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要介護認定とは?認知症との関係や認定基準、要支援との違い
更新日:2025-04-21

要介護認定とは?認知症との関係や認定基準、要支援との違い

要介護認定とは?認知症との関係や認定基準、要支援との違い

寝たきりや認知症などで介護が必要になったり、日常生活動作(ADL)が低下して家事などの生活支援が必要になったりすると、介護保険を利用してさまざまなサービスが受けられます。

介護保険の給付額は要介護度に応じて決まり、どの程度の要介護かを判定する要介護認定が必要です。

本記事では、要介護認定の概要や認知症との関係、介護保険の申請方法などについて解説します。

要介護認定とはなんですか?

要介護認定とは、主に以下の2点を判定するものです。


  • 要介護状態もしくは要支援状態であるかどうか
    どちらかであったとすればどの程度の介護サービスが必要か

介護の必要度は、「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階で表します(自立を含めると8段階)。

要介護認定を受けるにはまず、市区町村への申請が必要です。

その後、自治体ごとに設置された介護認定審査会で判定が行われ、介護サービスの利用が必要と判断されれば7段階のいずれかに認定されます。
認定後は、要支援の場合は予防給付、要介護であれば介護給付を受けることができます。

給付に関しては、限度額の範囲内であれば、1~3割の自己負担でサービスを利用することが可能です。給付は現金で支給されるのではなく、サービスの利用料から差し引かれる仕組みになっています。

要支援と要介護の違い

要支援、要介護とは以下のような状態をいいます。

要支援
体や精神上の障害があり、入浴や排泄、食事など日常生活における基本的な動作の一部において支援が必要で、将来介護が必要になるおそれのある状態1


要介護
体や精神上の障害があり、入浴や排泄、食事など日常生活における基本的な動作の一部もしくはすべてにおいて常時介護を要すると見込まれる状態1

要支援は日常生活における基本的なことの多くは自分でできますが、部分的に手助けが必要な状態です。支援があれば一人で生活することもできます。

一方の要介護は、介護や介助なしでは日常生活を送ることは難しい状態です。自立した生活を送れるかどうかが、要支援と要介護の分かれ目といえるでしょう。

要介護認定の流れ

要介護認定は、コンピュータによる一次判定と介護認定審査会(保健医療福祉の学識経験者で構成)による二次判定の二段階で行います。

一次判定では以下の5つの分野について、介護の手間を数値化した介護認定等基準時間を算出し、その合計値をもとに要介護度を判定します。

(表)行為区分毎の時間が表す行為

直接生活介助


入浴、排泄、食事等の介護

間接生活介助


洗濯、掃除等の家事援助等

BPSD 関連行為


徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等

機能訓練関連行為


歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練

医療関連行為


輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助等

(文献2をもとに作成)



(表)要介護状態区分等と要介護認定等基準時間との関係

区分

要介護認定等基準時間

非該当

25分未満

要支援1

25分以上32分未満

要支援2・要介護1

32分以上50分未満

要介護2

50分以上70分未満

要介護3

70分以上90分未満

要介護4

90分以上110分未満

要介護5

110分以上

(文献2をもとに作成)

要介護認定等基準時間は、介護の必要性を図るいわば「ものさし」で、介護サービスの合計時間と連動するわけではありません。

要介護認定等基準時間は1分間タイムスタディと呼ばれる特別な方法で算出される時間で、家庭で実際に行われる介護の時間とは異なります。
一次判定が終わると、一次判定の結果や主治医意見書、認定調査員による特記事項の内容に基づいて二次判定が行われ、要介護度が決定されます。

なお、上の表を見ると要支援2と要介護1の要介護認定等基準時間が同じです。おおむね6か月以内に介護の負担が増加して要介護度を再検討する必要があるならば要介護1、なければ要支援2となります。

申請の流れについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

認知症と要介護認定

認知症の方は、認知症でない人に比べて要介護度が高くなります。そのため、要介護認定では認知症加算という仕組みがあり、運動能力が低下していない認知症高齢者では、要介護認定等基準時間に認知症加算として時間が積み足されます。

その結果、要介護度が1もしくは2に繰り上がることがほとんどです。

要介護認定を受けるメリットと注意点

要介護認定を受けるメリットは、さまざまな介護保険を利用したサービスなどの支援を受けられる点です。

介護は長くつづくことも多く、家族の力だけではすべての問題を解決しにくいですが、行政や他人の力を借りることで家族の介護負担を減らすことにつながります。

例えば、訪問介護などのサービス利用にとどまらず、手すりの取り付け、段差の解消、トイレの改修など、住宅をバリアフリー化するための費用や福祉用具の購入でも補助が出る場合もあります3

ただし、注意点として要介護認定を受けるためには、基本的には自分で申請をしなければいけないことが挙げられます。市区町村への申請は、本人または家族以外に地域包括支援センターでも代行申請をしてくれます。本人や家族が申請に行けない場合には、地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

