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ケアマネジャーにはどこまで相談していい? 業務範囲と上手な付き合い方
更新日:2025-04-16

ケアマネジャーにはどこまで相談していい? 業務範囲と上手な付き合い方

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ケアマネジャーにはどこまで相談していい? 業務範囲と上手な付き合い方

【執筆者】朝水 裕一

介護現場に13年間従事し、現在はケアマネジャーとして居宅介護支援事業所にて勤務 (本記事最後に全文掲載)

介護が必要になったとき、頼りになる存在がケアマネジャー(介護支援専門員)です。

ですが、「どこまで相談していいの?」「何をお願いできるの?」

そんな疑問を持たれる方もいるかもしれません。

この記事では、ケアマネジャーの業務範囲や相談できること、上手な付き合い方などを解説します。介護の不安を解消し、安心して生活を送るために、ぜひ最後までお読みください。

ケアマネジャーの役割は介護保険サービスの調整役

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険制度の専門家として、利用者と介護サービス事業者をつなぐ「調整役」を担っています。

介護保険サービスがスムーズに提供されるよう支援し、介護が必要な方やそのご家族が、必要なサービスを適切に利用できるようサポートします。

ケアマネジャーの主な役割は、以下の通りです1

1. ケアプランの作成

ご本人の状況や希望に応じた計画書(ケアプラン)を作成します。

2. サービス事業者との連絡調整

介護サービスを提供する事業者(訪問介護、デイサービス、福祉用具貸与など)との連絡や調整を行います。

3. 利用者の状況把握(モニタリング)

定期的に利用者と面談し、サービスの利用状況や心身の状態を確認します。

4.介護保険に関する手続き

要介護認定の申請代行や、介護保険に関する手続きをサポートします。給付費(市区町村などの保険者が負担する金額)の管理も行います。

5.相談対応

介護に関する悩みや疑問、不安など、さまざまな相談に応じます。入所が必要な方には、介護施設への紹介も行います。

利用するには要介護・要支援認定が必要

ケアマネジャーを利用できるのは、介護保険の「要介護認定」または「要支援認定」を受けている方です。

  • 要介護1〜5
    寝たきりや認知症などで常時介護を必要とする状態です。介護サービスが必要な状態に応じて、5段階に分かれています。

    要支援1・2
    日常生活の一部に支援が必要な状態です。

要介護・要支援認定を受けるためには、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談する必要があります。地域包括支援センターは、無料で介護相談できる公的な機関であり、要介護認定申請も代行してくれます。

ケアマネジャーに相談できること・できないこと

ここでは、ケアマネジャーに相談できることや、依頼できないことを具体的にご紹介します。

相談できること:介護保険サービス利用に関するあらゆる相談

ケアマネジャーは、介護保険サービスに関するあらゆる相談に対応してくれます。例えば、以下のような相談が可能です。

  • 介護保険サービスの種類や内容
    さまざまなサービスの説明や、今の状態に合うサービスを紹介してくれます。
    介護保険サービスについて、詳しくはこちらの記事をご確認ください。

    在宅介護に関する悩み
    介護疲れ、家族関係、生活環境などについて相談できます。

    介護費用のこと
    在宅と施設入所した場合の費用比較など、介護費用に関する全般について相談できます。

    福祉用具や住宅改修に関する相談
    必要な福祉用具や住宅改修について相談できます。

    介護施設への入所に関する相談
    介護施設の種類や選び方、入所手続きについて相談できます。

ケアマネジャーは、介護に関する情報提供やアドバイスだけでなく、利用者や家族の気持ちに寄り添い、精神的なサポートも行ってくれます。上記以外の介護相談も可能です。

依頼できないこと:介護保険の範囲外のサービスなど

ケアマネジャーの業務範囲は介護保険法で定められています。そのため、以下のようなことは依頼できません2

  • 直接的なサポート(おむつ交換や掃除など)
    医療行為(医師や看護師でなければ対応できない医療的ケア)
    通院や買い物などの送迎
    趣味活動の付き添い
    金銭管理(利用者の預貯金の管理や、お金の出し入れなど)
    身元保証人(施設入所や入院の際の身元保証人になること)

オムツ交換や掃除などのサポートが必要な場合は、ケアマネジャーを通じて、サービス事業所に依頼します。ケアマネジャーは、あくまでも介護保険サービスの相談・調整役と理解しておきましょう。

ケアマネジャーへ上手に相談するための3つのコツ

ケアマネジャーへ上手に相談することで、より適切なサポートを受けられます。ここでは、3つのコツをご紹介します。

1. 具体的に伝える

相談する際には、具体的な状況を伝えることが大切です。以下のことを、意識して伝えましょう。

  • 具体的な事例や状況を挙げる

    時間や頻度などの情報を含める(週2〜3回など)

