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認知症の幻覚や錯覚の対応法
更新日:2021/12/08

認知症の幻覚や錯覚の対応法

認知症の幻覚や錯覚の対応法

幻覚とは、実際には存在しないものを見たり聞いたり感じたりする症状です。
なかでも実際には存在しないものが見える幻視は、レビー小体型認知症の方に初期の頃からよくみられる症状です。
見えるものは、子供、人、動物などが多く、動きや色を伴っていたり、いなかったりします。
死んだはずの配偶者や親せきが見える場合もあります。
周囲の方からすると、ご本人が誰もいない空間に向かって話しかけているように見えたり、誰もいないところにお茶を出そうとしているように見えます。

錯視とは、ものを見間違えることです。
たとえば、壁紙の模様を見て虫が這っていると思ったり、壁のシミが人の顔に見えたり、ベッドカバーのしわがヘビに見えたりします。
レビー小体型認知症の方は錯視もよく体験されます。

気になる症状がある方は、こちら

対応法

頭から否定しない

家族や周囲の方が初めてこの症状を目にすると、とても驚かれると思います。レビー小体型認知症という診断がつく前には、何かにとりつかれたかとお祓いを受ける方さえいらっしゃるくらいです。
しかしどんなに現実離れしていようと、ご本人は実際に感じていますから、訴えを受け止め、頭から否定しないようにしましょう。

安心感を

レビー小体型認知症の方には、まず安心感をもってもらうことが一番です。ご本人の性格、幻視の症状、認知の状態をみながら、どう対応すれば一番ご本人が不安に陥らないか判断しましょう。

興奮している時には

あまり興奮して暴れると、転倒したりご自分や周りを傷つけたりするおそれがあります。
ご本人の話しを受ける形で対応して、まず興奮をなだめることが必要です。
たとえば「虫がたくさんいる」と訴えられたら「今、薬をまいたからすぐにいなくなりますよ」と答えたり、実際に消臭スプレーなどの無害なものをまいてみたりするのも方法でしょう。
ご本人が嫌がっているものが見えるようなら、追い払ったり片付けたりする振りをしてみましょう。

ご本人が「おかしい」と思っていることも

幻の存在を本当に信じ込んでいる方もいらっしゃいますが、「そんなはずはない」と少し醒めている方もいらっしゃいます。ただ、幻自体は実在することを信じずにはいられないほど、ありありと見えるようです。
ご本人は、その幻が自分に危害を加えるかも知れない、ということを恐れているので、まずは危険のないことを伝えて、安心させてあげることが大切です。
軽度の方に対しては、状態のよい時に「脳のなかには『見ること』を担当する場所があり、そこの調子が悪くなっているので幻が見えるのです。現実のものではありませんから危険はありませんよ」と説明しましょう。特に、かかりつけ医の先生から説明してもらえると効果的です。
一度で納得してもらえなくても、レビー小体型認知症の方のもの忘れは軽いので、診察のたびに繰り返し説明してもらううちに、理解していただけます。
ご本人がいったん理解すれば、「先生が幻だと言ったのだから大丈夫」とご自分に言い聞かせて、怖がらずに過ごせるようになる方もおられます。

部屋を明るく

幻視は暗いところで見える場合が多いですから、照明を工夫し、部屋を明るくしてみましょう。

部屋を見通しよく

幻はふすまの陰、家具の陰から現れることが多いようです。部屋を見通しよく片付けることは、幻視の対策としても、目で見て判断する能力の衰えの対策としても有効です。

錯視を誘うものは取り除きましょう

錯覚を誘発しているもの(壁のシミや雑音、機械音など)があれば取り除きましょう。

気分転換も

お茶をすすめる、散歩に連れ出すなどを試みて、気分転換をはかることも有効な場合があります。

ご本人と周囲の安全をはかりましょう

穏やかな幻覚ならよいのですが、恐怖のあまり暴れたり家から飛び出したりして、ご自身や周囲を傷つける場合があります。

  • ご本人の幻覚について頭から否定して興奮させない
  • ご本人が恐怖を感じる幻覚は周囲の方も協力して「始末」する。たとえば「虫」に対しては殺虫剤のようなもの(消臭剤など)をまく、「不審な人物」「影」に対しては懐中電灯で照らす、またご本人の信じる「ありがたいおふだ」をかざす、など
  • 刃物など危険なものはご本人のそばに置かない
  • 興奮のあまり転倒しないように、なるべく座ってもらう。立ち上がった時は目を離さない
  • 日頃から滑りやすい床や、カーペットの端のめくれなどを直しておく

などが大切です。

パニックになって家から飛び出されると、交通事故の危険もあります。家の前が幹線道路などで「危ない」と判断した場合、ご本人と周囲の方の安全を優先して、とにかく押しとどめてください。

薬での治療も

幻視は薬物治療によって改善することがありますので、専門医に相談しましょう。