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睡眠負債とは?寝だめは逆効果?健康への影響や解消法を解説
更新日:2025-04-09

睡眠負債とは?寝だめは逆効果?健康への影響や解消法を解説

睡眠負債とは?寝だめは逆効果?健康への影響や解消法を解説

働きざかりの世代には「毎日忙しくて十分に寝る時間がとれない」なんて方も多いのではないでしょうか?

その人にとって十分な睡眠がとれず、それが「負債」となって蓄積されることを睡眠負債といいます。この状態が続くと健康状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、睡眠負債が心身に及ぼす影響や、解消する方法についてお話ししていきます。

睡眠負債とは?寝だめは逆効果?

睡眠負債とは、睡眠不足の状態が続き、その蓄積が心身に悪影響を及ぼす状態を指します。

人によって必要な睡眠時間は異なり、年齢とともに徐々に減少する傾向にありますが、一般的に働く成人には6時間以上の睡眠が必要とされています1

しかし、統計的には20歳以上の約4割が1日の平均睡眠時間が6時間に満たない状態です2

睡眠不足を補うため、休日に長時間の睡眠をとる「寝だめ」で対策をしているという人も少なくないでしょう。しかし、これは平日と休日の体内時計を乱す原因になりかねません。

この体内時計がずれた状態を「社会的ジェットラグ(時差ぼけ)」といい、かえって健康状態に悪影響を与える可能性が指摘されています3

睡眠負債と寝だめによる悪循環に陥らないためにも、睡眠習慣の改善はとても重要です。睡眠負債を解消するには、毎日の睡眠時間を適切に確保し、規則正しい生活リズムを維持することを心掛けましょう。

睡眠負債が与える心身への影響

慢性的な睡眠不足による睡眠負債と、体内時計のずれを生じさせる社会的ジェットラグは、心身の健康にさまざまな影響を与えます。

生活習慣病のリスクを高める

社会的ジェットラグは、糖尿病や脳卒中、心疾患などの生活習慣病のリスクを高める恐れがあります3

また、社会的ジェットラグは、体内の中性脂肪や空腹時血糖値の上昇、HDLコレステロールの低下、肥満、メタボリックシンドロームのリスク増加との関連性が報告されています4

はっきりとしたメカニズムは不明ですが、糖質コルチコイドの分泌や食後グルコース反応異常、血中コルチゾール濃度上昇などといった代謝に関わるホルモンの働きに異常をきたしてしまうことが関与していると考えられています3。 

