認知症ポータルサイト

アルツハイマー型認知症の中核症状と周辺症状|初期・中期・後期の進行段階ごとの変化

アルツハイマー型認知症の中核症状と周辺症状|初期・中期・後期の進行段階ごとの変化

「歳のせい」と見過ごしがちなもの忘れや、「最近やけに怒りっぽい」といった言動の変化。もしかすると、これらの原因はアルツハイマー病によるものかもしれません。

認知症の原因として最も多いアルツハイマー病は、ゆっくり進行する脳の疾患です。「最近頑固になった」「人が変わったようだ」といった誤解を招く変化も、病気が原因であるケースが少なくありません。

アルツハイマー型認知症にはどのような症状があるのか、当事者にはどのような変化が起こるのか。長年認知症の診断・治療に携わってきた岩田淳先生(東京都健康長寿医療センター)が詳しく解説します。

アルツハイマー型認知症の主な症状から、初期・中期・後期における症状の変化まで、正しく理解し、周囲の誤解の解消や、適切な治療・サポートへとつなげていきましょう。

アルツハイマー型認知症の兆候と初期症状

アルツハイマー病は進行性の脳の疾患です。

認知症を発症する前から脳に変化が生じ、進行に伴い記憶障害などの症状が現れます。

アルツハイマー型認知症の初期では、「話したことを忘れる」「物をどこに置いたか忘れる」といったもの忘れや、「約束の時間に遅れる」「今日が何日か忘れる」といった症状がみられます。

アルツハイマー型認知症の初期症状

  • 約束したことを忘れる

  • 話したことを忘れて同じ話を繰り返す

  • 物をどこに置いたか思い出せなくなる

  • 順序だてて物事を進められなくなる

  • 買い物や金銭の管理などに支障をきたす

  • 日にちや時間がわからなくなる

  • 約束に合わせて準備をしたり、時間通りに待ち合わせることが難しくなったりする​​

  • 財布や預金通帳など、自分が置き場所を忘れてしまったにもかかわらず、家族や身近な人に盗られたと思い込んでしまう​​

  • 自分の能力や認知機能の低下を相手に悟らせまいとしてその場しのぎの受け答えをする(取り繕い)

初期の段階では自立して生活できている場合も多く、「年のせい」「ちょっとしたミス」と見過ごされてしまい、アルツハイマー病の発見が遅れることもあります。

  • 岩田先生

    極端な話、老化による認知機能低下はないかも、と思って頂いても良いかもしれません。以前に比べて能力が落ちてきた、それも明らかに日常生活で問題事を生み出しているという事を自分で、もしくはご家族が感じ取ったならばそれは受診に結びつけるべきだと考えます。特に進行した認知症の方はご自身の症状を否定することがありますので、この段階での受診はとても困難を極めます。変化を感じたら受診を心がけましょう。

アルツハイマー型認知症の中核症状

アルツハイマー病・アルツハイマー型認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)の主要症状をまとめた図

アルツハイマー型認知症の中核症状と周辺症状(文献1,2,3,4を参考に編集部作成)

アルツハイマー型認知症をはじめ認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の大きく2つに分けられます。

中核症状とは、脳の神経細胞の機能低下や神経細胞の減少が直接の原因となり生じる症状です。

すべてのアルツハイマー病の人で、病期(進行段階)を通じて症状が現れます。

ここではアルツハイマー型認知症における中核症状の具体例について詳しくみていきましょう。

記憶障害(近時記憶障害、体験そのものの忘却)

記憶障害はアルツハイマー型認知症で最も代表的な症状の1つで、かなり早い段階から症状がみられます。

新しい出来事をすぐに忘れ、ヒントを与えられても思い出せなくなるのが特徴です。記憶の種類や保持期間によって、障害が起きる時期が異なります。

初期段階では、数分から数日前の記憶(近時記憶)や、食事をしたことや物の置き場所など日々の出来事に関する記憶(エピソード記憶)から障害が現れます。

一方で、数秒前の記憶(即時記憶)や昔の記憶(遠隔記憶)、家事や自転車の乗り方など体で覚えた技術や習慣(手続き記憶)は比較的保たれやすい傾向にあります。

しかし、症状が進行すると、言葉の意味や概念などに関する記憶(意味記憶)に障害が現れ、即時記憶や遠隔記憶など、それまで保たれていた記憶も次第に失われていきます。

進行段階

症状

軽度(初期)

