健康診断で「脂質異常症」と診断されても、自覚症状がほとんどないため深刻に受け止めない方も多いのではないでしょうか。しかし、放置すると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な合併症につながる可能性があります。
本記事では脂質異常症の原因や分類について詳しく解説し、予防・改善のポイントをお伝えします。
脂質異常症について
脂質異常症の主な診断基準は、以下のとおりとされています1。
・LDLコレステロール140mg/dL以上
・HDLコレステロール40mg/dL未満
・中性脂肪150mg/dL以上(空腹時採血)*
・中性脂肪175mg/dL以上(随時採血)*
・Non-HDLコレステロール170mg/dL以上
* 10時間以上絶食の場合を空腹時(水などのカロリーのない水分摂取は可)、空腹時と確認できない場合を随時とします¹。
脂質異常症の特徴は、自覚症状がほとんどないまま進行することです。
放置すると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症の原因となるため、定期的な健康診断による早期発見と適切な管理が重要です2。
また、脂質異常症は高血圧や糖尿病とともに、生活習慣病のひとつとして知られています。年齢を重ねるとともに脂質異常症を発症する割合が高まります3。
脂質異常症の原因
脂質異常症の原因は主に3種類です。
・生活習慣によるもの:食事や飲酒・喫煙、運動など生活習慣の乱れが主な要因となります4。
・遺伝によるもの:遺伝的要因による脂質異常症は、家族性高コレステロール血症として知られています。
・他の疾患によるもの:続発性(二次性)脂質異常症と呼び、糖尿病や甲状腺機能低下症などが要因となるケースが多いです。
生活習慣によるもの
脂質異常症は、日常的な食生活や運動習慣と深く関連しています。飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品の過剰摂取が主な原因です。ほかにも、運動不足による肥満、過度な飲酒、喫煙なども脂質代謝に悪影響を及ぼします5。食物繊維や不飽和脂肪酸を摂取することで動脈硬化の進行の抑制に繋がります5。
運動不足で摂取したカロリーを消費しきれないと、内臓脂肪の蓄積を促進し、脂質代謝を悪化させます6。
アルコールの過剰摂取は中性脂肪値を上昇させ7、喫煙はLDLコレステロールを上昇させるとともにHDLコレステロールを低下させる原因となります8。
遺伝によるもの
遺伝的要因による脂質異常症の代表例は、家族性高コレステロール血症です。LDLコレステロール受容体の遺伝子などに異常があり、血液中のLDLコレステロールが高くなります9。
両親のどちらかが家族性高コレステロール血症の場合、子どもが遺伝子変異を受け継ぐ可能性は50%とされており、若年期からLDLコレステロール値が著しく高く、早期から動脈硬化が進行するというリスクもあります10, 11。
他の疾患によるもの
他の疾患に伴う二次性脂質異常症の要因として挙げられるのは、糖尿病や甲状腺機能低下症、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群です。
糖尿病ではインスリンの作用不足により脂質代謝が乱れ、中性脂肪やLDLコレステロールの上昇やHDLコレステロールの低下が起こり、甲状腺機能低下症では、代謝が全般的に低下することでLDLコレステロールが上昇します12, 13。
ネフローゼ症候群の場合は、タンパク質の代謝異常により脂質代謝も乱れ、総コレステロールや中性脂肪が上昇することがあるため、基礎疾患の治療とともに脂質異常症の管理も必要です。
脂質異常症の分類(タイプ)
脂質異常症は、血液検査で測定される脂質値の異常によって、大きく4つのタイプに分類されます1。
・高LDLコレステロール血症
・低HDLコレステロール血症
・高トリグリセライド血症
・高non-HDLコレステロール血症
基準値から外れている項目によって名称が異なります。複数の異常が重なる混合型脂質異常症もあるため、検査結果に基づいて医師が適切な治療方針を決定します。
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール値が140mg/dL以上の状態を高LDLコレステロール血症と呼びます。「悪玉コレステロール」とも呼ばれており、血管壁に蓄積されやすい性質があるため、動脈硬化を引き起こすリスクが高いことが特徴です4。
高LDLコレステロール血症の主な原因は、飽和脂肪酸やコレステロールの過剰摂取、運動不足による代謝低下、加齢などの生活習慣です。家族性高コレステロール血症として、遺伝的要因で発症する場合もあり、若年期から高値を示すケースもあるため早期介入が大切です。
獣肉、加工肉などの飽和脂肪酸の摂取を控え、野菜や大豆などの食物繊維を積極的に摂取することを心がけましょう5。
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」とも呼ばれ、低HDLコレステロール血症は値が40mg/dL未満の状態です。
血管壁に蓄積したコレステロールを回収して肝臓へ運ぶ働きがあるため、数値が低下してしまうと血管壁からのコレステロール除去機能が低下し、動脈硬化のリスクが高まることから基準値を維持することが推奨されます。
主な原因として、運動不足、喫煙、肥満、2型糖尿病などが挙げられ、運動や体重管理をしっかり行うとHDLコレステロール値の上昇が見込めます1。
高トリグリセライド血症
中性脂肪(トリグリセライド)値が150mg/dL以上の状態を高トリグリセライド血症と呼び、過剰なカロリー摂取や運動不足、飲酒などにより上昇しやすいという特徴があります1。糖質を多く含む菓子類、飲料、穀類の過剰摂取やアルコールの多飲、運動不足による肥満などが要因に挙げられます。
中性脂肪が500mg/dL以上の場合は急性膵炎の発症リスクが高くなるため、食事療法を行いながら早期に薬物療法を進めていかなければなりません14。心当たりのある食習慣があれば、早めに改善しましょう。
高non-HDLコレステロール血症
総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値が170mg/dL以上の状態を高non-HDLコレステロール血症と呼びます。LDLコレステロール単体の数値よりも動脈硬化により発症する疾患の発症予測ができる指標です4。
non-HDLコレステロールが高すぎると冠動脈疾患を発症するリスクが上がり、低すぎると栄養吸収が阻害されている可能性があります。
脂質異常症の検査・診断について
脂質異常症の診断方法は血液検査が主な検査方法ですが、超音波検査を行うこともあります4, 15。
血液検査をする際には、通常は空腹時(10時間以上の絶食後)に採血を行い、LDLコレステロール、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、中性脂肪の値を測定します。
その他、動脈硬化の程度を評価するために頸動脈エコー検査などを実施することで、脂質異常症だけでなく心疾患や脳血管疾患、糖尿病の早期発見にも繋がることもあります16。
脂質異常症と認知症の関連
中年期(40~64歳頃)の総コレステロール値はアルツハイマー型認知症と関連があるなど、脂質異常症と認知症は関連性が高いことが明らかになってきていますが、HDLコレステロールや中性脂肪の値については、中年期・高齢期のいずれにおいても、認知症発症との明確な関連性を示す十分な証拠は得られていません17。
しかし、コレステロールの値を基準値から外さないためにも、HDLコレステロールや中性脂肪の値は基準を維持することが大切です。
定期的な運動習慣は、脂質異常症だけでなくアルツハイマー型認知症をはじめとする認知症においても発症率の低下と関連すると報告されています18。
まとめ
脂質異常症は自覚症状が少ないものの、放置すると重大な健康リスクとなります。また認知症との関連性も指摘されており、中年期からの予防が特に重要です。生活習慣の改善と定期的な検査で、健康な生活を維持しましょう。