイドライン2023.[https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf] (最終閲覧日:2024年12月16日) 

2, Diekelmann S, & Born J: The memory function of sleep. Nature Reviews Neuroscience.2010; 11: 114. doi:10.1038/nrn2762. 

3,  Prather A  A, et al: Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. Sleep. 2015; 38:1353. doi:10.5665/sleep.4968.

4, Sabia S, et al: Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nat Commun 12: 2289, 2021.

5,  Hirshkowitz M, et al.:National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations: methodology and results summary. Sleep Health.2015;1: 40. doi:10.1016/j.sleh.2014.12.010.

6, Itani O, et al: Short sleep duration and health outcomes: Asystematicreview,meta-analysis,and meta-regression.SleepMed32: 246-256, 2017.

7, Svensson T, et al: The Association Between Habitual Sleep Duration and Mortality According to Sex and Age: The Japan Public Health Center-based Prospective Study. Journal of Epidemiology.2021; 31: 210. doi:10.2188/jea.JE20190210.

8, OECD Gender data portal.  [https://www.oecd.org/gender/data/OECD_1564_TUSupdatePortal.xlsx] (最終閲覧日:2024年12月16日)

9, 厚生労働省. 健康日本 21(第二次)最終評価. [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html] (最終閲覧日:2024年12月16日)

10, Buysee D J, et al: The Pittsburgh sleep quality index: new instrument for psychiatric practice and re-search. Psychiatry Research.1989; 28:193 doi:10.1016/0165-1781(89)90047-4.

11, Doi Y, et al: Psychometric assessment of subjective sleep quality using the Japanese version of the Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI-J) in psychiatric disordered and control subjects. Psychiatry Res 2000; 97 (2-3):165-172.

12, 土井由利子,他: ピッツバーグ睡眠質問票日本語版の作成.精神科治療.1998;13:755.

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