みなさんはアイフレイルという言葉を聞いたことはありますか?「どういう状態だろう」「フレイルとは違うの?」などと疑問があるかと思います。
この記事では、アイフレイルについて詳しく解説します。早期発見が重要な理由やセルフチェックも記載していますので、理解を深めるのに役立ててください。
アイフレイルとは
アイフレイルは「加齢に伴って眼が衰えてきたうえに、様々な外的ストレスが加わることによって目の機能が低下した状態、また、そのリスクが高い状態」のことです1。
2021年に日本眼科学会が提唱し、普及啓発活動に努めています2。身体全体の衰えを表す「フレイル」に対して、目に特化した機能低下を表現する言葉です。
視覚機能の低下は日常生活に大きな影響を及ぼすため、40歳以降から特に注意が必要とされています。
早期発見と適切な対策により進行を抑制できる可能性があり、定期的な検査による予防と早期発見が重要です。
アイフレイルの具体的な症状
アイフレイルは「見る」ことに関連したさまざまな症状が現れます。
具体的な症状をご紹介しますので、当てはまるものがないか確認してみましょう3。
・新聞や雑誌の文字が見づらくなる
・夕方になると見えにくさを感じる
・目が乾きやすい
・目が疲れやすい
・まぶしさを強く感じる
・まばたきをしないとよく見えない
当てはまるものが多い場合は、アイフレイルの可能性があります。
後ほどセルフチェック表もご紹介しますので、受診の目安にされてください。
アイフレイルの原因
アイフレイルの背景にはさまざまな原因が関与しています。
まずは、中途失明*の原因となる目の疾患をターゲットとして対策することが大切です4。
具体的な目の疾患と症状について紹介します。気になる症状が出ていないか確認しましょう。
*中途失明:病気や事故などの原因により視機能が著しく低下し、日常生活に支障をきたすこと
アイフレイルの原因となる眼疾患
疾患 |
原因 |
症状 |
老眼 |
加齢に伴い目の調節力が低下すること |
・近くのものが見えにくくなる |
白内障 |
水晶体が濁り、目の機能が低下すること |
・目がかすむ・ぼやける・明るいところでまぶしい・眼鏡の度数が合わない |
緑内障 |
目と脳をつなぐ視神経の障害 |
・視野が欠ける |
糖尿病網膜症 |
持続的な高血糖による網膜毛細血管の障害 |
・飛蚊症・視野が欠ける・視力が下がる |
加齢黄斑変性 |
黄斑部に新生血管が発生し、むくみが発生すること |
・中心部が見えにくい・ものが歪んで見える |
アイフレイルの早期発見が重要な3つの理由
アイフレイルの早期発見が重要な理由は主に3つあります。
・視覚障害の進行を遅らせるため
・健康寿命を延ばすため
・介護が必要となる状況を防ぐため
目の機能が低下することで目の病気がさらに進行したり、身体全体の機能低下につながることがあります。
また、目の機能低下をきっかけに転倒し、要介護状態になることも大きな問題です。介護が必要にな状況になると、ご家族の心理的負担・経済的負担にもつながります。
アイフレイルは「目だけの問題」と思わずに、ご自身の健康全体に影響があることを理解しておきましょう。
視覚障害の進行を防ぐため
アイフレイルを早期発見することは、視覚障害の進行を防ぐために重要です。なぜなら、早期発見、早期介入により機能が回復する可能性があるためです。
・ドライアイ
・老眼
・白内障
・糖尿病網膜症
などは介入による改善が期待できます。
一方、緑内障や加齢黄斑変性で消失した神経細胞の再生は、現時点では介入による効果が乏しいとされていますが、障害の進行を遅らせてできるだけ目の機能を維持するためにも早期発見は重要です5。
健康寿命を延ばすため
アイフレイルを早期発見することは、健康寿命を延ばすことにつながると言われています4。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです6。
アイフレイルは他のフレイルにも影響し、健康寿命に関わります。
たとえば、以下のような影響が考えられます。
・目が見えづらくなったことから、読書などの楽しみが減り「心理的フレイル」になる
・視覚機能の低下により運転ができなくなり、人との交流が減り「社会的フレイル」になる
・目の衰えから階段の上り下りができなくなり「身体的フレイル」になる
このように、アイフレイルは生活の質の低下や社会的な孤立を招く可能性があります。早期発見により適切な対策を講じることが、健康寿命を延ばすために重要です。
介護が必要な状況になることを防ぐため
アイフレイルを早期発見することは、介護が必要になる状態を防ぐことにもつながります。視覚機能の低下が身体的フレイルの原因となり、さらには介護の原因となる「転倒」にも関わっているためです。
視力やコントラスト感度の低下、白内障や緑内障などの目の病気が転倒と関連があること が多くの研究から明らかになっています5。
