脳卒中は、脳血管が詰まったり破れたりして起こる疾患(病気)です。
治療方法は病態によって違いますが、急性期(症状が急に現れる、なり始めの時期)には薬物療法や手術を行い、回復期(機能の回復を図る時期)には再発予防のための薬物療法や日常生活を支障なく送れるようにリハビリテーション治療を行うのが一般的です。
この記事では、脳卒中の治療を急性期と回復期に分け、わかりやすく解説します。
脳卒中とは?
脳卒中とは、脳血管が詰まったり破れたりして、脳の一部が働かなくなり、身体の働きが悪くなる疾患(病気)です。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つに分けられ、それぞれあらわれる症状や治療方法が異なります1。
【脳卒中の種類】
疾患名 |
病態 |
脳梗塞 |
脳の血管が詰まり血液が行き渡らなくなっている |
脳出血 |
脳の血管が破れて脳内に出血する |
くも膜下出血 |
脳血管のこぶが破れて脳内に出血する |
(文献1を参考に作成)
脳の障害が生じた部位によって、さまざまな症状があらわれることが知られていますが、以下の記事にも解説がありますので、あわせてご覧ください。
疑ったら早急な対応を
脳卒中を疑う症状があらわれた場合には、救急車を呼ぶ必要があります。というのは、早めに気づき、適切な治療を受ければ、後遺症をほとんど残さずに社会復帰できる可能性が高まるためです1,2。
救急車が到着するまでは、脳への血流を保つため、身体を横にします。意識のない時には楽に呼吸でき、吐いたものが喉につまらない側臥位(腕を下にして横向きで寝た状態)にします1。いざという時に困らないよう、家族と事前に対応方法を確認しておきましょう。
脳卒中の急性期の治療
発症直後には薬や手術で脳の損傷が最小限になるような治療をし、また早期離床して身体機能を低下させず、回復を促すように努めます3。
脳梗塞の治療
脳梗塞の急性期には、血管の詰まりを解消する薬物療法や血管内治療が行われます。
薬物療法では、血栓を溶かしたり、血液を固まりにくくする抗血栓薬を点滴、もしくは内服します。血管内治療とは、詰まった血栓を特殊な器具で摘出する方法です。
基本的に発症から間もない場合であれば行えますが、脳出血などの危険性もあるので、受診が早くてもできないこともあります。これらの方法が行えない場合には、別の薬の点滴や内服を検討します1。
脳出血の治療
脳の血管が破れる脳出血を発症したとき、出血が少量であれば、血圧を下げる薬や脳のむくみを取る薬を使って治療します2。しかし、重症化が予想される場合や意識障害を伴う脳出血では、流れ出た血のかたまりを除去する手術が検討される場合があります1,2。手術の方法は病態によって違いますが、頭の骨を開いたり、内視鏡を用いたりする場合が多いようです1,2。
血管の異常(脳動静脈奇形など)が原因の場合には、その疾患に応じて治療します2。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血では、破裂したこぶの部分をふさぐ手術をします。破裂した場所や形、脳内出血のあるなしに応じて、開頭クリッピング術か血管内コイル塞栓(そくせん)術を選択します。
頭の骨をはずし、血管のこぶをクリップではさむのが開頭クリッピング術、こぶの中に金属のコイルを入れて全体をふさぐのが血管内コイル塞栓術です。血管内コイル塞栓術ではカテーテルを使うので、頭の骨を外す必要はありません2。脳動脈の壁にある三層の膜のうち内側のものが裂ける「脳動脈解離(のうどうみゃくかいり)」が原因の場合には、解離した血管ごと閉塞させる母血管閉塞(ぼけっかんへいそく)治療をする場合もあります2。
これらの手術では、終了後も合併症対策が必要です。脳梗塞を起こす場合には、水分や電解質の管理、一過性で血管が異常収縮を起こす血管攣縮(れんしゅく)の予防薬投与2、水頭症を起こす場合にはシャント手術(髄液を他の部位に流す)を行うこともあります2。
脳卒中回復期の治療
回復期には、リハビリテーション治療や再発予防のための薬物療法を行います。
リハビリテーション
リハビリテーションとは、障害が生じても、日常生活を支障なく送れるようにするための治療です。理学療法、作業療法、言語聴覚療法、装具療法などを行います3。
リハビリテーションで行われるのは、残された機能を強化し、生活環境を整えることです。たとえば、脳卒中で右手が麻痺した場合、発症前と同じ状態に戻らなくても、左手などの使える機能を強化し、生活の質の向上を図ります。右手に力が入らなくても使える物品を揃えたり、にぎりやすい蛇口やドアノブに替えたり、環境を整えます4。
薬物療法
再発予防のために生活習慣病治療薬が使用されます。また、状況に応じて、生活指導やその他の薬を使う治療も行われます。
高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療薬
脳卒中は再発しやすい病気で、再発率は発症後 1 年で12.8%、5 年で35.3%、10年で 51.3%、というデータがあります5。
脳卒中を起こしやすい要因(危険因子)のうち、最も大きいのが加齢と高血圧です。その他の危険因子には、糖尿病や脂質異常症、喫煙、飲酒、肥満などがあります。コントロールできる危険因子を減らすために疾患の治療を継続し、喫煙や飲酒、肥満がある場合には、生活習慣の改善指導が行われる場合もあります1。
脳梗塞では血を固まりにくくする薬
血栓予防のために、血を固まりにくくする薬を使います。薬の種類や量は、脳梗塞の原因が不整脈かどうかや、出血リスク、年齢、体重などを検討して決まります2。
必要に応じて、鎮痛薬・抗不安薬・抗てんかん薬
脳卒中後遺症として、痛みや気分の落ち込み、けいれん発作が起こる場合があります。必要に応じて、鎮痛薬や抗不安薬、抗てんかん薬を使って、治療を行います1,2。
まとめ:脳卒中は早期に治療を開始すると、後遺症が残らない可能性も高まる!
脳卒中の治療を急性期と回復期に分けて、解説しました。
脳卒中は、脳血管が詰まったり破れたりして起こる疾患(病気)です。治療は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血という疾患や発症から経過した時間で異なります。急性期には薬物療法や手術、回復期にはリハビリテーションや薬物療法が行われます。
脳卒中を疑ったら医療機関の受診を検討しましょう。発症してしまうと後遺症を残すことが多いので、予防が大切です。普段から生活習慣に注意し、危険因子を減らしましょう。