「仕事のミスが増えた」「大事なものをどこに置いたか思い出せない…」そんな不調や変化を感じ、若年性認知症かもしれないと悩んでいませんか?
若年性認知症は、気づいたときには認知機能の低下が進行している場合が多いため、小さな変化を見過ごさないことが大切です。
この記事では若年性認知症の初期症状や原因、気づくポイントを解説します。「単なるもの忘れなのか?」「家族の様子が気になる…」など不安を感じる方の手助けになれば幸いです。
若年性認知症とは?
若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症の総称です1。
厚生労働省の調査(2017〜2019年)によると、若年性認知症の有病率は10万人あたり50.9人で、全国の患者数は約3.57万人とされています2。発症年齢の平均は51歳で、約3割が50歳未満で発症します1。高齢者の認知症と比べ、男性の割合が高い点も特徴です1。
若年性認知症の特徴
若年性認知症は初期段階で気づきにくく、発見が遅れやすいため、仕事や家庭生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
認知症だと気づきにくい
認知機能の不調や変化を感じても認知症が原因だと考える方は多くありません。若年性認知症には「もの忘れ」が目立たないタイプもあり、仕事や家事でミスを繰り返しても、疲れのせいだと思い、見過ごしやすいためです。
うつ病や更年期障害を疑い、別の専門科を受診するうちに、認知症が進行しているケースもあります1。
経済面や家族への影響が大きい
若年性認知症が進行すると、経済的な負担が生じる場合があります。
厚生労働省の調査によると、若年性認知症の診断を受けたご本人の約7割が退職し、6割の世帯で収入が減少しています2。仕事を続けたくてもミスが増えたり、通勤が負担になったりして、退職する方も少なくありません。
ご家族には精神的な負担もかかりますし、配偶者が働きながら介護するケースも多く、心身の疲れや将来への不安が積み重なります。少しでも早く気づき、適切なサービスを受けることが、ご本人とご家族の支えになるでしょう。
若年性認知症の初期症状
若年性認知症の初期症状は、もの忘れや判断力の低下、性格の変化などが特徴です。ただし、症状の現れ方には個人差があり、もの忘れが目立たないこともあります。代表的な初期症状を知ることが早期発見のポイントになります。
記憶障害
仕事や生活で、もの忘れが増えます。鍵を置き忘れたり、数日前の出来事を思い出せなかったりします。同じ質問を繰り返すことが多く、自覚がないこともあります。
見当識障害
時間や場所、人物の認識があいまいになります。今日が何日かわからなくなったり、朝と夜の区別がつかなくなったりします。自分がどこにいるのかわからず、通い慣れた道でも迷子になることが増えます。
実行機能障害
物事を順序よく進めるのが難しくなります。同時に複数の作業をこなせず、仕事のミスが増えたり、料理の手順を間違えたりします。段取りを考えるのに時間がかかる点も特徴です。
理解力・判断力の低下
状況を正しく理解し、適切に判断できなくなります。交通ルールの判断が鈍り、運転に危険を感じることがあります。会話の内容を理解するのに時間がかかり、新しいことはうまく覚えられません。
言語障害
言葉が出にくく、会話が途切れがちになります。言いたいことがあっても、言葉選びや発音に時間がかかります。「これ」「あれ」といった指示語が増えたり4、同じ言葉を繰り返したりすることがあります。
性格や行動の変化
認知機能の低下にともない、気分や行動に変化がみられます。怒りっぽくなる、不安になるなど、ご本人によって変化はさまざまです。
趣味への関心が薄れ、何事にもおっくうになることがあります。関連
若年性認知症の原因疾患は?
