MCI(軽度認知障害)のご家族が自動車事故を起こさないために
人身事故や高速道路の逆走などのニュースを耳にします。
国土交通省の調査によると、逆走した運転者の67%が高齢者(65歳以上)であることがわかっています1。
なかには、MCIの症状があらわれている方がいらっしゃるかもしれません。
そもそもMCIとは何か?
MCIは認知機能が低下している状態と認知症の間の状態を指します。
日常生活に支障はありませんが、もの忘れが増えたり、「同じ話を繰り返している」とご家族から指摘される場合はMCIの可能性があります。
MCIが進行すると、症状が悪化して認知症になる場合があります。
認知症への移行率は1年で5~15%であり、2012年時点ではMCIの方は推定400万人です2。
ご自身・ご家族の運転が不安という方は、チェックしてみましょう
運転に不安を感じる場合は、警視庁の「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」3を活用してみてください。
このチェックリストはMCIの当事者が運転時にあらわれやすい事象をまとめたものです。
このリストに5項目以上チェックがある場合、専門機関で診てもらうなどの目安として活用し、安全運転に心がけるようにしましょう。
運転時認知障害早期発見チェックリスト30 | |
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1 | 車のキーや免許証などを探し回ることがある。 |
2 | 今までできていたカーステレオやカーナビの操作ができなくなった。 |
3 | トリップメーターの戻し方や時計の合わせ方がわからなくなった。 |
4 | 機器や装置(アクセル、ブレーキ、ウィンカーなど)の名前を思い出せないことがある。 |
5 | 道路標識の意味が思い出せないことがある。 |
6 |
スーパーなどの駐車場で自分の車を停めた位置が分からなくなることがある。 |
7 |
何度も行っている場所への道順がすぐに思い出せないことがある。 |
8 |
運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある。 |
9 |
良く通る道なのに曲がる場所を間違えることがある。 |
10 |
車で出かけたのに他の交通手段で帰ってきたことがある。 |
11 |
運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった。 |
12 |
アクセルとブレーキを間違えることがある。 |
13 |
曲がる際にウインカーを出し忘れることがある。 |
14 |
反対車線を走ってしまった(走りそうになった)。 |
15 |
右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった。 |
16 |
気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがよくある。 |
17 |
車間距離を一定に保つことが苦手になった。 |
18 |
高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった。 |
19 |
合流が怖く(苦手に)なった。 |
20 |
車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた。 |
21 |
駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を停めることが難しくなった。 |
22 |
日時を間違えて目的地に行くことが多くなった。 |
23 |
急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(と言われるようになった)。 |
24 |
交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった。 |
25 |
運転している時にミスをしたり危険な目にあったりすると頭の中が真っ白になる。 |
26 |
好きだったドライブに行く回数が減った。 |
27 |
同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった。 |
28 |
以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった。 |
29 |
運転自体に興味がなくなった。 |
30 |
運転すると妙に疲れるようになった。 |
警視庁. やってみよう!「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」より許可を得て引用
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/korei_check_list30.html
(最終閲覧日:2024年12月4日)
MCIと診断されたら、運転免許はどうなる?
MCIと診断された場合は免許証の更新は認められますが、半年後に再検査を行う必要があります。
「認知症のおそれがある」という旨の診断結果であった場合も臨時適性検査を受け、または医師の診断書を提出することとなります。
認知症と診断された場合には、聴聞等の手続を経たうえで運転免許が取り消され、又は効力が停止されます4。
「かかりつけ医向け認知症高齢者の運転免許更新に関する診断書作成の手引き」について
「かかりつけ医向け認知症高齢者の運転免許更新に関する診断書作成の手引き」が2017年3月に施行された改正道路交通法を受けて作られ、2022年4月に改定されています5。
認知症の進行状況を把握し、安全な運転が継続可能かどうか判断するための診断書作成に向けたガイドラインです。
この手引きは、高齢者ドライバーの認知機能低下に焦点を当てたものであり、認知機能のほかに、ご家族との協力方法、警察や行政との連携に関するポイントが書かれています。
これを活用することで、交通社会全体のリスク軽減に役立てられています。
改正道路交通法の詳細は下記の関連ページをご参照ください。
MCIと診断された当事者に対してご家族が取るべき対応
MCIと診断された当事者に対して、ご家族はまず医師と相談し、運転を続けるべきかどうかを慎重に検討しなければなりません。
当事者の運転を控えることを促す際には、身体を心配していることや万が一の不安を伝えたり、代替の交通手段を考えるといった当事者を傷つけない配慮が重要です。
公共交通機関が発達していない地域にお住まいの場合は、運転の代わりに地域の支援サービスを利用することで不便さを軽減できることを伝えましょう。
まとめ|軽度認知障害(MCI)と診断されたときの運転免許はどうなる?
MCIと診断された場合の運転は慎重な判断が求められます。
ご家族が適切にサポートすることで、事故を未然に防ぐことができる可能性があります。
安全を最優先に、医師や専門家の助言を受けながら対応しましょう。
また、ご家族は運転免許を返納する際のご本人の心理的な負担にも配慮し、感情面のケアも行うことが重要です。
(参考文献)
1, 国土交通省 逆走事案のデータ分析結果. p3.
[https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/reverse_run/pdf03/03.pdf] (最終閲覧日:2024年11月5日)
2, 国立研究法人 国立長寿医療研究センター. あなたとからだを元気にするMCIハンドブック. p4.
3, 警視庁. やってみよう!「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」.
[https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/korei_check_list30.html](最終閲覧日:2024年11月5日)
4, 警察庁. 認知機能検査について.
[https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html] (最終閲覧日:2024年11月5日)
5, 日本医師会. かかりつけ医向け認知症高齢者の運転免許更新に関する診断書作成の手引き~改定版~. 2022.