認知症の「治療」とは?
「認知症」とは、いったん成熟した認知機能がなんらかの原因によって機能低下を来たし、生活に支障を来たした状態のことを指します。その原因はたくさんのものが知られ、50種類を超えます(主なものを示したのが表1です)。認知症の代表的なものには「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「正常圧水頭症」などがあります。認知症の治療内容は、当然ながら各々の原因によって変わってきます。このページでは、治療について、「薬物療法」「薬物療法以外のアプローチ」の大きくふたつに分けて概説をします。実際の現場では、両者をうまく組み合わせながら、治療にあたっています。
- アルツハイマー病
- 血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭葉変性症
- 進行性核上性麻痺
- 皮質基底核変性症
- クロイツフェルト-ヤコブ症
- 甲状腺機能低下症
- 感染症(梅毒、ヘルペス脳炎など)
- 代謝性疾患(肝性脳症、アルコール関連障害、ビタミンB12欠乏症など)
など
日本認知症学会編:認知症テキストブック,2008をもとに作成
薬物療法
認知症の症状の整理の仕方として、認知機能そのものの低下を示す「中核症状」と、その中核症状と関連した感情、思考、そして行動の変化を総称した「行動・周辺症状」とに分けることがあります。これらの症状に対して薬物治療は一定の効果をあげます。ただし、おくすりはときとして副作用が問題となりますし、認知症の原因によっては薬物療法以外の方法でその原因を取り除くことが可能な場合がありますから、きちんと認知症の背景となる病態を知り、そして薬物療法のまえに、「まず非薬物的なアプローチで症状の緩和が目指せるかどうか」という視点で検討をすることが大切です。
薬物療法以外のアプローチ
このアプローチには「リハビリテーション的な視点(認知症リハビリテーション)」や「家族・介護者など当事者に関わる人々へのはたらきかけという視点」が含まれます。そして、意外に思われるかもしれませんが、「手術療法」も含まれます。認知症リハビリテーションは、非薬物療法と呼ばれることもあります。脳を刺激するいくつかの有効なリハビリテーションが知られており、それにより脳の機能の維持、改善をはかります。当事者に関わる人々は、認知症の人がどういう場面で困るのか、そしてそのときにどういうサポートが必要になるのかということを知ると、お互いのコミュニケーションのあり方に変化が生まれ、結果的に認知症のさまざまな症状が軽減することにつながります。