脳卒中は命に関わる疾患(病気)で、後遺症が残ると日常生活にも支障をきたします。脳卒中の発症には生活習慣が深く関わっているため、日常生活での注意点を知り、予防のためにできることを行いましょう。本記事では脳卒中に早い段階で気づくためのポイントも解説します。
脳卒中とは
脳卒中は、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、脳血管にできた瘤(こぶ)が破裂することなどで起こるくも膜下出血の総称です。
脳の血管に異常が生じることで、脳細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、さまざまな神経症状が出現します。
発症後の治療も重要ですが、予防でリスクを減らせる疾患であることから、適切な生活習慣の維持と管理が求められます1。
脳卒中による症状
損傷を受けた脳の部位によって症状が異なります。代表的な症状を以下の表にまとめました。これらの障害は、日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期発見と適切な治療、リハビリテーションが重要です。
脳卒中による症状
種類 |
症状 |
運動障害2 |
・体の片側の麻痺(顔、腕、足) |
嚥下障害2 |
・食事の際にむせやすい |
失語症・構音障害2 |
・言葉の理解ができない |
高次脳機能障害2 |
・半側空間無視:片方の空間に注意が向かない |
(文献2〜4を参考に表を作成)
脳卒中予防のために注意すべき病気
脳卒中の予防には、生活習慣病の管理が重要です。
- ・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・不整脈(心房細動)
上記の病気は、脳卒中発症の危険因子であるため5、定期的な検診を受け、食生活などに注意しましょう。
喫煙や肥満は、生活習慣病のリスク因子となります5。
禁煙や減量に目を向けることも重要です。
生活習慣の改善と医療機関での適切な治療を組み合わせることで、脳卒中の予防効果が期待できます。
脳卒中予防のために日常生活でできること
生活習慣病の管理と定期的な健康チェック、適切な食事、継続的な運動が重要な予防策となります。
具体的には
- ・朝晩の血圧測定と記録
・EPAやDHAが豊富な魚料理の摂取
・1日60分以上の歩行運動
などがあります。
自身の健康状態に関心を持ち、定期的な検診を受けながら、食事や運動の改善に取り組むことで、脳卒中のリスクを低減できます。
生活
食事面では塩分の摂取を減らし、野菜や果物を増やし、バランスの良い食事を摂るように心がけましょう。また、禁煙、節酒、適切な運動習慣を心がけましょう。
脳卒中のリスクとなる病気に自分自身が関心を持つこと、定期的な検診や人間ドッグなどでの検査が推奨されます。処方された薬がある場合は、正しく服用するようにしましょう。飲みにくい、飲み忘れた、薬を飲むと調子が悪くなるといった場合は薬剤師や医師に相談を検討してみてください6。
食事
高血圧や糖尿病、脂質異常症の管理には食事が重要な役割を持ちます。
病気ごとに、食事の際の工夫について紹介しますので、ご家庭で取り入れられる対策をしてみましょう。
疾患の種類 |
食事の工夫 |
高血圧7 |
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糖尿病 |
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脂質異常症 |
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(文献7〜9を参考に表を作成)
運動
運動は生活習慣病の予防と管理において重要です。
身体活動・ 運動の量が多い方は、少ない方と比較して循環器病、2型糖尿病、がん、ロコモティブシン ドローム、うつ病、認知症等の発症・罹患リスクが低いことが報告されています10。
日常的な運動習慣を身に付けられるよう、できる範囲から始めてみましょう。
成人、高齢者における運動の目安を紹介します。
運動の目安 |
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成人11 |
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高齢者12 |
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(文献11、12を参考に表を作成)
脳卒中予防10か条
日本脳卒中協会が脳卒中予防の知識を普及するために「脳卒中予防十か条」を作成しています13。
危険因子を知ること、危険因子を減らすための生活習慣の工夫、発症時の対応を10個に集約したものです。
いつ起こるかわからない脳卒中に対して、注意が必要な病気の把握や、対策を意識するのに役立てるとよいでしょう。
脳卒中予防十か条
1 |
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2 |
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3 |
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4 |
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5 |
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6 |
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7 |
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8 |
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9 |
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10 |
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(文献13より許可を得て掲載)
脳卒中を早期発見するために必要なこと
脳卒中の早期発見には、FASTと呼ばれる判断基準を用いましょう。顔・腕・言葉に突然の異変が現れた場合、脳卒中を疑い、早急に救急車を呼びましょう。
FASTについては、以下のリンクで解説しています。
FASTに加えて、脳卒中の5大症状も覚えておきましょう6。いずれも「突然」起こります。いつもと違う、様子がおかしいと思ったら、ためらわずに救急車を呼んでください。
脳卒中5大症状
- ・片方の目が見えない、 物が2つに見える、 視野の半分が欠ける
・経験したことのない 激しい頭痛がする
・力はあるのに立てない、 歩けない、 フラフラする
・ろれつが回らない、 言葉が出ない、 他人の言うことが 理解できない
・片方の手足・顔半分の 麻痺・しびれが起こる
(顔のみ、手のみ、 足のみの場合もある)
脳卒中予防のために血液サラサラの薬を飲むことはある?
非弁膜症性の心房細動があり、脳卒中のリスクが高い場合に血液サラサラの薬(抗凝固薬)を予防的に服用することがあります6。
血の塊ができるのを予防し、脳梗塞の発症リスクを減らすためです。
ただし、抗凝固薬の使用には出血のリスクも伴うため、医師による定期的な経過観察が必要です。
服用開始前には、出血リスクの評価や、他の服用中の薬との相互作用の確認を行います。
歯科治療や手術の際には、薬の中断が必要な場合もあり、事前に主治医へ「血液サラサラの薬を飲んでいる」と伝えるようにしましょう。
まとめ
脳卒中予防には、生活習慣病の管理と健康的な生活習慣の維持が重要です。
日々の血圧管理、適切な食事と運動、定期的な健康診断の受診を心がけましょう。
また、早期発見のために脳卒中の警告サインを知っておくことも大切です。
必要に応じて医師と相談の上、適切な予防法を選択することで、脳卒中のリスクを軽減できます。