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認知症による幻覚・幻視の症状を解説
更新日:2025-01-07

認知症による幻覚・幻視の症状を解説

認知症による幻覚・幻視の症状を解説

認知症における幻覚や幻視は、ご家族にとって不安な症状の1つです。

幻覚や幻視は認知症の種類によって症状の現れ方が異なり、適切な対応方法も変わってきます。

本記事では、医学的な知見に基づいて、認知症による幻覚の症状と対応方法について解説します。

認知症で発生する幻覚の種類と注意点

認知症で発生する幻覚には特徴があり、それぞれの症状の程度や生活への影響に応じて、環境調整や医療的な対応が求められます。

ご家族は幻覚の内容を否定せず、ご本人の不安な気持ちに寄り添いながら、安心できる環境づくりを心がけることが大切です。

以下に、主な幻覚症状の特徴と注意点をまとめました。

症状の種類 主な特徴 注意点
幻視 実在しない人物や動物、物体が見える

夕方以降に多く発生、

明るさを調整することで軽減する可能性がある

幻聴 実際にない声や音が聞こえる 独り言や周囲への攻撃性につながる可能性がある
幻味・幻臭 実際にない味やにおいを感じる 食欲低下や不安感につながる可能性がある
体感幻覚 身体に虫や異物がいる感覚 皮膚を掻きむしるなどの皮膚トラブルに注意
妄想

訂正のきかない誤った思い込み

(根拠のない確信的な思い込み)

幻覚と組み合わさって発生することがある

幻視 

実在しないものが見え、認知症の幻覚症状のなかで最も多く見られます。

小さな人物や動物、亡くなった家族が見えるといった体験が起こる可能性があります。

幻聴 

幻聴は実際にはない音や声が聞こえる症状です。誰かが話しかけてくる、音楽が聞こえるなどの体験があります。

幻視と比べると発生頻度は低いものの、ご本人の不安や混乱を強める要因となることがあります。

幻味や幻臭 

実際にない味やにおいを感じる症状です。

食べ物が腐っているように感じたり、異臭を感じたりすることで、食事の摂取が困難になる場合があります。

体感幻覚 

皮膚や身体の内部に虫や異物があるような感覚を体験する症状です。

不快な体感により、強い不安や混乱を引き起こすことがあります。

この不快感から、皮膚を強く掻いたり、傷つけてしまう場合など、皮膚トラブルにつながる可能性もあります。

妄想 

妄想は幻覚とは異なりますが、しばしば幻覚と併存して現れます。

物盗られ妄想や嫉妬妄想などが代表的で、訂正のきかない誤った思い込み(根拠のない確信的な思い込み)が特徴です。

幻覚体験が妄想的な解釈につながることもあります。

認知症の種類別の幻覚の発生の違い

認知症の種類によって、幻覚症状の発生頻度や特徴は大きく異なります。

なかでもレビー小体型認知症では初期から幻視が現れやすいです。アルツハイマー型認知症では幻覚がみられることはほとんどまれですが、中期以降に幻覚が出現する可能性があります。

一方、前頭側頭葉変性症や血管性認知症では幻覚の発生頻度は比較的低いとされています。

アルツハイマー型認知症と幻覚 

アルツハイマー型認知症で幻覚がみられることはほとんどまれですが、中期から後期にかけて幻覚が出現する可能性があります。

記憶障害や見当識障害が進行するなかで、過去の記憶と現実が混ざり合って幻覚として現れることがあります。

レビー小体型認知症と幻覚 

レビー小体型認知症では、初期の段階から小人や動物、知らない人物が見えるなどといった、具体的で鮮明な幻視が繰り返されることが特徴として挙げられます1

前頭側頭葉変性症と幻覚 

前頭側頭葉変性症では、幻覚の出現は比較的まれです。

主な症状は性格や行動の変化、言語機能の障害などで、視覚に関する症状は一般的ではありません。

ただし、病状の進行に伴い、まれに幻覚様の症状が現れることもあります。

血管性認知症と幻覚 

血管性認知症における幻覚発生は、脳の損傷部位によって異なります。

特定の脳の領域で血流が障害されると、幻視が現れることもあります。

しかし、発生頻度はレビー小体型認知症と比べて低いです。

急に幻覚が見える原因

突発的な幻覚の出現には、複数の要因が関係しています。

身体的な疲労や睡眠不足、環境の変化、薬の副作用などが引き金となることがあります。

幻覚・錯覚・せん妄の違いは? 

幻覚・錯覚・せん妄は似ているようで、実は異なる状態です。

幻覚は実在しないもの実感して認識する状態を指し、錯覚は実在するものを違うものと誤って認識する状態です。

一方、せん妄は幻覚や錯覚を伴うこともあります。薬剤からの影響や脱水や感染症などが原因で起こることが多く、原因への対処により改善が期待できます。

幻覚・幻視の症状から対応方法を考える

認知症の当事者が経験する幻覚や幻視は、ご本人にとってリアルな体験です。否定をすることで、不安や混乱が増大する可能性があります。

ご家族は否定することなく、訴えを受け止め、まずご本人の話をじっくりと聞き、寄り添う姿勢をもち共感的に接することが大切です。

困ったときは、かかりつけ医に相談してください。

(参考文献)
1, 日本神経学会監修:認知症疾患診療ガイドライン2017,医学書院. p.237-40.

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