脂質異常症の疑いがあるとわかったら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。しかし、どの診療科を受診すればよいのかわからずに、そのままにしてしまう方もいるのではないでしょうか?
本記事では受診すべき診療科や診察のステップ、そのまま放置した場合のリスクについて紹介します。
脂質異常症の原因や症状について
脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪が基準の範囲にない状態のことです。主に不適切な食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒などの生活習慣が原因で起こる疾患(病気)ですが、自覚症状は乏しいため、進行するとさまざまな合併症を引き起こします¹。
他にも糖尿病や甲状腺機能低下症などの基礎疾患から引き起こされる続発性脂質異常症があり、注意が必要です2。
脂質異常症のなかでも家族性高コレステロール血症では、アキレス腱の肥厚や肘・膝・手の指などにできる発疹(皮膚結節性黄色腫)などの症状が現れることもあります3。
脂質異常症の際に受診すべき診療科は?
脂質異常症の診療は、主に一般内科、循環器内科、内分泌代謝内科/糖尿病内科のいずれかを受診するのが良いでしょう。ご本人の状態や併存疾患によって最適な診療科が異なる場合があるため、すでに何かの疾患で通院している場合はかかりつけの医師に相談してみましょう。
初めて医療機関を選ぶ際は近くの内科系クリニックを受診し、総合病院や専門科のある病院を受診するための紹介状を受け取るとスムーズに受診できます。
一般内科
一般内科は生活習慣病全般を広く診る診療科で、血液検査や診察を通じて脂質異常症の状態を総合的に評価できます。
また、一般内科では高血圧症や糖尿病などの他の生活習慣病も同時にチェックできるため、全身の健康状態を包括的に管理することが可能です。
医師はご本人の生活習慣や食事内容を詳しく聞き取り、必要に応じて生活指導や薬物療法を行います。
症状が重度な場合や特殊な治療が必要な場合は、一般内科から循環器内科などの専門医への紹介を検討することもあります。脂質異常症の原因となる疾患のスクリーニングを含め適切な治療方針を立てることができるため、まずは一般内科を受診するようにしましょう。
循環器内科
動脈硬化や心臓病のリスクが高い方、あるいは一般内科での治療で十分な改善が見られない場合は循環器内科へ紹介されることがあります。
循環器内科では、脂質異常症による血管への影響を詳しく評価できます。
頸動脈エコーや心臓超音波検査などの専門的な検査を行い、動脈硬化の程度や心臓の状態を詳細に確認することで、より正確な病態の把握と、ご本人に適した治療方針の決定が可能となるでしょう。
脂質異常症に加えて高血圧症や不整脈などの心血管疾患を合併している場合は、様々な疾患を総合的に管理できる循環器内科であれば治療が進めやすくなります。
高血圧症や不整脈など心臓血管系に関する合併症予防に重点を置くのであれば循環器内科を受診しましょう。
内分泌代謝内科/糖尿病内科
内分泌代謝内科/糖尿病内科は、コレステロールや中性脂肪などの脂質代謝に関する問題をホルモンバランスや代謝機能の観点から総合的に診断・治療します。
特に甲状腺機能異常や糖尿病などの内分泌代謝/糖尿病疾患に起因する二次性の脂質異常症の場合、内分泌代謝内科や糖尿病内科であれば専門的な治療を受けることが可能です。
詳細な血液検査や画像検査を行い、脂質異常症の根本的な原因を特定し、適切な治療方針を立てることができるでしょう。
複数の代謝疾患を併せ持つ方であれば、内分泌代謝内科/糖尿病内科を受診しましょう。
脂質異常症で受診した後のステップ
脂質異常症で医療機関を受診した後のステップは以下の通りです。
1. 問診
2. 血液検査
3. 画像検査(必要に応じて)
4. 治療方針の決定
問診や血液検査は必ず行う検査ですが、超音波検査などの画像診断はコレステロール値や併発疾患などを考慮して行います。
治療の開始もすぐに薬物による治療を開始するのではなく、医師とご本人で話し合って決めていきます。
問診
脂質異常症の問診では、医師は年齢や性別、自覚症状、家族歴、合併症、既往歴、服薬歴、生活習慣(喫煙や飲酒など)、運動習慣、睡眠のような項目について詳しく確認します2。
特に食事内容で加工肉やマーガリンやショートニング、卵など、コレステロールや中性脂肪の数値を上げやすいものを食べる頻度、運動習慣、喫煙、飲酒などの生活習慣に関する質問が中心です。
家族歴も診断に必要な情報であり、両親や兄弟に脂質異常症や心臓病、動脈硬化による病気がないかを確認します。
現在服用している薬やサプリメントの情報、過去の病歴、職業(仕事の忙しさやストレス)などもできる限り医師に共有しましょう。
