「片時も目を離さない、手をつなぐこと」認知症介護体験談
初めての行方不明
79 歳の妻、要介護2を看ています。徘徊についてはいろいろ経験があります。
一昨年、二人で城崎温泉へ行った帰り、城崎駅で京都行きの特急列車を待っていた時、妻がトイレに行くというので連れて行って待っていましたが、いつまで経っても出てこない、慌てて探し始め、警察にも連絡して、大雨の中を探し回ったのですが、なかなか見つかりませんでした。
2時間余り後に見つかったのは、大阪行きの特急列車の中でした。途中駅で降ろしてもらい、私はそこまで迎えに行って無事に帰ることができました。初めての行方不明経験で、見つかるまでは生きた心地がしないほど心配しました。トイレの反対側の出口から出たと思うのですが、どうやって無賃乗車できたのかはわかりません。
これ以降は絶対に妻の手を離さないことにして、いつも手をつないで歩いています。近所の人たちは「なんと仲の良い夫婦!」と言ってくれますが…。
続く行方不明
もう一度は昨年、真冬の寒い深夜のこと。隣に寝ているはずの妻がいないことに気づきました。いつからいなくなっていたのかわかりません。パジャマ姿ですが、幸いいつも持って出る手提げ袋を持って出ていました。その中には携帯電話が入れてあります。携帯は使える時も使えない時もありますが、万一の時を考えて持たせていました。
その携帯に「どうか出てくれ!」と、何度もかけ続けましたが、なかなか出ません。あきらめかけていた何十回目かについにつながりました。寒さと不安に震えて泣きそうな声でした。「そこはどこ?近くに何が見える?」と聞くうちに、ある病院の近くにいることがわかり「そこを動くな」と言ってタクシーで駆けつけました。場所は動いていましたが、見つけることができ、親切な運転手が車内を最高の温度にして冷えきった体を温めてくれました。トイレがわからず、仕方がなかったのでしょう、下半身は濡れてしまっていました。何時間歩いていたのかわかりません。
その後も、デイサービスに行っている日の午後、警察から「奥さんを保護している」と電話があり、何のことか一瞬わかりませんでしたが、迎えに行ってみると、デイから勝手に出てタクシーに乗り、行き先がわからないので交番に保護されたのです。
まだまだしっかりしているようでも何が起こるかわかりません。とにかく私はいつもべったり一緒。手をつなぎ、見失うことのないよう心がけています。お蔭でその後行方不明にはなっていません。
墓参り
昨年の今頃はちょうど熊本に二人で行っていました。これは「家に帰る」「母親に会いに行く」という訴えに毎日悩まされ、納得させるため妻の親の墓参りに連れて行ったのです。城崎のことがあったので緊張続きの4日間でしたが、無事に行くことができました。その時の墓前の写真を見せることで、何とか「母が生きている」という症状を治めることができています。
「ぽ~れぽ~れ」通巻409号(2014年8月25日発行)