睡眠のプロ伝授!安眠できるアロマの選び方と効果的な使い方
在宅ワークや外出自粛の影響でメリハリのない日々が続き、生活リズムが乱れて熟睡できなくなってしまったという人も多いのでは? そんなとき、入眠・安眠に効果があると言われるアロマを使ってみてはいかがでしょうか。
今回は、質の良い睡眠を取るために最適な「アロマの種類」「香りの選び方」「ブレンド方法・使い方」などについて、快眠セラピストの三橋美穂さんにお伺いしてみました。
脳へダイレクトに心地よさが伝わるアロマは、睡眠前のリラックスにぴったり
アロマは安眠効果があると言われていますが、具体的にはどのように体に作用するのでしょうか?
人間の嗅覚は脳とダイレクトに結びついており、快・不快が瞬時に伝わります。つまり、嗅覚を魅了する香りを嗅ぐことで、交感神経から副交感神経優位に切り替わりやすくなるんです。副交感神経が優位になることで、リラックスして安眠が期待できると言われています。最近は香りを楽しめる芳香剤が数多くありますが、中でもアロマオイル(精油)は、植物の香り成分を抽出した天然のオイルで、さまざまな使い方ができる点からも特におすすめです。
ただ、「良い香りを嗅げばそれだけで安眠できる」というわけではなく、アロマはあくまで二次的な要素。質の良い睡眠のためにさらに重要なのは、食事や睡眠などの規則正しい生活習慣や日光浴です。あくまで入眠儀式の一つとして捉えるといいでしょう。
良い睡眠を得るために最適なアロマの選び方とコツ
アロマにはさまざまな種類がありますが、安眠したいときにおすすめのアロマはどんなものでしょうか?
アロマは大きく分けて2種類あります。寝る前におすすめの「リラックス系」と、朝起きた時や日中におすすめの「リフレッシュ系」です。
睡眠前に使うのであれば、リラックス系のアロマを選ぶといいでしょう。代表的なものは、ラベンダーやカモミール、スイートオレンジ、ヒノキ、サンダルウッド、ゼラニウムです。ラベンダーに関しては、酢酸リナリルというリラックス効果がある成分を35%以上含んだ「真正ラベンダー」がおすすめ。心を落ち着かせて安眠へと導く効果が期待できると言われています。
また、朝気持ちよく起きられない人は、リフレッシュ系のアロマを使うのがいいでしょう。ペパーミントやレモン、ローズマリー、ユーカリ、グレープフルーツなど、爽やかな香りがおすすめです。起き抜けにアロマディフューザーをセットするのもいいですし、就寝前にマスクに1滴アロマオイルを垂らしチャック付きのポリ袋に入れておき、起きた瞬間にマスクを着用するという方法もあります。
入眠時と起床時、アロマの種類を使い分けるとより効果的なんですね。ちなみに、自分に合ったアロマを選ぶコツがあれば教えてください。
アロマはその日の体調や気分によっても好みが変わるので、実際に嗅いでみて、フィーリングで選ぶのが一番いいですね。ただ、このようなご時世だと、店頭で香りを試すことに抵抗を感じる人もいるかと思います。もしネットでアロマオイルを購入する場合は、真正ラベンダーなら10ml1,500円以上の安価すぎないものを選んでみてください。メーカーの違いだけでなく、値段によっても品質が大きく異なります。
また、アロマオイルを数種類ブレンドすることで、複数の効果が得られるだけでなく、香りに深みが出るなどの相乗効果も期待できます。例えばラベンダーの香りが苦手だという人でも、オレンジを混ぜることで比較的万人受けする香りになるので、抵抗なく使える場合もあります。最近はブレンドされた状態で販売されているものも多いので、好みのアロマオイルを探してみるのもいいですね。
アロマの適切な使い方と注意点
置き型のアロマポットやアロマスプレー、アロマディフューザーなど道具や使い方はさまざまだと思います。シーンに応じた適切な使い方はありますか?
睡眠前に限った場合、一番手軽なのはティッシュやコットンにアロマオイルを1滴含ませて、パジャマの胸ポケットに入れておく方法です。寝返りを打つたびにほのかに香ってリラックスできますし、特別な道具も必要ない上、お手入れなども不要という手軽さが魅力です。パジャマにポケットがない場合は、アロマオイルを垂らしたティッシュやコットンを枕の下や枕元に置いておくだけでもいいでしょう。手軽さの面では、枕元にアロマスプレーを吹きかける方法もいいかもしれませんね。
部屋全体に香りを拡散させたいのであれば、アロマディフューザーを使うのがいいですね。特に水蒸気で拡散させるタイプのものであれば、部屋の加湿もしてくれるので、乾燥する秋冬の季節にぴったり。使用量の目安は、6〜8畳の部屋に対してアロマオイル4〜5滴です。
火の後始末を忘れなければ、アロマキャンドルもおすすめです。キャンドルの炎のゆらぎで視覚もリラックスできますので、香りとともに安眠をもたらしてくれると思います。
入浴時にアロマを使うという方法もあります。ただし入浴中に使うときは、粗塩や日本酒大さじ1にアロマオイルを3〜5滴混ぜ合わせてから湯船に入れてください。アロマオイルだけを入れてしまうと、お湯と分離してオイルが浮いてしまいます。また、肌に直接オイルが付着して肌荒れの原因にもなり得るので、使い方には注意してください。
なるほど、肌荒れの原因になることがあるのですね。そのほかアロマを使う上での注意点はありますか?
