MMSEとは?注意点や検査の流れについてもあわせて解説!
MMSEとは、認知機能障害をスクリーニングする検査の一つです。日本でも多くの医療現場や介護の現場で使われています。ここではMMSEや注意点、検査の流れについて解説します。
MMSEは認知機能を評価するためのスクリーニングテスト
Mini Mental State Examination(精神状態短時間検査)、略称MMSEは、認知機能を評価するためのスクリーニングテストです。
10分〜15分程度の短時間で評価できますが、テスト結果だけで認知症かどうかを判断するのではなく、病前能力や診察時の心身の状態を十分考慮して、判断します。
MMSEの原版は英語です。日本では当初、翻訳や文化的適応が適切でない、ただ日本語に変換しただけの日本語版を使っていました。しかし2006年、原版に忠実な翻訳と日本文化にマッチしたMMSE日本語版(MMSE-J)が作成されました。
MMSEの料金について
MMSEは元々保険請求ができない検査でしたが、平成30年の診療報酬の改定で評価され、保険請求できるようになっています。
MMSEのスクリーニング検査の流れ
ここでは、MMSEのスクリーニング検査の流れを説明します。
MMSEの事前準備
MMSEで使用するものは以下のとおりです。評価用紙以外、特別なものは必要ありません。
- MMSEの評価用紙
- 鉛筆と消しゴム
- 時計または鍵
- 白紙
MMSEの評価方法
MMSEは以下の11の項目で構成されています。
【MMSEの評価方法】
評価項目 | 設問数 | 例 |
---|---|---|
時間の見当識 | 5 |
|
場所の見当識 | 5 |
|
即時想起 | 3 |
|
注意と計算力 | 5 |
|
遅延再生 | 3 |
|
物品呼称 | 2 |
|
文の復唱 | 1 |
|
口頭指示 | 3 |
|
書字指示 | 1 |
|
自発書字 | 1 |
|
図形模写 | 1 |
|
正解1点、不正解0点で採点し、満点は30点です。1問あたりの制限時間は10秒/問で、返答がなければ不正解となります。
MMSEの採点基準
MMSEの採点基準は以下のとおりです。
【MMSEの採点基準】
MMSEの点数 | 診断 |
---|---|
28~30点 | 異常なし |
24~27点 | 軽度認知障害(MCI)が疑われる |
23点以下 | 認知症が疑われる |
30問中29問が言語機能を用いる検査のため、軽症例、病前能力の高い場合、視空間認知障害が主症状の場合には認知症とは診断されにくい一方、軽度でも言語機能障害のある場合には低得点となります。
こういった病前能力や診察時の心身の状態を考慮して判断するため、医療機関で検査を受けることが望ましいです。
MMSEによる重症度の判定
詳細な認知症の重症度の判定には臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating, CDR)を使うことが望ましいですが、簡易にMMSEでも判定できます。
MMSEによる重症度の判定は、以下のとおりです。
【MMSEによる重症度の判定】
軽度 | 中等度 | 重度 | |
---|---|---|---|
MMSE | 21点以上 | 11~20点 | 0~10点 |
MMSEと改訂長谷川式簡易知能評価スケールの違い
よく知られた認知症スクリーニング検査に、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」があります。MMSEと改訂長谷川式簡易知能評価スケールとの違いは以下のとおりです。
【MMSEと改訂長谷川式簡易知能評価スケールとの比較】
MMSE | 改訂長谷川式簡易知能評価スケール | |
---|---|---|
検査方法 | 口述、記述、動作、模写 | すべて口述 |
項目数 | 11項目 | 9項目 |
問題数 | 30問 | 30問 |
採点基準 | 23点以下を認知症疑い | 20点以下を認知症疑い |
使用している国 | 世界中(原版は英語) | 日本がメイン |
改訂長谷川式簡易知能評価スケールはMMSEと高い相関があります。
改訂長谷川式簡易知能評価スケールはすべて言語を使う検査で、記憶に関する項目はMMSEより多く、一般に20点以下を認知症疑いと判断します。
以下のページに「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」の詳細があります。
MMSEの注意点
MMSEを使う際には、以下の点に注意する必要があります。
- 点数が低くても認知症とは限らない
- うつ病の可能性もある
- 文字が書けない場合は、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」の検査を検討
- あくまでも検査のため、訓練としてMMSEの評価内容を使用しない
MMSEで点数が悪くても、認知症とは限りません。認知症以外の疾患の可能性もあるため、まずは専門医に相談しましょう。
また、本人の感情にも配慮して、家族が協力することも重要です。
文字が書けない場合は、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」検査を検討し、また訓練として使わないことも大切なことです。
(参考文献)
1, 杉下守弘ら: 認知神経科学. 2018; 20: 91–110.
2, 日本神経学会:認知症診断ガイドライン2017, p.25,2017
3, 日本老年医学会: 認知機能の評価法と認知症の診断 (https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_02.html 最終閲覧日:2024年6月12日)