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生活の場で相談を受け、活動の場につなげる(もの忘れ相談会での取り組み)
更新日:2024/11/15

生活の場で相談を受け、活動の場につなげる(もの忘れ相談会での取り組み)

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生活の場で相談を受け、活動の場につなげる(もの忘れ相談会での取り組み)

高齢者あんしん相談センター追分では、2021年10月より月に1回、八王子市中央図書館にて認知症専門医とともにもの忘れ相談会を実施しています。

取材:2023年9月14日 高齢者あんしん相談センター追分
9月19日 八王子市中央図書館

図書館での相談会では、もの忘れが気になり不安だけど、病院に行くまでではない、敷居が高く行きたくないと思っている住民からの相談が多数を占めています。

また、病院ではない、誰にでも開かれた公共の場である図書館で開催することによって、「受け入れがたい認知症についても相談に行きやすい」「気軽に専門医に相談できる」と本人・家族から好評を得ています。

一人30~45分の枠で専門医との相談を個別に行い、その後、その方の状況に合わせて、社会参加の場の紹介や情報提供などを認知症地域支援推進員から紹介する場にもなっています。

図書館でのもの忘れ相談会とは?

八重樫穂高 先生

医療法人社団永生会 永生病院 精神科医長
精神保健指定医 精神科専門医 認知症臨床専門医
認知症サポート医
初代もの忘れ相談会担当医

市民の生活の場である図書館に病院の専門医が出向くことで、みなさんがそれほど緊張することなく相談ができるという点がこの取り組みの大きなメリットだと思います。病院も“もの忘れ外来”などの呼称を用いることで、以前よりは早期の方が受診されるようになりましたが、それでも図書館での相談会に比べれば進行している方が多いという印象です。

MCI(軽度認知障害)や健康な時期から相談に応じ、日常生活で何を心がけるべきかといった情報を提供する活動は非常に重要であり、私たちもさらに力を入れたいと思っているところです。その一つの有効な手段が、図書館でのもの忘れ相談といえるでしょう。

もの忘れ相談会を運営して

菊地志保さん

八王子市高齢者あんしん相談センター追分
(八王子市地域包括支援センター追分)
認知症地域支援推進員
社会福祉士 精神保健福祉士 介護支援専門員

もの忘れ相談会を図書館でやりたいと思ったきっかけは、もっと認知症の初期の段階の方と出会いたかったからです。早期の相談・対応が重要であるものの、私たち高齢者あんしん相談センターに相談に来てくださるときには、認知症が進行され行動心理症状が顕著となっていることから、ご本人とご家族の関係が悪くなっていたり、地域の中でも「困った人」、「迷惑な人」と思われていることも多い状況です。

図書館は地域の情報拠点であり、自分や家族が「認知症かもしれない」と思ったときに認知症について調べに来られる方が多くみられます。認知症があるなしに関わらず幼少の頃から住民の方の日常生活の中にある敷居の低い施設です。このような場を活用して、専門医とともに、もの忘れについて相談を受けることに意味があると考えました。

もの忘れ相談会の特徴は、ご本人、ご家族、支援者のだれもが気軽に相談に来ていただけることです。

昨年度の結果としては、ご本人およびご本人とご家族の相談が約8割でしたが、ケアマネさんや若者サポートステーションのスタッフの方からもご相談を頂くことがありました。

また、高校を中退されてから社会とつながっていなかった40代の息子さんも相談会に来てくださり、今は、作業所に通所されている方もいます。

相談会での私の役割は、受診が必要であると先生が判断された方へ、病院の情報提供や予約などを行い、認知症の症状が進行する前に医療等へつなげるお手伝いをさせて頂いています。

専門医の先生方がとても丁寧にお話を聴かれ、穏やかに今後についてもお話をしてくださるので、「認知症」や「精神科」へのイメージが払拭され、ご本人やご家族も、認知症というものを受入れ、受診に前向きになったり、その後の生活を安心して暮らされている方が多いと感じています。

また、社会的孤立や空白の期間の解消のために、ポールウォーキングや認知症カフェ、チームオレンジの活動など、社会参加の場の紹介や情報提供などを行っています。

家にこもりがちだった方が相談会にお見えになり、実は数年前まで都心で飲食店をされていて、その経験を活かしたいと思われていることを教えていただき、今はこども食堂で活躍されている方もいらっしゃいます。

生きがいをもって楽しく、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるためにも、早期の段階でつながった方々にそれぞれの経験や好きなことに合った活動の場をいかに見つけられるかが私の課題です。そのためには、もっとこの地域のことを知らなければいけないと感じています。

同法人である永生会の八重樫先生のご協力を得てはじめた相談会ですが、今年度は他の初期集中支援チーム等の恩方病院、数井クリニック、高尾厚生診療所の先生方のご協力にて、行っています。

今後はさらにもの忘れ相談会を広く周知し、だれもが気軽に相談会を活用していただくことで、認知症への差別や偏見、誤解もなくなり、「認知症になっても大丈夫だ」と思える地域、八王子にしていきたいと考えています。

もの忘れ相談会の意義と効果(一部)

  • 病院受診や地域包括支援センターの相談には抵抗がある住民やその前段階の住民が、図書館という公共の場であることから、気軽に来所ができるとともにプライバシーが保たれているため安心して相談ができる場となっている。
  • 本人による来所が最も多く、本人自身が物忘れ等の症状を受入れ認知症の正しい理解につながるため、受診までの空白の期間を短縮できる。また、本人が必要以上に認知症になることをおそれず、認知症に対する偏見・差別を緩和する効果がある。
  • 相談会利用後、地域とつながり社会参加の場を得ることで、第二の空白の期間の解消や社会的孤立を防ぐことができる。
  • 認知症の症状が進行する前に医療等につながることで、認知症の長期入院患者を減らす役割も期待できる。
  • もの忘れ相談会のちらしを町会の掲示板やコンビニ、郵便局、銀行、ドラッグストア、花屋、飲食店、図書館、市役所等に掲示をすることで、住民等への周知や普及啓発にもなり、地域全体の認知症についての意識が変化する。