これらのリスクを抱えることは、動脈硬化や高血圧症などの発症にもつながります。長期的には糖尿病や脳卒中、心疾患へとつながってしまいます。

学習力や記憶力が低下する

睡眠不足により日中に眠気が生じると、注意力や集中力の低下や、学習効率や記憶力が落ちる原因になります3

認知症の発症リスクにも影響する

睡眠不足は認知症の発症リスクとも関連している可能性があります。

50歳、60歳、70歳時点で短時間睡眠だった人は、7時間睡眠の人と比べて認知症の発症率が30%増加したという報告もあります5

うつ病の発症につながる可能性がある

睡眠負債による慢性的な眠気と不規則な睡眠習慣は、抑うつ気分を誘発しやすくなります。

社会的ジェットラグが2時間以上ある人は、1時間以下の人と比較して、将来的にうつ病などの精神疾患を発症するリスクが増大する可能性が指摘されています6

免疫力が低下する

睡眠習慣は免疫機能にも影響を与えます。十分な睡眠時間が確保できない状況が続くと、免疫機能が低下し、風邪などの病気にかかりやすくなってしまうのです。

実際、1日の睡眠時間が5時間未満の人は7時間以上の人と比べて、風邪をひきやすくなるという研究も報告されています7

睡眠負債を解消する方法

ここまでの内容で、寝だめは睡眠習慣の改善に逆効果であると説明してきました。

では、睡眠負債がある場合、どのような解消方法があるのでしょうか。

自分に適した睡眠時間を理解する

必要な睡眠時間は人それぞれ異なりますので、自分にとって最適な睡眠時間を把握することが大切です1

まずは、毎日の睡眠時間を記録してみましょう。そして、日中の活動に支障がないかを確認していくことで、自分に必要な睡眠時間が見えてくるはずです。

なお、休日の寝だめが必要だと感じる場合、平日の睡眠時間が不足しているサインといえます8

ただし、十分な睡眠時間をとっても疲れが取れない場合は、睡眠の質に問題がある可能性があります。睡眠に不安のある方は早めに専門家に相談しましょう。

平日も休日も同じ時間に起きる

平日と休日の起床時間を合わせ、規則正しいスケジュールで睡眠時間を確保することも重要です。起床時間を一定にすることで、夜間の睡眠リズムも整います。

さらに起床後に朝日を浴びることで、メラトニンの分泌が促進され、夜間の睡眠も誘導されます8

適度に昼寝をする

日中に眠気を感じる場合は、適度な昼寝が効果的です。15分程度の短い昼寝は、パフォーマンスや集中力の向上に役立ちます9

しかし、30分以上の昼寝は深い睡眠に入ってしまい、起床後のだるさや夜間の不眠の原因となる可能性があるため避けましょう10

睡眠負債についてよくある質問

睡眠負債についてよくある質問について、次にまとめました。

睡眠負債の問題を抱える人が日本に多い理由とは?

睡眠負債の人が多い理由として、日本が他国と比較して睡眠時間が短い傾向であることが挙げられます。

特に、女性の場合は仕事に加えて家事や育児の負担を抱えているケースが多いため、睡眠時間が不足しがちです11

また、スマートフォンの日常的な使用なども睡眠不足の一因となっている可能性があります。

睡眠負債が続くと日中はどんな症状がでますか?

睡眠負債が続くと、日中の眠気や疲労感が持続し、さまざまな面でのパフォーマンスが低下します。

集中力や記憶力の低下、感情のコントロールが難しくなるなどの症状も現れやすくなります4。生活習慣病やうつ病などの深刻な健康問題につながる可能性があるため、注意が必要です。

睡眠負債による睡眠不足は寝だめで取り戻せますか?

寝だめで睡眠負債を完全に解消することは困難です。むしろ、寝だめよりも平日と休日の生活リズムを近づけることが重要です。

忙しくてどうしても眠る時間がとれないという方は、以下の記事もぜひご覧ください。

まとめ

慢性的な睡眠不足による睡眠負債や、休日の寝だめによって生じる社会的ジェットラグは、心身の健康状態にさまざまな影響を及ぼします。

睡眠負債を解消するには自分に合った睡眠時間を見極め、平日と休日でできるだけ変わらない睡眠リズムをとることが大切です。

忙しくてもできるだけ規則正しい生活を心がけ、健康的な毎日を過ごしましょう。 

(参考文献)

1,厚生労働省:良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと. [https://e-kennet.mhlw.go.jp/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/leaf-sleep_a5.pdf?1738108800119](最終閲覧日:2025年3月15日)

2,厚生労働省:令和元年 国民健康・栄養調査報告. [https://www.mhlw.go.jp/content/001066903.pdf](最終閲覧日:2025年3月15日)

3,三島和夫: 社会的ジェットラグと睡眠. 学術の動向. 2019: 32-39.

4,Patricia M Wong: Social Jetlag, Chronotype, and Cardiometabolic Risk. J Clin Endocrinol Metab. 2015;100(12):4612-20.

5,Sabia S, et al: Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nat Commun 12: 2289, 2021.

6,Femke Rutters, et al: Is social jetlag associated with an adverse endocrine, behavioral, and cardiovascular risk profile?J Biol Rhythms.2014;29(5):377-383.

7,Aric A Prather, et al: Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. Sleep.2015;38(9):1353-1359.        

8,厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023. [https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf](最終閲覧日:2025年3月15日)

9,Sanae Oriyama, et al: Effects of two 15-min naps on the subjective sleepiness, fatigue and heart rate variability of night shift nurses. Ind Health. 2014;52(1):25-35.

10,Michele Lastella, et al:To Nap or Not to Nap? A Systematic Review Evaluating Napping Behavior in Athletes and the Impact on Various Measures of Athletic Performance. 2021;13:841-862.

11,三島和夫: 睡眠と生活習慣病との深い関係. e-ヘルスネット.[https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html](最終閲覧日:2025年3月15日)

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