2024年12月に閣議決定された認知症施策推進基本計画(以下、基本計画)では、認知症の当事者が尊厳を持って希望を持って暮らせる共生社会の実現を目指しています。
この基本計画では、国民一人一人が新しい認知症観を理解し、認知症の当事者やその家族とともに施策を作り上げ、実行し、評価していくことを掲げています。
また、国や地方公共団体、地域の関係者が密接に連携しながら、地域の実情に応じた認知症施策を総合的に推進することを重視しています。
さらに国においては、認知症の当事者が新たな知見や技術を活用し、生活の質を維持・向上させる取り組みを行うことも重要であることから、第1期(2024年12月〜2029年)に重点的に取り組むべき目標を「重点目標」として設定しています1。
第1期基本計画中(2024年12月〜2029年)の重点目標 |
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重点目標1 |
国民一人一人が「新しい認知症観」を理解していること |
重点目標2 |
認知症の当事者の生活においてその意思等が尊重されていること |
重点目標3 |
認知症の当事者・家族等が他の人々と支え合いながら地域で安心して暮らすことができること |
重点目標4 |
国民が認知症に関する新たな知見や技術を活用できること |
それぞれの目標達成に向けた指標について
重点目標の達成に向けて施策の効果を評価するため、プロセス指標、アウトプット指標、アウトカム指標という段階的な関連指標(KPI)を設定しています。
これらの指標は認知症基本法に基づく新たな観点から設定されたものです。
今後は国が中心となって、具体的な調査方法や指標に基づく認知症施策の評価方法を検討していきます。
それぞれの指標について |
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プロセス指標 |
地方公共団体等における認知症施策の立案、実施、評価におけるプロセス(認知症の当事者の参画状況、分野横断的な関係者との取組状況等)等により、多面的に把握するという観点で設定 |
アウトプット指標 |
重点目標に資する認知症施策の実施状況等を把握するという観点で設定 |
アウトカム指標 |
認知症の当事者やご家族等の認識、あるいは国民の認識を確認することを通じて、共生社会の実現状況を把握するという観点で設定 |
それぞれの重点目標における指標
基本計画での4つの重点目標の指標について、以下に記します。
重点目標1:国民一人一人が「新しい認知症観」を理解していること
地域での認知症の当事者との交流や認知症サポーター養成などを通して、認知症に関する基本的な知識の理解度や新しい認知症観*1の理解をアウトカム指標として定めています。
重点目標1 |
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プロセス指標 |
・地域のなかで認知症の当事者と出会い、その当事者活動を支援している地方公共団体の数
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アウトプット指標 |
・認知症希望大使等の本人発信等の取組を行っている地方公共団体の数
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アウトカム指標 |
・認知症や認知症の当事者に関する国民の基本的な知識の理解度
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※1 新しい認知症観:認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからも、一人一人が個人としてできること・ やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方
※2 チームオレンジ:認知症と思われる初期の段階から、心理面・生活面の支援として、市町村がコーディネーターを配置し、地域において把握した認知症の人の悩みや家族の身近な生活支援ニーズ等と認知症サポーターを中心とした支援者をつなぐ仕組み
重点目標2:認知症の当事者の生活においてその意思等が尊重されていること
ピアサポート活動や本人ミーティングを実施し、認知症の当事者やご家族の意見を反映した施策の実施がアウトプット指標に置かれています。
施策の結果、認知症の当事者の意見が尊重され、望む生活を継続できていることを目標としています。
重点目標2 |
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プロセス指標 |
・ピアサポート活動への支援を実施している地方公共団体の数
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アウトプット指標 |
・認知症施策に関して、ピアサポート活動等を通じて得られる認知症の当事者の意見を反映している地方公共団体の数
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アウトカム指標 |
・地域生活の様々な場面において、認知症の当事者の意思が尊重され、当事者が望む生活が継続できていると考えている認知症の当事者および国民の割合 |
重点目標3:認知症の当事者・ご家族等が他の人々と支え合いながら地域で安心して暮らすことができること
認知症の当事者が孤立することなく、地域で安心して暮らせる環境づくりを推進する指標が設定されています。
就労支援や相談体制の整備、認知症バリアフリーの推進など、多面的な支援を通じて、認知症の当事者が自分らしく暮らせる共生社会を目指しています。
重点目標3 |
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プロセス指標 |
・部署横断的に認知症施策の検討を実施している地方公共団体の数
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アウトプット指標 |
・就労支援も含めて個別の相談・支援を実施していることを明示した認知症地域支援推進員や若年性認知症支援コーディネーターを設置している地方公共団体の数
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アウトカム指標 |
・自分の思いを伝えることができる家族、友人、仲間がいると感じている認知症の当事者の割合
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重点目標4:国民が認知症に関する新たな知見や技術を活用できること
認知症の当事者とご家族の意見を反映させた研究開発を推進し、その成果を実際の生活に活かすことを目指しています。
重点目標4 |
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プロセス指標 |
・国が支援・実施する、認知症の当事者とご家族等の意見を反映させている認知症に関する研究事業に係る計画の数 |
アウトプット指標 |
・国が支援・実施する、認知症の当事者とご家族等の意見を反映させている認知症に関する研究事業の数 |
アウトカム指標 |
・国が支援・実施する、認知症に関する研究事業の成果が社会実装されている数 |
まとめ|認知症施策推進基本計画で定められている重点目標についてわかりやすく解説します
今後、全国の地方公共団体で認知症サポーターの養成強化や当事者参加型の施策づくり、バリアフリー環境の整備などが進められ、その効果が段階的に評価・検証されていきます。
認知症基本法が目指す共生社会の実現には、私たち一人一人が「新しい認知症観」を理解し、認知症に関する正しい知識を持ち、認知症と向き合う人々への理解を深めることが大切です。
認知症について理解を深めるために、認知症の基礎知識や当事者の声に触れてみませんか。