「自分の血圧って高いのかな?」「どのくらいの血圧だと気をつける必要があるのだろうか?」など、血圧について気になっている方もいるのではないでしょうか。高血圧はさまざまな病気の原因となるため、自分の血圧値からリスクを知り、適切な時期に治療を開始することが大切です。
この記事では、高血圧の基準値や年齢、病気ごとの降圧目標、受診の目安となる血圧の値について解説しています。
一般的な高血圧の基準値
血圧には、診察室血圧と家庭血圧という2つの基準があります。
診察室血圧は病院などの診察室で測定する血圧、家庭血圧は自宅で測定する血圧のことです。診察室では緊張のしやすさから、測定値が高めになることが知られています。そのため、診察室血圧と家庭血圧の間の診断に差がある場合は、家庭血圧の値が優先されます。
高血圧と診断される基準値は、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上です。
血圧はレベルに応じて6段階に分けられ、治療の必要がない「正常血圧」の定義は、診察室血圧で120/80mmHg未満です1。血圧分類と、それぞれの血圧値について表で示しますので、参考にしてみてください。
診察室血圧の基準
血圧分類 |
収縮期血圧(mmHg) |
拡張期血圧(mmHg) |
正常血圧 |
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正常高値血圧 |
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高値血圧 |
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1度高血圧 |
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2度高血圧 |
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3度高血圧 |
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(文献1を参考に作成)
家庭血圧の基準値
血圧分類 |
収縮期血圧(mmHg) |
拡張期血圧(mmHg) |
正常血圧 |
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正常高値血圧 |
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高値血圧 |
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1度高血圧 |
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2度高血圧 |
145〜159 |
90〜99 |
3度高血圧 |
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(文献1を参考に作成)
年齢や病気によって異なる血圧の目標値
血圧の目標値は年齢や合併症の有無によって個別に設定されます。それぞれの状態に応じた目標値を表にしましたので、血圧管理の指標にしてみてください。
降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
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<130/80 |
<125/75 |
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<140/90 |
<135/85 |
※1:両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし
※2:両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価
(文献2を参考に作成)
75歳未満の成人
75歳未満の成人の降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
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75歳未満の成人 |
<130/80 |
<125/75 |
(文献2を参考に作成)
75歳未満で危険因子がない成人の場合は、脳心血管病リスク低減の観点から、降圧目標が130/80mmHgに設定されています2。
75歳以上の方
75歳以上の方の降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
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75歳以上の方 |
<140/90 |
<135/85 |
(文献2を参考に作成)
75歳以上の方は、収縮期血圧140mmHg未満の降圧目標が推奨されています。130mmHg未満へ血圧を下げると、腎障害などのリスクが高まるため、過度な血圧低下には注意しましょう2。
合併症を有している場合も多く、130mmHgが目標値となる方もいらっしゃるでしょう。その場合は、まずは140mmHg未満を達成し、個別に副作用や臓器への影響などを見ながら130mmHg未満を目指していきます3。
脳血管障害がある方
脳血管障害がある方の降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
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脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし) |
<130/80 |
<125/75 |
脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価) |
<140/90 |
<135/85 |
(文献2を参考に作成)
高血圧は脳血管障害の最大の危険因子であるため、慢性期治療においては血圧のコントロールが重要です。
血管の狭窄があるかどうかで、降圧目標値が異なります。狭窄があり血流が阻害されている場合は、血圧が低くなると再発リスクが上がり、血流阻害のない場合では血圧高値で再発リスクが高くなる傾向にあります4。
冠動脈疾患がある方
冠動脈疾患がある方の降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
|
冠動脈疾患がある方 |
<130/80 |
<125/75 |
(文献2を参考に作成)
心臓は高血圧による影響を受けやすい臓器です。心不全や不整脈などが引き起こされ、突然死に至ることもあります。血圧を持続的に下げることが、心疾患の発症や死亡を減少させることにつながります4。
慢性腎臓病の方
慢性腎臓病の方の降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
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慢性腎臓病の方(たんぱく尿陽性) |
<130/80 |
<125/75 |
慢性腎臓病の方(たんぱく尿陰性) |
<140/90 |
<135/85 |
(文献2を参考に作成)
腎臓から出されるホルモンや、電解質のバランスの変化が高血圧の原因になります。また、高血圧が腎障害を引き起こすなど、腎臓と高血圧は密接に関わっています。
たんぱく尿が陽性の方は、陰性の方と比べて腎機能障害が進行しているため、より厳密な降圧が必要です。脳心血管病の予防、腎機能低下の進行を防ぐため、しっかりと血圧コントロールを行います4。
糖尿病の方
◎糖尿病の方の降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
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糖尿病の方 |
<130/80 |
<125/75 |
(文献2を参考に作成)
糖尿病と高血圧は、小さな血管から大きな血管まで障害する危険因子です。そのため、両者を合併していると脳血管障害、冠動脈疾患の発症率が大きく増加します。血圧コントロールに加え、血糖値管理も必要です5。
抗血栓薬を服用中の方
◎抗血栓薬を服用中の方の降圧目標値
診察室血圧(mmHg) |
家庭血圧(mmHg) |
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抗血栓薬を服用中の方 |
<130/80 |
<125/75 |
(文献2を参考に作成)
高血圧は、抗血栓薬を飲んでいる方の頭蓋内出血の危険因子となるため、厳格に血圧をコントロールする必要があります。
抗血栓薬とは、血の塊が血管内にできるのを予防するために飲む、いわゆる「血液サラサラ薬」です。これまでの研究から、130/80mmHg未満を降圧目標値とすることで、抗血小板薬服用中の高血圧の方における頭蓋内出血を予防できる可能性が示されています2。
血圧がどのくらいになったら病院に行くべき?
すぐに医療機関を受診することが推奨される血圧の目安は、160/100mmHg以上です6。
収縮期血圧140〜159mmHgまたは拡張期血圧90〜99mmHgの方は、まずは生活習慣を改善する努力をおこない、数値が改善しなければ医療機関の受診を検討しましょう。
収縮期血圧130〜139mmHgまたは拡張期血圧80〜89mmHgの方は、肥満がある場合は生活習慣の改善を、肥満がない場合は特定保健指導の活用と生活習慣の見直しが推奨されます。
それ以下の血圧の場合は、現在の生活習慣を維持し、定期的な検診を受けるようにしましょう6。
血圧分類による受診の目安
血圧 |
肥満なし |
肥満あり |
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医療機関の受診が推奨されます |
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収縮期血圧:140〜159mmHg≧ |
生活習慣を改善したうえで、 |
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生活習慣の改善が推奨されます |
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今後も継続して健診受診を維持しましょう |
(文献6を参考に作成)
まとめ|血圧の基準を確認し、早めの対応をしよう
高血圧と判断される基準は、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上です。
年齢や合併症の有無によって目標とする血圧値は異なります。個々の状態に応じた適切な目標値を確認しましょう。
早急な受診が必要な血圧の値は、収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上です。それ以下であっても血圧が高めの方は、生活習慣の改善に努めつつ、それでも数値が改善しない場合は医療機関の受診を検討しましょう。高血圧を放置すると、脳卒中や心臓病のリスクが高まるため、基準値を確認し、早めの対応をしましょう。