認知症のご本人をご家族が介護する際、行動・心理症状(BPSD)などにより身体的にも負担がかかるケースがありますが、適切な認知症のケアを実施することでご本人の心理的ストレスが軽減し、BPSDを改善できる可能性があると言われています1。
この記事では、認知症のケアの必要性や具体的な方法・ポイントについて解説します。
認知症ケアの必要性
認知機能の低下が進行すると抑うつ、興奮、妄想などの症状がみられる場合があります。
これをBPSDといい、生活環境の変化などの環境的要因や日常生活におけるストレスなど心理的要因の影響を受けてあらわれると考えられており2、環境調整や適切なケアによって改善が期待できるとされています1, 3。
認知症ケアにおいて大切なこと
認知症のご本人が尊厳を持って生活するために、以下のような接し方や支援を行いましょう。
- ・ご本人の気持ちや思いを理解し、寄り添うように接する4
・残存機能を活かし、できることは自分で行えるよう支援する4
・社会的交流を持ち続けられるよう配慮する5
・ご本人が意思決定をできるよう支援する6
認知症のケアにおけるユマニチュードの「4つの柱」とは
ユマニチュードという認知症ケアの手法があります7。下記のアプローチにより、ケアを受けるご本人に対して「あなたは大切な存在です」というメッセージを伝える手法です。以下の4つ柱があります。
①見る:ご本人と同じ高さで、正面の近くから優しいまなざしを向ける
②話す:安定した穏やかで心地よい声で、具体的にわかりやすく伝える
③触れる:優しく触れることで安心感を与える
④立つ:ご本人ができるだけ自力で立てる時間を増やすように支援する
こちらの記事で詳しく説明していますので、ご家族の方もぜひ参考にしてください。
認知症ケアの方法
認知症ケアで覚えておきたい方法と留意点をまとめました。
ご本人ができるだけ自立した日常生活を送れるよう、気持ちに寄り添いながらサポートを行いましょう。
方法 |
留意点 |
放っておくのではなく見守る |
危険がないよう注意を払う |
わかりやすい言葉で話す |
理解しやすい言葉で、ゆっくりと1つずつ説明する |
誤った言動を叱らない |
その人の自尊心を守るよう言葉かけに気をつける |
スキンシップを頻繁にとる |
手を握るなど、温かい触れ合いを大切にする |
ご本人のペースに配慮する |
急かさず、ご本人のリズムに合わせる |
孤独にさせない |
こまめに声かけをする |
急に環境を変えない |
急激な変化を避け、少しずつ慣れるようにする |
(文献8を参考に表を作成)
認知症ケアを行う際のポイント
認知症ケアを行うポイントとして、ご本人の身体的・心理的特徴に応じたかかわり方をご家族の方も知っておくとよいでしょう。
ケアの場面では、認知機能低下による記憶障害や理解、判断力の低下などの症状がみられ、ご本人は加齢によって耳が遠くなったり、身体が思うように動かなかったりすることがあり、もどかしさや不安を感じている可能性があります。
原因疾患やご本人の性格、周囲の環境などによっても症状のあらわれ方は異なりますが、ご本人がどのような状態なのか、どのように感じているのかをくみ取りながらケアを行うことが大切です。
身体的な特徴に応じたかかわり方
ご本人が認識しやすい位置に立つ、安定した姿勢を保てるよう支援する、聞き取りやすい声量で話しかけるなど、ご本人の身体的な特徴を理解し、負担を軽減しながら円滑なコミュニケーションを図りましょう8。
心理的特徴に応じたかかわり方
価値観や生活習慣を尊重する、適切な距離感を保ち目線の高さを合わせる、気持ちに寄り添い、ペースを合わせるなどご本人の心理的特徴に配慮し、尊重と共感の姿勢をもちましょう8。
認知症のご家族をケアする方が知っておきたいこと
ご家族が介護を行う場合、ご本人への対応の難しさや将来への不安、気の休まらない日々、社会活動の減少、家事の増加などが負担につながります9。
介護を行っているご家族の健康を損なうこともありますので、必要に応じて介護保険制度の利用や専門職の方に相談することを検討しましょう。
詳しくは以下の記事で解説しています。
まとめ:当事者の尊厳を守り、できることを活かしながらサポートしましょう
認知症のケアでは、ご本人の気持ちに寄り添い、残存機能を活かして自立を支援することが重要です。ユマニチュードの「見る・話す・触れる・立つ」の4つの柱を活用するなど、安心感と尊厳を保ちながら身体的・心理的特徴に配慮したコミュニケーションをとりましょう。また、負担軽減のために制度や専門職への相談も検討し、不安や悩みを1人で抱え込まないようにしてください。