若年性認知症の原因疾患としては、アルツハイマー型認知症がもっとも多く、全体の52.6%を占めます2。続いて、血管性認知症(17.1%)、前頭側頭型認知症(9.4%)、レビー小体型認知症(4.1%)、アルコール性認知症(2.8%)が挙げられます2。
若年性認知症は高齢者の認知症に比べ、前頭側頭型認知症やアルコール性認知症の割合が高い傾向があります3。症状の出方は疾患ごとに異なるため、それぞれの特徴を理解することが早期発見につながります。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が徐々に減っていく進行性の病気で、アミロイドβ(ベータ)と呼ばれる異常なたんぱく質の蓄積と神経原線維変化(過剰にリン酸化されたタウ蛋白の蓄積)という脳の中での2つの変化を特徴とします4。
もの忘れを中心に症状が徐々に進行し、最近の出来事や体験そのものを忘れてしまうのが特徴です5。進行すると、時間や場所の把握が難しくなり、道に迷う、計画を立てられないなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
血管性認知症
血管性認知症は、脳の血管が詰まったりやぶれたりすることで発症します。損傷を受けた部位により、できる動作に差が生じます。日や時間帯によって症状に波があるのも特徴です。
もの忘れのほか、言葉が出にくい、歩行しにくい、といった症状がみられます。
頭ではわかっていても、会話と行動がうまくできず、苛立ちや不安など感情の起伏が激しくなることもあります。
レビー小体型認知症
脳の神経細胞にはαシヌクレインというたんぱく質が存在します。これを核とするレビー小体という物質が大脳皮質にたまることでレビー小体型認知症は引き起こされます6。
初期段階では、記憶障害よりも精神症状が目立ち、気分の浮き沈みが激しく、うつ症状や幻覚、妄想が現れます。調子のよい時と悪い時の差が大きいのも特徴です。
進行すると、手がふるえたり、体がこわばり動かしづらくなります。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、感情や理性、思考をつかさどる「前頭葉」や「側頭葉」が萎縮することで発症します7。
もの忘れよりも、性格や行動の変化が目立つ点が特徴です。欲求を抑えられず、攻撃的になるなど、性格が極端に変わります。同じものばかり食べる、同じ言葉を繰り返すなど、行動のパターン化もみられますが、ご本人に自覚はありません。
アルコール性認知症
アルコール性認知症は、長期間の過度な飲酒が原因で発症する認知症です。
もの忘れや注意力の低下、ふらつきが現れます。進行すると、会話がかみ合わなくなり、感情のコントロールが難しくなります。
男性は1日60g以上、女性は40g以上の純アルコールを摂取すると、認知症を発症しやすくなるとされています8。不規則でも大量に飲酒すると、認知機能が低下することもわかっています8。
アルコール依存症になると、前頭葉がダメージを受け、若い方でも記憶力や判断力が低下する可能性があります9。
生活習慣との関係はある?
若年性認知症は、生活習慣と深く関わっています。食生活の乱れや運動不足、喫煙は、生活習慣病を引き起こすだけでなく、認知症自体の発症リスクを高めることがわかっています10。また、喫煙者は非喫煙者に比べ、アルツハイマー型認知症の発症リスクが1.79倍、血管性認知症が1.78倍、認知症全体では1.27倍高いとされています11。
バランスの取れた食事・適度な運動・禁煙などの生活改善が、認知症対策として大切です12。
単なるもの忘れと認知症によるもの忘れの違い
単なるもの忘れと認知症によるもの忘れには、以下のような明確な違いがあります12。生活に支障があるトラブルを繰り返したり、体験をまるごと忘れたりする場合は、注意が必要です。
単なるもの忘れ |
認知症によるもの忘れ |
・体験の一部分を忘れる・もの忘れの自覚がある・症状は極めて徐々にしか進行しない |
・体験そのものをすべて忘れる・もの忘れの自覚がない・症状が進行する |
(文献12をもとに表を作成)
若年性認知症に気づくポイント
若年性認知症のご本人の多くは、もの忘れや日常生活でのミスがきっかけで気づきます。「もの忘れ」で気づいたケースは全体の66.6%、「職場でのミス」がきっかけで気づいたケースは38.8%を占めています2。
周囲が気づくポイントには、おもに感情面や行動の変化が多い傾向です。下記のリンクのチェックリストを参考にしてみてください。
まとめ|若年性認知症は、初期症状を知り早期発見することが大切
若年性認知症は、もの忘れより先に判断力や感情の変化が現れることもあり、気づきにくいという特徴があります。
若年性認知症は、働き盛りの世代に発症することが多く、仕事や収入に大きな影響を与える可能性があり、ご家族にも精神的、経済的な負担がかかります。早期発見と適切なサポートが、ご本人やご家族の生活を支える上で重要です。
少しでも不安を感じたら、1人で抱え込まず、専門の窓口への相談を検討してみてください。