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睡眠不足は認知症のリスクにつながる?注意したい睡眠の状態を解説
更新日:2025-05-07

睡眠不足は認知症のリスクにつながる?注意したい睡眠の状態を解説

睡眠不足は認知症のリスクにつながる?注意したい睡眠の状態を解説

睡眠不足が続くと、将来的に認知症のリスクが高まる可能性があるといわれています1

この記事では睡眠不足に潜む主な原因や、良質な睡眠をとるためのポイントを解説していきます。

睡眠不足は認知症のリスクに影響する?

一晩の睡眠時間が5時間以下の人は、7〜8時間睡眠の人と比較して認知症を発症するリスクが2倍になることが報告されています1

睡眠不足が認知症を引き起こすはっきりとしたメカニズムはまだ研究段階ですが、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める可能性があることがわかっています。


アルツハイマー型認知症:「アミロイドベータ」、「タウ」というタンパク質が脳にたまって神経細胞が破壊され、脳が萎縮することで、典型的にはもの忘れから始まり、さまざまな認知機能が低下する認知症2


認知症に備えるために若いうちから質の良い睡眠を心がけ、適切な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを維持していきましょう。

注意したい睡眠の状態

ここでは、注意が必要な睡眠の状態について説明します。
不眠の状態が続いたり、翌日の活動に支障をきたしたりする場合は、早めに医療機関の受診を検討しましょう。

寝つきが悪い

寝つきが悪い状態は「入眠障害」3といい、布団に入ってから眠りにつくまでに時間がかかることを指します。入眠障害があると睡眠時間が短くなり、認知機能の低下を招く可能性があります。50歳以降において、夜間の睡眠時間が6時間未満の状態が続くと、認知症のリスクが高まるという報告もあり、注意が必要です4

就寝中に目が覚める

就寝中に目が覚める「中途覚醒」も良質な睡眠をさまたげる要因です3。頻尿や咳、かゆみといった身体的な症状や、睡眠時無呼吸症候群などの病気でも中途覚醒が起こりやすくなります。このような状態では睡眠で十分な休養感が感じられず、翌日に疲労がたまりやすくなります5

早朝に目が覚めて二度寝ができない

早朝に目覚めて二度寝ができない「早朝覚醒」も問題になることがあります3。朝の3時などに目が覚めてその後眠れなくなると、睡眠時間が短くなったり、昼間に過度な眠気が生じたりすることがあります。眠気によって長時間昼寝してしまうと、夜間の睡眠リズムを乱す悪循環になるため注意が必要です。

就寝中に呼吸が止まる

睡眠時無呼吸症候群を発症している場合は、就寝中に不定期に呼吸が止まってしまいます。高血圧、糖尿病などの生活習慣病の患者では、睡眠時無呼吸の頻度はさらに高くなると言われています6。また、睡眠時無呼吸は認知症のリスク因子になる可能性があるという報告もみられます7

良質な睡眠をとるためのポイント

認知症に備えるために、以下のポイントを守って質の高い睡眠を日常的にとることが重要です8

・   規則的な睡眠と食生活、適度な運動習慣を心がける
・   起床した直後は30分以上、朝日を浴びる
・   昼間は明るい場所で過ごし、夜間は強い光を避ける
・   寝室は快適な温度や湿度を保ち、明るすぎない照明にする
・   昼寝は1日1回、30分以内に制限する
・   喫煙やカフェイン飲料の摂取を避ける
・   就寝前の飲酒は避け、水分も摂りすぎないようにする
・   気分転換を図り、日頃のストレスをコントロールする

これらの対策を実践しても睡眠の問題が改善しない場合や、気になる症状がある場合は、かかりつけ医に相談することをおすすめします3

専門家のアドバイスを受けることで、より適切な対策をとることが可能になり、認知症に備えた睡眠習慣につながるでしょう。

まとめ

睡眠不足は、認知症につながるリスクがあります。特に就寝中に呼吸が止まったり、大声で叫んだり、手足が激しく動いたりするなど異常な行動がある方は、専門医に相談するなど早めの対策をとりましょう。規則正しい生活を送って睡眠の質を高め、安心できる毎日を過ごしてください。

(参考文献)

1, Robbins R, et al:Examining sleep deficiency and disturbance and their risk for incident dementia and all-cause mortality in older adults across 5 years in the United States. AgING. 2021;13(3):3254-68.

2, 一般社団法人日本神経学会:アルツハイマー病.
[https://www.neurology-jp.org/public/disease/alzheimer.html](最終閲覧日:2025年4月25日)

3, 三島和夫:不眠症. e-ヘルスネット.
[https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001](最終閲覧日:2025年4月25日)

4, Sabia S, et al:Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nature Communications. 2021;12:2289.

5, 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会:健康づくりのための睡眠ガイド 2023. 厚生労働省.
[https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf](最終閲覧日:2025年4月25日)  

6, 日本呼吸器学会, 監修:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂. 2020.
[https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf](最終閲覧日:2025年4月25日)  

7, 駒田一朗, 他:睡眠時無呼吸・いびきへの対応:高齢者への対応. 口腔・咽頭科. 2016;29(1):41-9.

8, 野田明子:認知症予防のための睡眠指導.健康文化. 2015;50:1-8.

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