高齢者の認知症よりも罹患率は低いものの、10代や20代でも若年性認知症と診断される可能性はあります。本記事では、ご自身やご家族の就職や介護、経済面などにおいてさまざまな問題が生じやすい若年性認知症の初期症状やサポート面などにについて解説します。
10代や20代でも若年性認知症と診断される可能性がある
若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症のことです1。日本における18歳〜29歳の10万人あたりの若年性認知症の有病率は、以下のように報告されています2。
- ・男性:10万人あたり4.8人
・女性:10万人あたり1.9人
・総数:10万人あたり3.4人
高齢者の認知症より有病率は低いですが、10代や20代でも若年性認知症と診断される可能性はあります。
若年性認知症における諸問題
若年性認知症のご本人は、以下のような問題を抱えていることがあります3。
- ・仕事への影響:業務のミスが増え、働き続けることが難しくなる
・経済的な不安:収入の減少や介護費用の負担が発生する
・家庭内の負担:介護する家族の負担が増え、仕事を続けにくくなったり精神的な負担が増えたりする
・子どもへの影響:教育費の見通しや生活環境に変化が生じる
ご本人は仕事などの面で経済的な影響があり、そしてご家族にも影響が及ぶのが、若年性認知症の大きな特徴といえるでしょう。
仕事、金銭面、生活面でのサポート
若年性認知症と診断された場合、仕事や金銭面、生活におけるサポートを受けることができます。
仕事のサポート
若年性認知症のご本人には、仕事を続けたいという方もいらっしゃいます。
一度退職してしまうと再就職が難しいケースもあるため、上司や産業医、主治医などと話し合い、現在の職場で働き続けられるかを相談するとよいでしょう。
企業の体制や仕事内容によっては、働きやすい部署に異動したり、身体障害者手帳を取得して「障害者雇用」に切り替えたりして対応できるケースがあります。
また、一度退職した場合は、以下へ相談するのもよい方法です4。病気の状態やご本人の適性に合った仕事を紹介したり、就職後のサポートを行ったりしています。
- ・医療機関のソーシャルワーカー
・ハローワークの障害者専門窓口
・地域障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センター
金銭面のサポート
若年性認知症のご本人が利用できる金銭的サポートを、いくつか紹介します5。
サポート名 |
どのようなサポートか |
おもな相談先 |
傷病手当金 |
病気やケガによって仕事を休み、給料が得られない間の保障 |
全国健康保険協会または健康保険組合 |
障害年金 |
病気やケガによって障害の状態になった時に受け取れる年金 |
市区町村役場や年金事務所 |
高額療養費 |
医療費の自己負担額が一定金額を超えた際、超えた分を支給する制度 |
加入している健康保険組合や全国健康保険協会、市区町村 |
生命保険の高度障害保険金 |
高度障害になった際、死亡保険金と同額を受け取れる制度 |
加入している生命保険会社 |
国民健康保険料の免除制度 |
失業や障害などによって国民健康保険料が支払えなくなった際、全額または一部の支払いが免除される制度 |
市区町村の国民年金担当課 |
生活福祉資金貸付制度 |
所得が低い世帯に対して、資金の貸し付けや必要な援助指導を行う制度 |
市区町村の社会福祉協議会 |
生活保護制度 |
生活が困窮している人に対し、困窮の程度に応じて適切な保護を行う制度 |
市区町村の生活保護担当課 |
(文献5を参考に作成)
これらのサポートは、若年性認知症の症状や加入している健康保険などによって異なります。相談先に困った際は、以下の記事も参考にしてみてください。
生活面のサポート
障害者総合支援法を利用したサービスが大きな助けとなります。若年性認知症の場合、通常65歳以上が対象の介護保険が40歳以上から利用することができます6。現行では10代や20代の利用はできませんが、障害者総合支援法によって受けられる生活サポートの一部を、以下に紹介します7。
- ・介護給付:居宅介護・同行援護・短期入所・生活介護など
・訓練等給付:自立訓練・就労移行支援・就労継続支援など
・地域生活支援事業:移動支援・地域活動支援センターなど
・計画相談支援:サービス利用支援・継続サービス利用支援など
・地域相談支度:地域移行支援・地域定着支援など
実際にどのようなサポートを受けられるかは、市区町村の障害福祉担当課や地域包括支援センター、都道府県に設置された若年性認知症支援コーディネーターなどに問い合わせるとよいでしょう。
まとめ
10代や20代の若年性認知症は10万人あたり3.4人と報告されています2。もの忘れや今までと異なる言動・行動などが気になった場合は、早めの受診を検討しましょう。
また、若年性認知症と診断された場合、生活を助ける様々なサポートがあり、就職面や経済面についての不安点は地域包括支援センターや若年性認知症支援コーディネーター、医療機関のソーシャルワーカーなどへ相談できます。
若年性認知症と向き合うには、ご本人だけでなくご家族や周囲の理解も大切です。気になる点はひとりで抱え込まずに、専門家の手を借りることも検討してみてください。