物をおいた場所を忘れる、出来事自体を忘れる(エピソード記憶)

約束を忘れたり、何度も同じことを話す(近時記憶の障害)

中等度(中期)

日本の首都が「東京」であることなど一般的知識を忘れる(意味記憶の障害)

番号を聞いてすぐ電話したり、復唱するのが困難になる(即時記憶の障害)

学生時代の出来事を忘れてしまう(遠隔記憶の障害)

重度(後期)

長年体得した技術や習慣にも少しずつ支障がでる(手続き記憶の障害)

記憶障害の症状と変化(文献1,2,3,4を参考に作成)

見当識障害(時間・場所・人の認識低下)

見当識障害もアルツハイマー型認知症の特徴で、初期から現れることが多い症状のひとつです。

「見当識」とは、「今がいつか(時間・年月日・季節)」「ここがどこか(場所)」「目の前の人が誰か(人物)」など、自分が置かれている状況を把握する能力のことです。

見当識に障害がでることで、約束の時間を守れなくなったり、身近な場所でも迷ってしまう、家族が認識できなくなるといったことがみられます。

見当識障害では、時間→場所→人物の順番に認識ができなくなることが多いとされています。

進行段階

症状

軽度(初期)

日付や曜日を正答できなくなる(時間の見当識障害)

中等度(中期)

自宅を含め自分のいる場所を認識できなくなる(場所の見当識障害

)

重度(後期)

家族のこともわからなくなる(人物の見当識障害)

見当識障害の症状と変化(文献1,2,3,4を参考に作成)

遂行機能障害(実行機能障害)

「遂行機能(実行機能)」とは、目標を設定して計画を立て、実際に行動して効果的に成し遂げるための一連の機能です。

「遂行機能」というと難しくみえますが、実は「買い物」という日常動作の中にも組み込まれています。「買い物リストを作成し、効率よく店を回り、必要なものを買い揃える」といった一連の行動は、すべて遂行機能が働くことで成り立っているのです。

遂行機能障害は、アルツハイマー病の初期からみられ、仕事や家事などの日常生活に支障がでます。

初期の頃は作業が遅くなる程度ですが、次第に買い物や料理といった段取りが必要な行動に支障が生じ、進行するとセルフケア(日常生活の自己管理)が困難になります。

食事の準備ができない、リモコンなどの電化製品の使い方がわからないなど、手順通りにできないことが増えると、日常生活を1人で送るのが難しくなってしまうこともあります。

進行段階

症状

軽度(初期)

周囲からみて作業が遅くなったと感じる程度に、段取り、要領が悪くなる

中等度(中期)

料理などの家事、仕事、ATMの操作を含めたお金の扱いなどがうまくいかなくなる(手段的ADLの困難 ※1)

重度(後期)

セルフケアが困難になる

遂行機能障害の症状と変化(文献1,2,3,4,5を参考に作成)

視空間認知障害(視空間機能障害)

私たちは目で見た情報を脳の中で分析して方向、距離、位置などを把握します。

この機能が障害され、位置関係や距離感がつかめなくなった状態を「視空間認知障害(視空間機能障害)」と呼びます。

アルツハイマー型認知症では、複数の物の位置関係や大きさの比較ができなくなり、図形の模写ができなくなります。進行すると、外出先からの帰宅ができなくなったり、住み慣れた近所や自宅内でも迷うようになります。

進行段階

症状

軽度(初期)

位置関係が把握困難になり、図形の描写などがうまくいかない

中等度(中期)

外出先で帰宅困難になる

重度(後期)

近所や家でも迷う

視空間認知障害の症状と変化(文献1,2,3,4を参考に作成)

失行

それまで当たり前にできていたことが、1人でできなくなることを「失行」といいます。

初期では、物の形や位置関係の機能障害により図形の模写や積み木の組み立てができなくなります(構成障害)。

進行すると、物の役割はわかるのに正しく使えなくなります(観念失行)。

また、無意識ではできる動作が、身振りで再現できなくなったり、意識すると途端にできなくなったりします(観念運動失行)。

進行段階

症状

軽度(初期)

図形の模写、積み木やパズルができなくなる(構成障害)

中等度(中期)

・服が着られなくなる(着衣失行)

・ハサミや歯ブラシなどの道具が何をするものかは理解できるが、正しく使えなくなる(観念失行)