血液検査
脂質異常症の血液検査では、主に以下の項目を詳しく調べます1。
脂質の種類
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診断基準値
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LDLコレステロール
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140mg/dL以上
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HDLコレステロール
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40mg/dL未満
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トリグリセライド
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150mg/dL以上(空腹時採血)
175mg/dL以上(随時採血)
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Non-HDLコレステロール
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170mg/dL以上
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(文献1を参考に表を作成)
血液検査の結果から、動脈硬化のリスクを評価します。
また脂質異常症は他の疾患と関連することも多いため、肝機能検査、血糖値、HbA1c(糖尿病の指標)、甲状腺機能検査なども合わせて行われます。
画像検査
脂質異常症の診断では、血管や臓器の状態を確認するために、さまざまな画像検査が行われます。
・頸動脈エコー検査
・腹部CT検査
・アキレス腱X線撮影
最も一般的なのは首の血管(頸動脈)の内側の様子を超音波で観察し、動脈硬化の程度や血管壁の厚さを調べる頸動脈エコー検査で、動脈硬化の進行度の評価が可能です4。
必要に応じて心臓超音波検査(心エコー)も行われ、心臓の機能や状態を確認します。
さらに腹部CT検査で内臓脂肪量を測定し、内臓脂肪量が100cm²以上ならばメタボリックシンドロームの診断基準に当てはまります4。
また、家族性高コレステロール血症ではアキレス腱に特徴的な変化をきたすことがあるため、アキレス腱X線撮影を行います5。
これらの画像検査は、動脈硬化による血管の変化や、関連する臓器への影響を視覚的に評価できるため、より正しい治療方針の決定に役立つものです。
画像検査は、血液検査だけで判断できない場合や、治療方針を決めるのに詳細な情報を医師が把握するために行われます。
治療方針の決定
脂質異常症の治療方針は、検査結果と当事者の状態を総合的に評価して決定されます。
まず脂質異常症の管理目標値はリスク区分をもとに判定し、生活習慣の改善を基本とした治療を開始します6。
具体的に行われるのは、食事療法(脂質を控えめにする、野菜を多く摂るなど)や運動療法の指導です。
生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合や、すでに動脈硬化が進行している場合は薬物療法を検討し、治療開始後も継続的な経過観察を行います6。
脂質異常症を放置した場合
脂質異常症を放置すると、血管の内壁にコレステロールが徐々に蓄積し、動脈硬化が進行して血管が狭くなったり硬くなったりして、血液の流れが悪くなります。
その結果、危険な合併症として以下が挙げられます。
・狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患7
・脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患8
特に冠動脈の動脈硬化が進行すると、突然の胸痛や心臓発作のリスクが増加します。
中年期の総コレステロール値はアルツハイマー型認知症の発症と関連性があるという報告もあるため9、「ただの太り過ぎだから」と放置しないことが大切です。
これらの合併症は一度発症すると治療が困難で、生活の質を大きく低下させる可能性があるため、早期に対処しましょう。
まとめ
脂質異常症の疑いがある、もしくは診断された際には一般内科、循環器内科、内分泌代謝内科/糖尿病内科の受診をおすすめします。
いずれの診療科でも治療を受けることができるため、お近くの医療機関もしくはかかりつけの医師に相談しましょう。
診察を行うなかで専門の医療機関への受診が必要だと判断された際には、医師から紹介してもらうことができるため、スムーズに治療を進めることが可能です。