入浴時もそうですが、基本的に原液をそのまま皮膚に塗るのは、肌への刺激が強すぎるため厳禁です。肌へ使用する場合は、必ずキャリアオイルなどで薄めて使用しましょう。妊娠中の方や小さなお子さん、既往歴がある方、ぺットを飼っている方も使用を控えてください。また、火気にも注意が必要です。使用する際は必ず商品の説明書を見て、指示に従って使いましょう。
アロマオイルに消費期限はあるのでしょうか?
消費期限の目安は柑橘系が半年、樹木系が2〜3年、それ以外が1年程度です。ただし、皮膚に塗るのではなく香りを楽しむだけであれば、明らかに変な臭いがしない限りは気にしなくてもいいでしょう。
5つのアロマオイルで安眠を手に入れよう! おすすめのシーン別ブレンド方法
初心者でも簡単にできる、快眠のためのアロマブレンドのおすすめパターンを三橋美穂さんに解説していただきました。リラックス系の真正ラベンダー、ゼラニウム、オレンジスイート、リフレッシュ系のペパーミント、ユーカリの5つを組み合わせることで、さまざまな作用が期待できるそうですよ。
■イライラして眠れない、頭が疲れているとき
爽やかなフローラルの香りの「真正ラベンダー」と、スッキリした香りの「ペパーミント」を2:1でブレンドするのがおすすめ。清涼感があり体感温度が下がるリフレッシュ系のペパーミントは、単体では安眠には向きません。そのかわり、リラックス効果が期待できる真正ラベンダーと合わせることで、頭がスーッとしながらも気持ちを沈めつつ、安眠へと誘う効果が期待できます。
■クヨクヨして眠れない、不安感が強いとき
果実そのままのような香りの「オレンジスイート」と「真正ラベンダー」、ローズに似たフローラルな香りの「ゼラニウム」の3種類をブレンドしてみましょう。気分を明るくしてくれるオレンジスイートにリラックス効果が期待できる真正ラベンダー、女性ホルモンや情緒を整えてくれるゼラニウムがそれぞれバランスよく作用してくれます。
■落ち込んだ気分を回復し、幸せな気分で眠りたいとき
「真正ラベンダー」と「ゼラニウム」のブレンドがおすすめ。情緒を整えつつ、深いリラックス感を得ながら入眠できるはず。
■たくさん寝たつもりでも疲れが取れないとき
清涼感があり、クリアな香りで息苦しさを解放してくれる「ユーカリ」と「オレンジスイート」をブレンドしてみてください。寝る前に使うときは、オレンジスイート2:ユーカリ1の割合がおすすめ。朝使うときはユーカリ2:オレンジスイート1の割合でブレンドすると、気分を明るくして覚醒へと導く効果が期待でき、スッキリとした目覚めに切り替わるでしょう。
■5つのアロマをお好みでブレンドしてOK
5つのアロマはどれも相性がいいので、紹介した以外にどんな風にブレンドしてもOK。その日の体調や好みに合わせて、いろいろな組み合わせを試してみてください。どれをブレンドしようか迷ったときは、2〜3種類のアロマオイルの蓋をまとめて持ち鼻の前で振ると、ブレンドした後の香りを簡単に再現することができます。ぜひ参考にしてみてください。
手軽に取り入れられるアロマで安眠ライフを
特別な知識が必要だというイメージのあったアロマですが、要素を押さえておけば手軽に使えることがわかりました。「アロマは難しく考えずに、フィーリングで使えばいい」という三橋さんの言葉通り、気分や体調に合わせてチョイス&ブレンドし、睡眠前の習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。
〜快眠セラピスト・三橋美穂さんプロフィール〜
著者
快眠セラピスト。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきた。とくに枕に関しては、頭を触っただけで、その人に合う枕を見極められるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。主な著書に『眠トレ!ぐっすり眠ってすっきり目覚める66の新習慣』(三笠書房)ほか多数。 https://sleepeace.com/
取材・文:中森りほ 編集:ノオト