・「さようならのバイバイの真似をして」「歯磨きを身振りで表現して」のように指示をされるとできなくなる。また、真似もできない。(観念運動失行)

失行の症状と変化(文献1,2,3,4,6を参考に編集部作成)

言語障害・失語

アルツハイマー型認知症では、言葉に関する障害もみられます。

例えば、何かは理解しているのに名前が出てこなかったり(喚語困難、語想起障害)、時計をメガネと言い間違えたりする(錯語)ようになります。

これらの症状は一般の人にもよくみられますが、認知症が原因の場合、頻度が多かったり、指摘されるまで間違えたことに気づかなかったりします。

また、音として聞こえていても言葉として意味を理解できなかったり、使用できる単語が減ってしまうことで、自分の考えを表現・伝えることが難しくなります。

言語障害が進むと言葉によるコミュニケーションがうまくいかず、社会生活や介護に支障をきたすようになります。

一方で、言葉の意味を理解できていなかったり、話が噛み合わなかったりするものの、相手の言葉を復唱することや流暢に話すことは中等度でもできる傾向があります。

進行段階

症状

軽度(初期)

適切な言葉がなかなか出てこなくなり、「あれ」「これ」などの指示語が増える

中等度(中期)

自分から言葉を発することが減少し、言い間違いもみられる

重度(後期)

相手の言葉をオウム返しに言う「メガネ、ネネネネ」のように言葉の終わりを反復する、などの症状がみられる

言語障害・失語の症状と変化(文献1,2,3,4を参考に編集部作成)

振り返り現象・取り繕い反応

初期の頃から、もの忘れや理解ができないことをごまかそうとする「取り繕い反応」や、回答内容に自信が持てないことから周りの人に確認しようとする「振り返り現象」もみられます。

アルツハイマー型認知症の場合、病気の自覚が無いことが多い一方、人格の変化が生じることはまれとされています。

進行段階

症状

軽度(初期)

日付を聞かれて「この歳になると日にちは関係なくなる」、最近のニュースについて聞かれて「ニュースは見ない、興味がない」とわからない、と返答する。

振り返り現象・取り繕い反応の症状(文献1,2,3,4を参考に編集部作成)

理解力・判断力の低下

他にも、認知症の中核症状として、理解力・判断力の低下も特徴的です。

当事者と接する際には、物事を理解しづらい状況にあることを理解し、声掛けやサポートのしかたを工夫する必要があります。

特徴

具体例

自分が置かれている状況に応じて適切に行動できない

真夏にセーターを着る、寒くても半袖のままなど、気候にあった服装ができなくなる

理解する・考えるスピードが遅くなる

一度に2つ以上のことを言われたり、早口で言われると理解できなくなる

目に見えないものや仕組みを理解できない

自動販売機や自動改札機、銀行のATMの使い方がわからなくなる

抽象的な表現を理解できなくなる

「暖かい格好をしてね」と言われても分からないが「セーターとコートを着てね」と言われれば理解できる

認知症による理解力・判断力の低下(文献3を参考に編集部作成)

アルツハイマー型認知症の周辺症状(BPSD、行動・心理症状)

中核症状に伴って現れる症状を「周辺症状」といいます。

アルツハイマー型認知症では、気分の落ち込み(抑うつ)や意欲の低下、不安、妄想、ひとり歩きなど、様々な症状がみられます。

落ち込んだり不安になったりといった精神的な症状のほか、ひとり歩きや暴言・暴力といった行動に現れる症状があることから、これらの症状は「行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」ともいいます。

アルツハイマー型認知症の周辺症状の特徴

  • 症状の有無や度合いには個人差がある

  • 本人の性格や習慣、身の回りの環境や人間関係などに影響を受ける

  • 症状の現れ方は一定ではなく、時間帯や日によって異なったり、接する人によっても変わる

ここからは、アルツハイマー型認知症における周辺症状について具体的にみていきましょう。

  • 岩田先生

    BPSDは認知症そのものの症状ではなく、ご本人の認知機能低下とそれに伴う不安・不快・体調不良などと環境や関わり方が影響し合って現れる「二次的な」症状です。中核症状と違い、原因を取り除いたり関わり方を工夫することで、軽くなったり消えたりします。「仕方がない」と諦める必要はありません。お困りの際には、何故その症状が生じているのかの原因を考え、患者さんへの関わり方をよく見直してみましょう。

