健康診断で脂質異常を指摘されたけれど、どうすればいいか分からない。そんな悩みを抱えていませんか?
脂質異常症は、そのままにしておくと動脈硬化へとつながり、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患に繋がる可能性があります。
この記事では、脂質異常症の治療法、治療における注意点、認知症との関連性についてわかりやすく解説します。健康的な生活を送るための第一歩として、ぜひこの記事をお役立てください。
脂質異常症の治療法は?
脂質異常症の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法の3つの方法があります。まず、食事療法と運動療法を3~6か月間実施し、十分な改善がみられない場合に医師の判断で薬物療法の開始を検討します1。
食事療法
脂質異常症の食事療法では適切なエネルギー摂取量と栄養バランスの管理を行います。大豆製品や野菜を積極的に取り入れたり、動物性脂肪の多い肉類や揚げ物、菓子類は控えめにするのがおすすめです1, 3。
以下、食事療法におけるポイントは6点です。
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脂質異常症の食事療法におけるポイント
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備考
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1 |
コレステロールの摂取を1日200mg以下に抑える |
コレステロールを多く含む食材は、卵類(鶏卵や魚卵)、内臓類(レバーやモツ)など |
2 |
飽和脂肪酸の過剰摂取を避ける (飽和脂肪酸によるエネルギー摂取量は総エネルギー摂取量の7% 未満に抑えることが望ましい) |
飽和脂肪酸を多く含む食材は、肉類の脂や鶏肉の皮、ラード、バター、乳脂肪など |
3 |
不飽和脂肪酸を多く含む食材は、青魚、オリーブオイルなど |
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4 |
食物繊維を積極的に摂取(目標は1日25g以上) |
食物繊維を多く含む食材は、野菜、穀物、海藻類、きのこ類、果物、大豆など |
5 |
トランス脂肪酸を多く含む食材は、ショートニングやハードマーガリンを原材料に含む揚げ物や菓子 |
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6 |
適度なアルコール摂取 |
純アルコール換算で20g以下、ただし女性の場合はもっと少量が望まれる²。目安として、ビール中瓶1本(500mL)、清酒1合(180mL) |
(文献1〜3を参考に表を作成)
運動療法
脂質異常症の運動療法は、食事療法と並んで基本的な治療法に位置づけられています4。1日30分以上の中等度の運動を少なくとも週3回以上実施することが望ましいですが、もちろん30分を数回に分けて運動しても構いません。
具体的な運動として挙げられるのはウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動です。なかでもウォーキングは年齢や体力に関係なく始めやすい運動として推奨されます。
継続的な運動によりHDL(善玉)コレステロールの増加や中性脂肪の低下、LDL(悪玉)コレステロールの低下、総コレステロールの低下が期待できますが、血圧や血糖値が著しく高い方は運動が禁忌であるため、運動療法を始める前は一度医師に相談してみると良いでしょう。
薬物療法
脂質異常症の薬物療法が検討されるのは、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合や動脈硬化性疾患の発症リスクが高い場合です¹。
年齢や家族歴、喫煙などの危険因子だけでなく、他に併発している疾患なども加味し、その上でLDLコレステロール値や中性脂肪値などの検査結果を総合的に評価して薬の服用を開始します¹。
LDLコレステロール値や中性脂肪の検査数値に個人差があるため、治療の目標値はご本人に無理のない範囲で設定します。
脂質異常症の治療薬には、コレステロールの生成を抑える薬、腸管からの吸収を抑える薬、中性脂肪を下げる薬などさまざまな薬があります。
薬物療法中であっても、食事療法や運動療法などの生活習慣の改善は継続し、定期的に血液検査での確認が必要です。脂質異常症の薬には横紋筋融解症のような副作用もあるため、体調の変化があった場合は必ず医師に相談しましょう。
脂質異常症の治療目標
患者さんの動脈硬化性疾患の発症リスクによって治療目標値が設定されます1。
治療方針の原則
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10年間で心筋動脈硬化による病気(心筋梗塞や脳卒中など)を発症するリスク区分※1 |
