口内の衛生状態を保つことは、誰にとっても重要です。特に認知症のご本人の場合、口腔ケアへの意欲の低下、介助に対する拒否、そして、食行動の変化による口腔環境の悪化などもあり、口腔内にトラブルを抱えやすい傾向があります1。
口腔内の環境が悪い状態で放置されると、う蝕や歯周病などの口腔疾患のほか、その影響は脳・心臓血管疾患、糖尿病、肺炎など全身疾患に関係すると言われています2。
本記事では、認知症のご本人が歯磨きを嫌がる場合に無理なく行える方法をお伝えします。
安心感を与える歯磨きのポイント
認知症のご本人に安心して歯磨きを受けてもらうためには、いくつかの工夫が必要です。平易な言葉による声掛けやアイコンタクト、ゆっくりとした動作と丁寧な身体接触など、安心感を与える対応が求められます1。
以下のポイントを押さえることで、ストレスなくケアを進めやすくなります。
適切な歯ブラシを選びましょう
苦痛や不安を伴うものとならないよう、ご本人が快適に歯磨きを行える道具を使うとよいでしょう。例えば、口内を傷つけず、優しくケアができる柔らかくて小さな歯ブラシの使用を検討しましょう。
もし、歯ブラシを口に入れられない場合、歯磨きティッシュを使用して歯の汚れを取ります。その際に指を噛まれないように指サック等を用いるなど、注意してください。
事前に声掛けしましょう
いきなり歯ブラシを口に入れるのではなく、「これからお口をきれいにするね」といった平易な言葉による声掛けを行いましょう。何をするのか事前に伝えることで安心しやすくなります。
初めに奥歯から磨き、力を入れずに優しく行うことが大切です。強く磨くと痛みを感じさせてしまうので、細心の注意を払いましょう。
ご本人の表情を見守りながら進める
痛みや不快感を表情に出すことがあります。そのため、常にアイコンタクトをとり、表情を観察してください。認知症のご本人は集中力が続かないことが多いため、長時間のケアは避け、違和感があった場合はすぐに中断しましょう。
まとめ
認知症のご本人が歯磨きを嫌がる理由は、意欲の低下や不安、痛みなどさまざまです。無理強いせず、気持ちに寄り添って歯磨きを受け入れやすい環境を整えることを意識しましょう。