要介護認定を受けている方の心身の状態が変化したなど、認定された介護度と実情が合わないと感じるご家族もいらっしゃるでしょう。
この時に検討したいのが、要介護認定の「区分変更」です。区分変更を申請し、今の状態に合った介護度の認定を受けることで、介護するご家族の負担も減る可能性もあります。
この記事では、区分変更の意味や申請の流れに加えて、区分変更をするメリットと注意点をわかりやすく解説します。
要介護認定の区分変更とは
介護保険の被保険者が介護サービスを受けるためには、「要介護認定」によってどの程度のサービスが必要か「要介護度」を決める必要があります。要介護度は、要支援1、2と要介護1〜5の7つの区分で表します。
要介護認定の区分変更とは、現在認定を受けている「要介護」「要支援」の区分を変更することです。
例えば、要介護1から要介護2への変更や、要支援2から要介護1への変更などが該当します。
区分変更が必要な理由
区分変更を行うことで、必要な介護サービスを適切に利用できるようになり、ご本人の生活の質の向上につながります。
また、より重度の区分に変更されると月々の支給限度額が増え、活用できる介護サービスの幅が広がり、介護をされているご家族の負担軽減につながる可能性があります。
区分変更の対象となるケース
要介護認定の区分変更の対象となるのは、病気やケガによって心身の状態が変化し、介護サービスの利用内容を見直す必要がある場合です。
主なケースとしては、急性期の病気や骨折などにより介護の必要性がより高くなった場合や、逆にリハビリテーションの効果で状態が改善した場合などが挙げられます。
また、認知症の進行により見守りや介助が必要になった場合も、区分変更の対象です。
区分変更が発生するタイミング(更新認定・区分変更認定)
要介護の区分変更が発生するタイミングには「更新認定」と「区分変更認定」があります。
一度認定を受けた要介護度/要支援度には、有効期間(認定有効期間)が設定されています。有効期間の満了に伴い申請するのが「更新認定」、有効期間内に申請できるのが「区分変更認定」です。
更新認定
更新認定は、認定有効期間が満了するタイミングで実施されます。認定有効期間は自動で更新はされないので注意しましょう。
引き続き介護サービスを活用したい場合には、更新認定を申請し、あらためて認定を受ける必要があります。
区分変更認定
実際の心身の状態が大きく変化した場合には、認定有効期間内でも区分変更の申請が可能です。これを「区分変更認定」といいます。
申請後には新たな認定調査が行われ、新しい要介護度/要支援度が決定されます。
区分変更の申請の流れ
ここでは、区分変更認定を申請する場合について、申請前の準備から認定までの流れを説明します。
なお、区分変更はご本人やご家族も申請可能ですが、手続きが複雑になるため、ケアマネジャー(介護支援専門員)が申請することが一般的です。
区分変更認定の申請の流れ(編集部作成)
ケアマネジャーに相談、アセスメントを受ける
まずは、担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに相談しましょう。
ケアマネジャーがご本人やご家族に聞き取りを行い、現状の分析とニーズの把握をしてくれます。これをアセスメントといいます。
申請に必要な書類の準備
続いて、申請に必要な書類を準備します。主な書類は以下の通りです。市町村によって、異なる場合もありますので、お住まいの地区を管轄する保健福祉課などの窓口でも確認してください。
・要介護・要支援認定変更申請書
・介護保険被保険者証
・健康保険被保険者証の写し
・個人番号確認書類
・委任状(ご本人以外の方が申請する場合)
申請(窓口、郵送またはマイナポータル)
必要書類が用意できたら、お住まいの地区を管轄する保健福祉課などの窓口で申請します。
申請方法は、窓口申請、郵送申請のほか、マイナポータルを利用したオンライン申請の3通りがあります。
認定調査
区の職員や区が委託した介護支援専門員がご家庭を訪問し、状況を調査します。
認定調査は一次判定、二次判定の順に進みます。
一次判定は、全国共通で使用されるソフトを用いて、コンピュータによる判定が行われます。