    状況を説明してから質問する

例えば、「母は毎日、夜中に3〜4回トイレに行きます。足元が暗いので、転ばないかと心配です。何か良い対策はありますか?」などと具体的に説明することで、ケアマネジャーは状況を正確に把握できます。

2. 困りごとを正直に話す

困りごとや不安に感じていることは、正直に話すことが重要です。ケアマネジャーは、個人情報を他言しない決まりになっています。安心して現状を伝えましょう。

    • 現在の状況や心配ごとを隠さず伝える

      小さな変化や気づきも伝える

      新たな困りごとが発生したら、できるだけ速く相談する

介護の悩みには、家族関係や経済的な問題などデリケートな内容も含まれるものです。しかし、遠慮したり隠したりせずに情報を共有することで、ケアマネジャーはより適切なサポートを提供できます。

3. 感謝の気持ちを伝える


ケアマネジャーも人間です。感謝の気持ちを伝えることで、良い関係を築けます。その結果、より親身になってサポートしてくれるでしょう。

「いつも、ありがとう」「おかげで助かりました」など、一言添えるだけでも、ケアマネジャーのモチベーションは大きく変わるものです。

ご家族に合うケアマネジャーの選び方のポイント

担当ケアマネジャーは、ご自分で選べます。ご家族と相性の良いケアマネジャーを選ぶポイントとして、以下の点を参考にしてください。

  1. 1. 専門性と経験: ご家族の状況(医療的ケア、認知症など)に合ったケアマネジャーを選びましょう。医療が必要な状態なら看護師の資格、認知症なら介護福祉士の資格を持つケアマネジャーなど。
  2. 2. コミュニケーション能力: わかりやすい説明をしてくれるか、連絡は取りやすいかが重要です。
  3. 3. 人柄と相性: ご本人とご家族、両方の立場に立ち、親身に相談に乗ってくれる人を選びましょう。
  4. 4. 事業所の評判: 地域の口コミや評判を参考に、信頼できる事業所を選びましょう。
  5. 5. 自宅からの距離:ケアマネジャーが無理なく訪問できる範囲で選びましょう。

すべての条件を満たすケアマネジャーが担当になるとは限りません。ケアマネジャーが所属する事業所へ「これだけは譲れない」という条件を事前に伝えておくと、考慮してくれる可能性が高くなります。

ケアマネジャーの変更は可能? 変更時の手続きと注意点

なかには、「ケアマネジャーと相性が合わない」「対応に不満がある」など感じる方もいらっしゃるでしょう。そんな時には、ケアマネジャーを変更できます。

変更の手続き

  1. 1.    現在のケアマネジャーまたは事業所に、変更したい旨を伝えます。(市町村の窓口や地域包括支援センターにも相談できます)
  2. 2.    新しいケアマネジャーを探してもらいます。同じ事業所内で担当者を変更することも、別の事業所に変更することも可能です。
  3. 3.    新しいケアマネジャーと面談します。別事業所の場合は、新たな契約が必要です。

変更する時の注意点

  • 新しいケアマネジャーに求めることを、しっかり伝えることが大切です。これまでの経緯や状況、困りごとも伝えましょう。

    利用中の介護サービスは、原則として継続できます。

    感情的にならず、冷静に話し合いましょう。

これまで担当してくれたケアマネジャーに感謝しつつ、大切なご家族が穏やかに暮らせるようにサポートしていきましょう。

まとめ:ケアマネジャーと上手に付き合い、介護負担を軽減しよう

ケアマネジャーは、必要な介護サービスの利用をサポートしてくれる、心強い存在です。

ケアマネジャーには「相談できること」「相談できないこと」があります。ケアマネジャーと、より良い関係を築くためには、具体的な困りごとを正直に伝えること、そして感謝の気持ちを忘れないことが大切です。

今のケアマネジャーとの相性が合わないと感じたら、変更することも可能です。

ケアマネジャーに相談しながら、ご本人やご家族の状況・希望に合わせて介護負担を軽減することで、安心して穏やかな生活を送れるようにしましょう。

【執筆者】朝水 裕一

介護現場に13年間従事し、現在はケアマネジャーとして居宅介護支援事業所にて勤務。これまでにデイサービス、認知症対応型デイサービス、グループホームで施設管理者としての経験をもつ。豊富な現場経験と専門知識を活かし、介護・福祉に関する情報をわかりやすく発信。
保有資格:介護福祉士、ケアマネジャー、認知症ケア専門士、第1種衛生管理者

(参考文献)

1, 厚生労働省:介護支援専門員(ケアマネジャー).
[https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000114687.pdf](最終閲覧日:2025年3月9日)

2, 厚生労働省:ケアマネジメントの在り方についてP10.
[https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001267008.pdf](最終閲覧日:2025年3月9日)

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