※本記事での「予防」とは「リスク低減」「進行抑制」を意味しています。
「認知症やMCI(軽度認知障害)を予防するためには何をすればいいのだろう?」と気になる方もいらっしゃるかと思います。
2022年度の調査の推計では、日本における認知症の高齢者は約443万人、MCIの高齢者は559万人と推計され、高齢者の約3.6人に1人が認知症もしくはその予備群と言えます1。
現在、認知症を完全に予防する方法は確立されていませんが、「認知症のリスク因子を減らす」「認知症になっても進行を緩やかにするため」の方法として推奨されているのは、バランスの良い食事を心掛け、定期的な運動習慣を身に付けるといった生活習慣の管理です2。
この記事では、認知症の対策として今日から始められることを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
認知機能の低下を抑制するために早めの対策を行いましょう
MCIの当事者は1年で約5~15%の割合で認知症に移行する一方で、1年で約16~41%は健常な状態になると言われています3。早めに適切な対策を講じることで健常な状態への回復や認知症への移行を遅らせることもあります4。
認知症の対策には、運動不足の改善、生活習慣病の予防、食生活の改善、社会活動への参加などが良い影響を与えるとされています5。一方で、サプリメントの摂取のみでは十分な効果は期待できません6。
以下に医学的に根拠が示されている方法を紹介します。
バランスの取れた食生活で脳を守る
バランスの取れた食生活は認知症予防としても効果的です2。特に豊富な栄養素を摂取できる地中海食は、認知機能が正常な人またはMCI(軽度認知障害)の方に対して認知機能低下や認知症のリスクを低減するとして推奨されています7。
青魚に含まれるDHAは脳内での抗酸化・抗炎症作用があり、認知機能低下を抑制できる可能性があるとされており、食事に取り入れたい食材です8。魚を積極的に取り入れ、バランスの取れた食生活にしましょう。
定期的な運動
有酸素運動を中心とした定期的な身体活動は認知機能の維持に効果的ということもわかっています9。
ウォーキングであれば日常生活にも取り入れやすく、早歩きくらいのスピードで10〜30分程度の短時間からまずは始めてみましょう。
社会的なつながりを保つ活動
社会的な活動として、家事や人の世話、学習的活動を行っている方や「周囲とうまくいく」「友人関係に満足する」と感じている方は、認知機能が低下するリスクが低いという調査もあります10。
独居の高齢者が増加していますが、独居であることは社会的なつながりが少ない可能性があり、認知機能低下と関連している可能性も示されています10。
質の高い睡眠の確保
睡眠に関する問題(不眠や睡眠の質の悪さ)は認知機能の低下のリスクを約1.2倍に高め、5〜7時間の適切な睡眠時間を確保することが重要で、短すぎても長すぎてもリスクを高める可能性があると言われています11。
寝室の温度や明るさを適切に保ち、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控える、適度な運動や夕方以降のカフェイン摂取を避けることも、良質な睡眠につながります。
難聴の予防
65歳以上の難聴患者は2010年時点で1,500万人と推計され、難聴は認知機能低下に関わると報告されています12。難聴を放置すると脳の活動が減り、容積がだんだんと小さくなったり、病的な物質がたまったりすることで認知機能が低下に繋がります12。
加齢性難聴になってしまった場合、補聴器を用いるなどの対処が行われます。耳の聞こえに違和感があれば、耳鼻咽喉科医に相談してみてください。
心の健康維持
うつ病と認知症の関連を示す報告は多くあり、うつ病の症状は、アルツハイマー病の発症と関連すると言われています13。
ストレス管理と心の健康維持には、適度な運動や趣味の活動、リラクゼーションなどご自身の興味があるものから試してみるのが良いでしょう。心の健康を維持することで認知機能の低下を防ぎましょう。
フレイルとの関連
フレイルのなかでも、身体的フレイルはMCIや認知機能の低下と関係があるとする報告があり、早期に発見し、適切な介入策を講じることができれば回復する可能性があると言われています14。
まとめ|認知症やMCIを予防するためには何をすればいいのでしょうか?
今日から始められる認知症やMCI(軽度認知障害)の対策を紹介しました。
認知機能を維持するためには、バランスの取れた食生活、定期的な運動、社会的なつながりを保つ活動、質の高い睡眠の確保、難聴の予防、心の健康維持が重要です。
生活習慣を改善することで、認知機能の低下を抑制し、健康な状態を長く維持することが期待できます。日々、バランスの取れた食事を意識し、定期的な運動としてウォーキングなどの有酸素運動を取り入れましょう。