二次判定では、有識者で構成された介護認定審査会が開かれ、一次判定の結果と主治医の意見書に基づいて要介護度/要支援度の判定が行われます。
認定
介護認定審査会での審査を経て、「非該当」「要支援1・2」「要介護1~5」に区分されます。認定結果は、原則として申請から 30 日以内に通知されます。
要介護認定の区分変更をするメリット
要介護認定の区分変更は、実際の心身の状態にあった介護サービスが利用できるようにすることが目的です。
区分変更のメリットとして、より重度の要介護度になると、利用できるサービスや使用できる上限額が増えることで、必要な支援を受けられるようになります。
月々の支給限度額が増える
介護保険で利用できるサービスには、「要介護」「要支援」の区分ごとに、1ヵ月ごとの上限額(区分支給限度基準額)が決められています。利用者は、この上限額の範囲で介護サービスを受けることができます。
上限額は「単位」で設定されており、重度の区分になるほど上限額(単位)も増え、より多くのサービスを利用できるようになります。
利用できるサービス・介護施設の幅が広がる
区分変更によって、より重度の区分に認定された場合、利用できる介護サービスの幅が広がるでしょう。
自宅に訪問する介護サービスを例に見てみましょう。
下の表の通り、要支援1・2の方は「訪問入浴」「訪問看護」「訪問リハビリ」は利用できますが、「訪問介護(ホームヘルプ)」「夜間対応型訪問介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は利用できません1。
サービス内容 |
要支援で受けられるか |
訪問介護(ホームヘルプ) |
ー |
訪問入浴 |
○ |
訪問看護 |
○ |
訪問リハビリ |
○ |
夜間対応型訪問介護 |
ー |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
ー |
※参考文献1をもとに、編集部作成
また、特別養護老人ホームへの入所は、原則として要介護3以上であることが条件になっているなど、要介護の区分内でも利用できるサービスが異なります。
借りられる福祉用具が増える
介護サービスでは、福祉用具の貸与サービスを利用できます。貸与の対象となる福祉用具は13項目ありますが、「要支援」「要介護」の区分によっては対象外のものもあります。
例えば、手すりやスロープは、全区分で貸与対象ですが、車椅子、床ずれ防止用具、移動用リフトは要介護2〜5の方のみが対象です2。
要介護認定の区分変更する際の注意点
区分変更を申請する際には、事前に知っておきたい注意点もあります。
自己負担額が増える場合もある
より重度の区分に変更されると、利用するサービスの内容が増えるため、それだけ自己負担額が増えます。
事前に新しい要介護度でのサービス計画をケアマネジャーや医療機関のスタッフと相談し、客観的な評価を得ることが望ましいです。
特に、要介護度の変更の可能性がある場合は、サービスの見直しが必要になることを念頭に置いて検討しましょう。
認定された区分には有効期間がある
要介護認定には有効期間があり、期間は条件によって異なります。
新規認定 |
更新認定 |
区分変更認定 |
|
認定のタイミング |
初回 |
認定有効期間満了 |
有効期間内 |
認定有効期間(原則) |
6ヵ月 |
12ヵ月 |
6ヵ月 |
延長・短縮の可能期 |
3ヵ月~12ヵ月 |
3ヵ月~36ヵ月(区分に変更がない場合は、最長48ヵ月) |
3ヵ月~12ヵ月 |
※参考文献3をもとに編集部作成
更新認定の有効期間は「原則12ヵ月、最長36ヵ月(区分に変更がない場合は最長48ヵ月)」です。
これに対して、区分変更認定の有効期間は「原則6ヵ月、最長12ヵ月」と認定期間が短いことにも注意が必要です。
区分変更の必要を感じたら、まずは相談してみましょう
要介護認定の区分変更は、現在認定を受けている「要介護」「要支援」の区分を変更することです。
適切なタイミングで区分変更されることで、ご本人の現状に合った介護サービスを利用でき、ご家族の介護の負担軽減と、ご本人の生活の質の向上につながる可能性があります。
利用中の介護サービスが実情と合っていないと感じる場合は、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。