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脳卒中による死亡率と血圧のコントロールの重要性について解説します
更新日:2025-03-10

脳卒中による死亡率と血圧のコントロールの重要性について解説します

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脳卒中による死亡率と血圧のコントロールの重要性について解説します

脳卒中で亡くなる人の割合はどれくらいだろう、と気になる方もいらっしゃるかと思います。以前は脳卒中を含む脳血管疾患が死亡原因の1位でした1。しかし、医療の進歩により脳卒中の死亡率は変わってきています。

この記事では脳卒中の死亡率と、脳卒中の対策の1つとして重要な血圧のコントロールについて解説します。

脳卒中とは?

脳卒中は脳血管疾患の一種で脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つの疾患(病気)が含まれます2。脳梗塞は脳の血管が詰まってしまう疾患(病気)、脳出血とくも膜下出血は脳の血管が破れてしまう疾患(病気)です2

近年の脳卒中の死亡率

2023年における脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の死亡率は下記の通りです3
※死亡率:人口10万人に対して何人が亡くなるかを示す数値

死亡率
(10万人に対して何人が亡くなるか)

脳梗塞

47.5

脳出血

27.0

くも膜下出血

9.2

(文献3を参考に表を作成)

2023年のデータでは、脳血管疾患はがん、心疾患、老衰に次いで日本人の死因の4位となっています3。以前と比較すると、脳卒中の死亡率は下がっています1,3

脳卒中の5年生存率

脳卒中を発症した後の生存率を調べた報告では、5年後の生存率は65.9%という結果でした4
脳出血とくも膜下出血で亡くなる方の多くは脳内の出血が原因です。一方、脳梗塞は5年以内に循環器疾患や呼吸器疾患で亡くなる方が3割弱と、脳出血やくも膜下出血に比べて他の疾患(病気)で亡くなるリスクの高さがうかがえます4
そのため日ごろからの脳卒中に対する備えが重要になってくるでしょう。

脳卒中で見られる症状や脳卒中が疑われるときの対処方法は別の記事で詳しく解説しています。

血圧が脳卒中に与える影響

脳卒中の対策として、血圧のコントロールが重要です5。糖尿病や心房細動、メタボリックシンドロームも脳卒中のリスクになりますが、影響が最も強いのは高血圧とされています2, 5
血圧のコントロールが脳卒中の対策としてどの程度有効なのか、目標とする血圧はどれくらいなのかを解説します。

血圧管理の重要性

血圧をコントロールし、高血圧の予防や管理をすることで脳卒中の対策につながります。
血圧が3mmHg低下すると脳卒中を含む脳血管疾患の死亡数が10%減少すると報告されており、脳卒中を発症した経験に関わらず、血圧のコントロールが脳卒中の対策の1つとして重要であると言えるでしょう6

推奨される血圧の目標値

75歳未満の方は病院での血圧を130/80mmHg未満、家庭での血圧を125/75mmHg未満の範囲にコントロールすることが目標とされています7
病院と家庭で血圧の目標値が異なるのは、診察室ではストレスの影響により血圧が上がってしまう場合があるためです8

ご自身の体調に合わせた血圧のコントロールが重要になります。特に血液をサラサラにする薬を服用していたり、他の病気があったりすると年齢が同じでも目標値が異なることがあるため注意しましょう。

血圧をコントロールするためのステップ

血圧のコントロールは脳卒中に備えるために重要だと説明してきました。血圧を目標値の範囲内でコントロールするため、私たちができる3つのステップを紹介します。

ご自身の血圧を把握する

血圧をコントロールするために、まずはご自身の血圧を把握しましょう6。血圧は1日の中で変動するため、ご家庭で朝晩2回の測定が推奨されています9
日本には推定4,300万人の高血圧の方がいると推定されていますが、十分な血圧のコントロールができているのは27%と言われています6。治療を受けていても十分なコントロールがされていない方が多くいらっしゃるようです。

生活習慣を改善する

「血圧を測定してみたら予想よりも高かった」「健康診断で異常を指摘されてしまった」という方は生活習慣を改善してみましょう。減塩を中心に食生活を変える、運動習慣を取り入れる、お酒を控える、禁煙するといった改善により血圧のコントロールが期待できます。生活習慣の改善は総合的に取り組むとより効果的です10
続けられる対策をさまざまな方面から少しずつ取り入れることが重要になります。

降圧薬により治療する

生活習慣の改善に取り組んでも血圧のコントロールが難しい方は薬による治療も検討しましょう11。生活習慣の改善を並行して続けることで薬の効果を高めたり、量を最小限に抑えたりできる可能性があります12
薬による治療をしながらご自身の生活習慣を少しでも良い方向へ変えられるよう見直してみましょう。

まとめ|血圧にも気を配って脳卒中に備えよう

脳卒中の死亡率と、脳卒中の対策の1つとして重要な血圧のコントロールについて解説しました。
血圧のコントールでは薬に頼るだけでなく生活習慣病の改善など、ご自身の取り組みが重要になります。
脳卒中に備えるためにも、一度ご自身の血圧に目を向けてみてはいかがでしょうか。

(参考文献)
1, 厚生労働省: 死因順位(第5位まで)別にみた死亡数・死亡率(人口10万対)の年次推移.
[https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth7.html]
(最終閲覧日:2025212日)
2, 厚生労働省:脳血管障害・脳卒中. e-ヘルスネット.
[https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html]
(最終閲覧日:2025212日)
3, 厚生労働省:令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況
[https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei23/dl/15_all.pdf]
(最終閲覧日:2025212日)
4, Takashima N, et al:Long-Term Survival after Stroke in 1.4 Million Japanese Population: Shiga Stroke and Heart Attack Registry. J Stroke. 2020;22(3):336-44.
5, Kitamura A, et al: Impact of Hypertension and Subclinical Organ Damage on the Incidence of Cardiovascular Disease Among Japanese Residents at the Population and Individual LevelsThe Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS) . Circ J. 2017;81(7):1022-8.
6, 大石 充:脳心血管病一次予防に向けた高血圧治療. 日内会誌. 2023;112(3):332-7.
7, 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, :降圧目標. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版. 2019. p.52-3.
8, 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, :家庭血圧,ABPMに基づく高血圧. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版. 2019. p.20-3.
9, 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, :家庭血圧測定の評価には,いつ,何回,何日間の測定を推奨するか?. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版. 2019. p.40-2.
10, 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, :総論. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版. 2019. p.64.
11, 北川一夫:脳卒中. 日内会誌. 2011;100(2):400-5.
12, 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, :治療法の選択. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版. 2019. p.54.

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