すぐにでもサービスを受けたい場合は1日でも早い申請の手続きが必要です。要介護認定は、行政が勝手に判断してくれるものではないことは、把握しておきましょう。

要介護度別の状態像と支給限度基準額

介護保険の居宅サービスや地域密着型サービスは、要介護度ごとに定められた支給限度基準額の範囲内であれば、所得に応じて1~3割の負担でサービスを利用できます。

限度額を超えたぶんのサービス利用に関しては全額自己負担となります。

要介護度ごとの状態像と支給限度基準額は下表のとおりです。

要介護度

状態像5,6

支給限度基準額(円)4

要支援1

日常生活動作(食事、排泄、掃除など)は自分でできる。手段的日常生活動作 (買い物、金銭管理など) の一部に見守りや介助が必要な状態。

50,320

1割負担:5,032

2割負担:10,064

3割負担:15,096

要支援2

要支援1の状態に加え、下肢の筋力低下などがみられる。今後介護が必要になる可能性がある人。

105,310

1割負担:10,531

2割負担:21,062

3割負担:31,593

要介護1

要支援2の状態に加え、手段的日常動作が低下し、一部で毎日介助が必要となる。

167,650

1割負担;16,765

2割負担:33,530

3割負担:50,295

要介護2

要介護1の状態に加え、調理や入浴などの日常生活動作に対しても介助が必要な状態。

197,050

1割負担:19,705

2割負担:39,410

3割負担:59,115

要介護3

寝返りや排泄、着替えなども難しくなり、日常生活動作において全面的な介護が必要な状態。

270,480

1割負担:27,048

2割負担:54,096

3割負担:81,144

要介護4

車椅子が必要となり、移乗や移動にも介護を要するなど、介護なしでの日常生活は困難な状態。

309,380

1割負担:30,938

2割負担:61,876

3割負担:92,814

要介護5

要介護4より動作能力が低下。寝たきりで自力で食事もできないなど、 介護なしでは日常生活がほぼ不可能な状態。

362,170

1割負担:36,218

2割負担:72,434

3割負担:108,651

(文献4,5,6をもとに作成)

ただし、居宅サービスや地域密着型サービスのすべてが支給限度基準額の対象となるわけではありません。適用対象外のサービスは以下のとおりです7

  • 居宅療養管理指導
  • 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)(短期利用を除く)
  • 認知症対応型共同生活介護(短期利用を除く)
    地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)
    地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設サービスも上記の対象外ですが、施設サービス費は市町村から費用の一部が支給され、1~3割の自己負担で利用することができます。金額は施設によって異なります。なお、施設サービス費に居住費や食費などは含まれません。

介護保険サービスを利用する方法

介護保険サービスの手続きは、利用するサービスの内容によって異なります。

自宅でサービスを受ける(居宅サービス、要介護1以上)

まず、地域包括支援センターに相談するなどして居宅支援事業者を選び、担当のケアマネジャーを決めましょう。

どのようなサービスを利用したいか希望を伝え、ケアマネジャーと一緒にケアプランを作成します。作成したらケアプランに基づいて、サービス提供事業者と直接契約を交わし、サービスの利用開始となります。

施設に入居する(施設サービス、要介護1以上)

介護施設への入居を検討している場合は、インターネットなどで資料を集め、希望と合致する施設をいくつか見学してみましょう。

ケアマネジャーが入所できる施設を探して紹介してくれる場合もあるため、家族だけで探すことが難しい場合には地域包括支援センターやケアマネジャーなどに相談をするとよいかもしれません。

施設や利用者の様子やサービス内容、費用など気になる点を確認し、入居したい施設が決まれば、施設に申し込みを行います。

また、ケアマネジャーとケアプランを作成することも必要です。作成したら、施設に入居しサービスの利用開始となります。

ケアプランの作成は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の場合、施設のケアマネジャーが担当します。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの場合は、気に入ったケアマネジャーを選任することも可能です。

なお、グループホームは要支援2以上で利用可能です。

介護予防サービスを受ける(要支援1、2)

近隣の地域包括支援センターに連絡します。

センターの職員と介護予防ケアプランを作成し、プランに合わせた介護予防サービスを利用することになります。要介護の人とは異なり、ケアマネジャーを探す必要はありません。

要介護認定について知り、いざという時にすぐにサービスを利用できるようしましょう

本記事では、要介護認定や介護保険の申請の流れなどについて解説しました。認知症の方は、以下の視点からも介護保険サービスの利用が欠かせません。

  • ・できる限り自立した生活を続ける
    ・家族の介護負担を軽くする
    ・進行の抑制が期待できるような訓練やレクリエーションを行う

申請から実際にサービスの利用を開始するまでは数ヵ月を要するため、認知症と診断されたら、速やかに介護保険の申請の手続きを行っておくことがおすすめです。サービスを利用する予定が今はなくても、いざという時すぐに利用できるように、早めに介護認定を受けておくようにしましょう。

(参考文献)

1, 厚生労働省. 政策について. 要介護認定に係る法令
[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/gaiyo4.html]
(最終閲覧日:2025年3月21日)

2, 厚生労働省. 要介護認定 介護認定審査会委員テキスト 2009 改訂版. P35
[https://www.mhlw.go.jp/content/000819417.pdf]
(最終閲覧日:2025年3月21日)

3, 厚生労働省. 介護保険における住宅改修 [https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf]
(最終閲覧日:2025年3月21日)

4, 厚生労働省. 介護事業所・生活関連情報検索.サービスにかかる利用料[https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html]
(最終閲覧日20252年3月21日)

5, 厚生労働省. 参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み
[https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/sankou3.html]
(最終閲覧日2025年3月21日)

6. 厚生労働省. 要介護認定の仕組みと手順 厚生労働省老人保健課. P11
[https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf]
(最終閲覧日2025年3月21日)

7, 厚生労働省. 区分支給限度基準額(参考資料)P3
[https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000175118.pdf]
(最終閲覧日2025年3月21日)

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