アイフレイルを早期発見するための方法
アイフレイルを早期発見するための方法として、セルフチェックや定期的な検査があります。
まずはご自身でセルフチェックを行い、普段の生活で困っていることがないか確認してみましょう。チェック項目が多い場合は、視覚機能が低下している可能性があります。
眼圧の上昇、網膜の状態などは自分では気付くのが難しいため、定期的に専門の検査を受けると早期発見に役立つでしょう。
セルフチェック
日本眼科啓発会議から「アイフレイルのチェックリスト」が公表されていますので、ご自身でチェックしてみましょう。
アイフレイルチェックリスト
No. |
チェック項目 |
1 |
目が疲れやすくなった |
2 |
夕方になると見にくくなることが増えた |
3 |
新聞や本を長時間見ることが少なくなった |
4 |
食事のときにテーブルを汚すことがたまにある |
5 |
眼鏡をかけてもよく見えないと感じることが多くなった |
6 |
まぶしく感じやすくなった |
7 |
はっきり見えないときにまばたきをすることが増えた |
8 |
まっすぐの線が波打って見えることがある |
9 |
段差や階段が危ないと感じたことがある |
10 |
信号や道路標識を見落としそうになったことがある |
チェックの結果による評価基準
チェックした数 |
チェックリストによる評価 |
0個 |
異常なし |
1個 |
目の健康に懸念はあるが、直ちに問題はありません。 |
2個以上 |
アイフレイルの可能性あり。一度、眼科専門医にご相談ください。 |
(日本眼科啓発会議 アイフレイル啓発公式サイトより許諾を得て掲載)
定期的な検査
日本眼科啓発会議では、40歳を過ぎたら定期的な眼科での検査を推奨しています。
40代の約2人に1人が目の健康に不安を抱えていること7、40歳以上の日本人における緑内障の有病率が5%であることなどが理由です8。
眼科では、視力・眼底・眼圧・視野検査の4つが主に行われます9。定期的な検査を行い、早期発見に努めましょう。
検査の種類 |
検査の内容 |
視力検査 |
矯正視力と裸眼視力を測定し、視機能の状態を確認します。 |
眼底検査 |
網膜や視神経の状態を観察し、さまざまな眼疾患の早期発見に役立てます。 |
眼圧検査 |
緑内障のリスクを評価するため、眼球内の圧力を測定します。 |
視野検査 |
周辺視野を含めた視覚機能の評価を行います。 |
アイフレイル受診の方法
受診の際は以下の点を事前に整理しておくと、医師の診察の手助けとなります。
・視界のぼやけや見えにくさの程度
・症状が出現する時間帯や状況
・症状の持続時間や頻度
・日常生活への影響の程度
「歳のせいだから」と片付けず、目の健康が健康寿命にも関わることを認識しましょう。
日常でできるアイフレイル対策
アイフレイル対策として、日常でできる対策には以下のものがあります。
専門医を受診するものとしては
・眼鏡やコンタクトレンズのチェックや作り変え
・点眼薬の使用
などです。定期的なチェックを行ったり、症状が現れたときに適切に対処することが重要です。
自宅でできる方法は
・温あん法
・環境整備
などがあります。目に優しい環境づくりや、目の疲れを取る方法などについて詳しく解説します。
眼鏡やコンタクトレンズのチェックや作り替え
眼鏡やコンタクトレンズは定期的な検査と調整が重要です。特に40歳以降は老眼の進行により、近くのものが見えにくくなることがあります。快適な視生活のために、適切な度数や装用感のチェックを行いましょう10。
点眼薬の使用
目の状態に応じて、医療機関で点眼薬を提案される場合があります。ドライアイの症状がある場合は人工涙液など、症状や原因に応じた点眼薬を医師が選択します。使用方法や使用時間帯、他の点眼薬との併用についても、医師の指示に従いましょう10。
温あん法
温あん法は、目の周りを温めることで血行を促進し、目の疲れを和らげる方法です。蒸しタオルやホットアイマスクを使用し、38℃前後で温めるとよいでしょう。マイボーム腺機能の改善や、眼精疲労回復が期待できます10。
環境整備
目に優しい環境づくりのためにオフィスやリビングの環境を整えましょう。照明は明るすぎず暗すぎない程度に調整し、パソコンの画面は目線より高くならないように注意します。ドライアイ対策のために、湿度は40~70%が推奨されています。エアコンや扇風機の風が直接眼にあたらないように注意することも大切です10。
まとめ|アイフレイルに早めに気付き、健康寿命を延ばそう
アイフレイルは、特に40歳以降に注意が必要な目の機能低下のことを指します。
早期発見により適切な対策を講じることで、視覚機能の維持と生活の質の保持が可能となります。定期的な検査と日常的なセルフチェックを組み合わせることで、効果的な予防と管理が実現でき、健康寿命を延ばすことにつながります。