脂質管理目標値(mg/dL)
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LDLコレステロール |
non-HDLコレステロール※2 |
中性脂肪 |
HDLコレステロール |
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一次予防 |
低 |
160未満 |
190未満 |
空腹時: 随時: |
40以上 |
中 |
140未満 |
170未満 |
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高 |
120未満 糖尿病で一定の条件を満たす場合※3は100以下 |
150未満 ※糖尿病で一定の条件を満たす場合※3は130以下 |
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二次予防 生活習慣の改善+薬物治療 |
冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)もしくはアテローム血栓性脳梗塞の既往 |
100未満 特にリスクが高い場合※4は70未満 |
130未満 特にリスクが高い時※4は100未満 |
※1 リスク区分:年齢、性別、収縮期血圧、糖代謝異常、HDLコレステロール、LDLコレステロール、喫煙の項目を点数化したもの。リスク区分(低)は主に40歳代までの男性や60歳代までの女性、リスク区分(中)は主に50歳代以降の男性や複数項目に該当する方、リスク区分(高)は主に70歳代以降の男性や複数項目に該当する中で特に血圧・コレステロールの異常値の度合いが大きい方
※2 non-HDLコレステロール:総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたもの。LDLコレステロールの他、中性脂肪やレムナントなどを含む、動脈硬化のリスクを総合的に表す数値。
※3 糖尿病のある方の中で、「末梢動脈疾患(手足の動脈硬化に伴う疾患)」、「最小血管症(網膜症、腎症、神経障害)」もしくは喫煙ありのいずれかに該当する場合
※4 「急性冠症候群(心筋梗塞など)」、「家族性高コレステロール血症」、「糖尿病」、「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞」のいずれかに該当する場合
(文献1を参考に表を作成)
脂質異常症の改善が認知症予防にも繋がる
脂質異常症は動脈硬化の原因となるため、血管性認知症の促進因子の1つとなります。また、中年期の総コレステロール値はアルツハイマー型認知症の発症と関連性があると報告されています5。
中年期から脂質異常症を改善することで、認知症の予防*に繋がる可能性があります。
*「予防」とは、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行をゆるやかにする」という意味です。
脂質異常症の治療で気をつけるべきこと
治療を進める中で、医療機関との連携を密にしながら、自己管理も適切に行うことが重要です。定期的な検査で経過を確認し、動脈硬化を進行させないためにも脂質管理を行っていきましょう1。
複数のお薬を服用の際は重複に注意
脂質異常症の治療薬の中でもスタチン系は、他の薬剤との相互作用により横紋筋融解症などの重篤な副作用があらわれることがあるため注意が必要です¹。筋肉の痛みや脱力感、赤みを帯びた尿などの症状があらわれた場合は医師に相談しましょう。
栄養バランスに注意
脂質の摂りすぎには注意が必要ですが、不足に関しても注意が必要です。脂質の摂取を極端に控えると、身体にとって大切な役割をするホルモンを十分に作れなくなってしまいます。また、脳の機能維持に必要なDHA・EPAなどのn-3系脂肪酸や、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の不足を招く恐れがあります6, 7。
バランスの良い食事を摂ることは大切ですが、特にDHAを含む魚の継続的な摂取は、アルツハイマー型認知症や軽度認知障害による認知機能低下リスクを抑制すると言われているので、摂取することをおすすめします7。
脂質異常症の食事では、総エネルギー量の炭水化物比率を50〜60%、脂質比率20〜25%として摂取するのが望ましいでしょう8。
まとめ
脂質異常症はすぐには身体に変化が起こらない分、そのままにしてしまうこともあるかもしれません。しかし、長い間放置していると、動脈硬化から、心筋梗塞や脳卒中などの危険な疾患を発症するリスクになります。
脂質異常症の治療は、年齢・性別や喫煙歴、高血圧や糖尿病などの背景を考慮しながら、食事療法や運動療法、薬物療法をオーダーメイドに組み合わせて行います。
早めに治療を行って、より長く、健やかな生活を送れるようにしましょう。