認知症ケア技法「ユマニチュード」とは?意味や4つの柱を解説
ユマニチュードとは、認知症介護で注目されるケア技法です。 認知症のケアは、「いつまで続くのか?」と見えないゴールに不安になり、介護者の大きな負担となる場合があります。
ユマニチュードの考えを実践することで、「介護する人」と「介護される人」が良い関係を築け、ケアを受け入れてもらいやすくなることが期待できます。
本記事ではユマニチュードの意味と、その4つの柱について解説します。これから介護にあたる方や、現在介護で悩まれている方もぜひ参考にしてください。
ユマニチュードとは?
ユマニチュードとは、介護や看護の領域で注目されている認知症ケアの技法です。フランスのイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティという2人の体育学専門家によって開発されました。
ユマニチュードには、フランス語の造語で「人間らしさを取り戻す」という意味があります1。
認知症により認知機能が低下していることで、介護する側が優しく接していても、介護される側にマイナスな気持ちとして伝わってしまい、介護を拒否される場合があります。
ユマニチュードは、「あなたのことを大切に思っています」という気持ちを、相手が理解できる方法で伝えるためのケア・コミュニケーションの技法です。
ユマニチュードを意識することで、双方の良好な関係を築き、ケアをする人とケアを受ける人が共に良い時間を過ごすことができます。
認知症ケア「ユマニチュード4つの柱」
ユマニチュードは、相手に「大切に思っている」気持ちを伝えるポイントとして4つの柱をあげています。
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・見る
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・話す
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・触れる
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・立つ
それぞれ詳しく説明していきましょう。
見る
相手に視線を向け、相手からも見てもらうことで、伝わるメッセージがあります。同じ目線の高さから見つめることで、相手と平等な存在であることを伝えます。
さらに、離れた場所からではなく、近くで見つめることで届けられるのが、親密さや優しさです。
見る際に注意してほしいのは、相手を上から見下ろすことです。特に、ベッドで横になっている人と話す時に多く見られます。
見下ろすことは、相手のことを支配しようとしていると捉えられてしまうことや、緊張感を与えてしまう場合があります。
相手を見る時は、見下ろすのではなく、上体を起こし正面から見つめると信頼感や正直さを伝えることが可能です。
話す
話しかける時のポイントは、声のトーンは低く・優しく・ゆっくりしたスピードで話しかけることです。使う語彙も前向きな言葉を選びます。
介護を行う場に、言葉をあふれさせることも大切なケアの要素です。相手からの返事がない時には、介護をする人もだんだん無口になってしまいます。
そんな時には「オートフィードバック」という技術がおすすめです。オートフィードバックとは、自分が行っているケア動きを実況中継する方法です。
相手からの反応がないからと、話しかけないことを選択すると、相手は存在をないものにされた感覚に陥ります。オートフィードバックを用いることで、介護の場に言葉をあふれさせることが可能となります。
相手の反応を観察しながら話しかけることで、相手を大切に思っている気持ちが届けられます。
触れる
相手に触れることで、相手に大切にしている思いを届けられます。ケアをする際は、身体に触れる機会が多いです。ケアの最中に、身体をつかんでしまうことはよくあります。
介護をしている側は、相手をつかんでいる事に気がつかない場合が多いです。無意識でやったことだとしても、相手には自由を奪われているというメッセージが届いてしまいます。
大切にしている思いを伝えるためにも、触れる際は「下から支える」「ゆっくりと優しく触れる」「手のひら全体など広い面積で触れる」「掴まない」ことを意識しましょう。
立つ
立つことは、身体にさまざまな影響を与え、その人が自分らしい生活を続けられるポイントにもなります。
ユマニチュードを開発したイヴ・ジネストは、立つ時間を1日20分作ると、寝たきりの予防につながると提唱しています。1回で20分立ち続ける必要はありません。
運動の時間を改めて作る必要はありません。普段の生活の中で合計20分立つ時間は作れます。
食事の席・お手洗いなど、普段利用する場所へ歩いて移動する、歯みがきをする時に立って行うなど、普段の動作の中に立つ時間を組み込むことで立つ時間を作ることも、介護の大切な要素です。
認知症のご本人との接し方のポイントについては、こちらの記事もご参照ください。
ユマニチュードを取り入れて大切にしている気持ちを伝えよう!
本記事では、ユマニチュードについて、実践する上での目標と4つの柱について解説しました。認知症ケアのユマニチュードでおさえるポイントは、以下の4つです。
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・見る
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・話す
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・触れる
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・立つ
この4つの柱を意識して対応することで、介護される側へ「あなたを大切に思っている」気持ちを伝える事が可能になります。ユマニチュードは、ケアの際のコミュニケーションを円滑にすることも期待できるでしょう。
先が見えず不安になる認知症ケアですが、お互いにとって良好な関係を築けるよう、ユマニチュードを取り入れてみましょう。