「脂質異常症の食事療法でおすすめの食べ物は?」「バナナやヨーグルトが良いと聞いた」「コレステロールや中性脂肪を改善する食事を知りたい」
脂質異常症の食事療法を進めていくなかで、このように考える方も少なくないはずです。おすすめの食べ物があれば積極的に食べていきたいと思う方も多いでしょう。
本記事では、脂質異常症において食事が重要である理由、食事で何を食べればよいのか、脂質異常症は食事で改善できるのかについて解説します。脂質異常症の治療をする際に役立ててみてください。
脂質異常症の改善について、以下の記事も参考になります。
脂質異常症には食事が重要である理由
脂質異常症は動脈硬化の原因の1つで、早期の改善が必要です。血液中の脂質濃度は日々の食生活と密接な関係があり、適切な食事管理により改善が期待できます。特に摂取する栄養素の量と組み合わせが重要で、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロールの過剰摂取はLDLコレステロールを上昇させる要因です。
反対に不飽和脂肪酸、食物繊維を積極的に摂取することで、LDLコレステロールや中性脂肪の改善が期待できます。また、中性脂肪を下げて、HDLコレステロールを増やすためには、カロリー制限をして適正体重を目指す必要があります¹。
食事療法は薬物療法と異なり副作用の心配が少なく、継続的に実施することで健康的な生活習慣の確立にも繋がります。ただ、身体の変化を実感するまでには時間がかかるため、根気強く続けることが大切です。
脂質異常症の食事で気をつけるべきポイント
高LDLコレステロール血症の食事管理では、1日のコレステロール摂取量は200mg未満に抑えることが推奨されています2。
総エネルギー摂取量には明確な数値がありませんが、過体重あるいは肥満者においては適正体重の維持を目標に、総エネルギー摂取量を制限することで血清脂質の改善がみられます2。
脂肪のエネルギー比率は1日の総エネルギーの20〜25%程度とし、飽和脂肪酸の過剰摂取には注意しましょう2。炭水化物のエネルギー比率は総エネルギーの50〜60%を目安とし、食物繊維は1日25g以上の摂取を心がけてください2。
アルコールの摂取は純アルコール換算で1日20gに抑えることが大切です3。
摂取目安 |
ポイント |
|
コレステロールの摂取量 |
200mg/日 未満 |
・鶏卵の過剰摂取を控える |
エネルギーの摂取量 |
設定値はなし |
・BMIを正常値にできるよう体重を減らす |
脂肪のエネルギー比率 |
総エネルギーの20〜25% |
・飽和脂肪酸を減らす |
糖質のエネルギー比率 |
総エネルギーの50〜60% |
・筋肉量を減らさないよう注意 |
アルコール摂取量 |
純アルコール換算で1日20g |
・ビール中瓶1本(500mL)、清酒1合(180mL)程度を目標 |
食物繊維摂取量 |
25g以上/日 |
・野菜や穀物、海藻、きのこの摂取を推奨 |
(文献2、3を参考に表を作成)
特におすすめできる食べ物は?
バナナ
脂質異常症の改善には食物繊維を多く摂取することが大切ですが、食物繊維が豊富なバナナはコレステロール吸収の抑制、血圧降下作用も期待できるのでおすすめです4。また、動脈硬化の誘引となる過酸化LDLの産生を抑制する作用をもつ可能性があり、血管病の予防にも期待できます5。
しかし、バナナにも糖質が含まれており、過剰な摂取は血糖値の上昇に繋がります。多くても1日1本程度とし、食事のバランス、カロリーを考えながら摂取しましょう6。
ヨーグルトなどの発酵食品
ヨーグルトなどの発酵食品は、適切に摂取すれば脂質異常症の改善メニューとしておすすめできます。発酵乳の摂取により、コレステロール低下、中性脂肪低下、HDLコレステロール上昇、抗酸化作用、血圧低下作用があることが報告されています7。無脂肪や低脂肪のヨーグルトを選ぶことで、脂質の摂取を抑えながら発酵食品の利点を活かせるでしょう。
納豆やキムチなどの発酵食品も、食物繊維が豊富で、コレステロール値の改善に期待ができることが報告されています8, 9。
主食は何を食べるのがおすすめ?
脂質異常症の食事療法では、白米より玄米を主食として食べた方が良いと言われています。実際に玄米には、たんぱく質や脂質、ミネラル、食物繊維が白米よりも多く、総コレステロールを始めLDLコレステロール、中性脂肪も低下することが分かっており、脂質代謝の改善に有用です10。
脂質異常症のタイプごとにおすすめできる食事
脂質異常症にはLDLコレステロールのみが高い方もいれば中性脂肪のみが高い方もいます。それぞれのパターンで意識的に摂取すべきものを理解し、自分に合った治療を進めていきましょう。
LDL-コレステロールが高い方
LDLコレステロールが高いのであれば、食物繊維が豊富な食品を積極的に摂取しましょう。
具体的には野菜、海藻類、きのこ類、大豆、果物などで、大麦やオーツ麦、蕎麦も血清脂質を改善すると言われています2。
中性脂肪が高い人
中性脂肪が高い場合は、食物繊維が豊富な食品に加えて、n-3系多価不飽和脂肪酸を含む食品を積極的に摂取することが推奨されます。n-3系多価不飽和脂肪酸の代表としては、青魚、植物油由来のα‒リノレン酸が挙げられ、冠動脈疾患発症を予防することも報告されています2。
1日1切れ程度で良いので、青魚を食べるよう心がけてみましょう。もちろん糖質の過剰摂取やアルコールを控えることも忘れてはいけません。
HDLコレステロールが低い人
HDLコレステロール値を上昇させるには、適正体重にするために総エネルギー量を考慮する必要があります2。
炭水化物エネルギー比率を50〜60%以下に維持するだけでなく、トランス脂肪酸の摂取量も減らしましょう。
工業的トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどを使った食品や、工場で生産された揚げ物、スナック菓子、クッキー類などに含まれています1。市販のお菓子には含まれている場合が多いため、お菓子の食べ過ぎを減らすだけでもHDLコレステロール値が改善します。
脂質異常症で食事に気をつければ改善できる?
脂質異常症と診断されたら、すぐに薬物治療を開始するわけではなく、食事療法により数値が改善するケースもあります。数値の改善には、食事療法を始めてから通常3~6カ月程度の期間を要します2。
継続的な食事管理を行うことで徐々に改善が期待できる可能性が高くなりますが、遺伝的要因が強い場合や、他の疾患が関与している場合は、食事療法だけでは十分な効果が得られないことも否定できません。
まとめ
脂質異常症におすすめの食事をご紹介しました。脂質異常症を改善するためには適切な食事管理が重要です1。
積極的に摂るべき食品 |
摂りすぎに注意が必要なもの |
|
|
(文献1を参考に表を作成)
どれも食べてはいけないものはありません。逆に身体に良いからといって大量に摂取すればカロリーオーバーとなります。食事療法に運動療法を組み合わせながら脂質異常症の改善を目指していきましょう。