意欲の低下・アパシー

意欲や感情の低下、無気力・無関心(アパシー)は、アルツハイマー病の初期からみられる精神症状です。

アルツハイマー病当事者の49%にみられる症状で、自発性の低下や無関心により日常生活に支障がでます。

意欲低下・アパシーの例

  • 積極的に参加していた老人会の役職を退いてしまう

  • 趣味が少しずつ減っていく

  • 社交的であったのに外出しなくなる

  • 身の回りのことに無頓着になる

アパシーは脳の変化によって生じる疾患特有の症状ですが、孤立感や周囲からの叱責といった環境要因でさらに悪化しやすいとも言われています。

  • 岩田先生

    認知症の意欲低下・アパシーは見過ごされがちですが、放置すると心身を使わなくなり、筋力低下や寝たきり、認知機能のさらなる低下、社会的孤立を招く悪循環に陥ります。周囲は、本人が好きだったことや得意なことを入り口に、最初の一歩を手伝いながら無理なく誘い、できたことを具体的にほめて役割と成功体験を持ってもらいましょう。日光を浴び生活リズムを整えることも大切です。

抑うつ・不安・焦燥

うつ症状や不安もアルツハイマー病でよくみられる症状のひとつです。認知機能の低下によりできないことが増え、自信を喪失することで生じやすい症状です。

若年発病の場合は、就労中の人も多く、仕事上のミスが目立ってくるのを自覚したり、職場の人間関係がうまくいかなくなったりすることで、抑うつ状態を起こすことがあります。

ときに、抗うつ薬による本格的な治療が必要なほどの抑うつ状態がみられることがあります。

不安・焦燥の例

  • 夕方〜夜間にかけて焦燥感がまして落ち着きがなくなることがある(夕暮れ症候群)

  • 不安から今後の予定など、同じことを何度も繰り返し尋ねる

  • 取り残される不安から、家族や介護者の後をついて歩く

物盗られ妄想などの妄想・誤認

「物盗られ妄想」などの妄想や誤認は、アルツハイマー病の初期からみられ、頻度が高い精神症状です。

妄想や思い込みの症状では、場所や時間を誤認することもあります。症状が高じると、介護者を責めたり、知らぬ間にいなくなっていたり、介護者の負担増につながりやすい症状です。

妄想・誤認の例

  • 誰かに財布を盗まれたという、親戚や近所の人に「うちの嫁がお金を盗った」と訴える(物盗られ妄想)

  • パートナーが浮気・不倫をしていると思い込み相手を責め立てる(嫉妬妄想)

  • 配偶者や家族、友人などの親しい人が、他人と入れ替わったと思い込む、本物か自信が持てなくなる(カプグラ症候群)

  • 自宅にいるにもかかわらず家に帰りたいと言う

  • テレビの映像を現実の出来事と思い込む、鏡に映った自分に話しかける(鏡現象)

アルツハイマー型認知症では頻度は多くないものの、幻覚や幻視が見られることもあります。

興奮・暴言・拒絶

アルツハイマー型認知症では、当事者が感じる制約や介護者とのやり取りに対するストレスなどから、興奮したり、反発したりといった症状もみられます。

時に、家族や介護者などに対する暴言や暴力につながることもあります。

暴言・拒絶の例

  • 拒絶:家族や介護者に対し、非協力的な振る舞いをしたり拒絶したりする

  • 暴言・暴力:大声で叫ぶ、罵る、叩く、押す、ひっかく、噛む、物を投げる、など

興奮・暴言・拒絶につながる原因

  • 言動を注意・否定したり、失敗を指摘したりしたとき

  • 行動を急かされた、命令された、十分な説明がされていないと感じたとき

その他の症状(ひとり歩き、性的行動、不眠)

アルツハイマー型認知症が中等度以上になると、ひとり歩きや落ち着きの無さ、繰り返し行動がみられます。

症状

特徴

ひとり歩き・道迷い

一見目的無く歩き回っているようだが、「家に帰る」「仕事にいく」「誰かを探している」などの目的があって行動している。そのまま道迷いにつながるケースもある。

性的行動

介護者の身体を触る、卑猥な発言をする、下半身を露出するなど。自己抑制が効かない、時間の逆行(若い頃に戻っている)、パートナーと勘違いしている、などが考えられる。

不眠

不眠が起こることがある。昼夜のリズムの逆転が背景にあることも多い。

アルツハイマー型認知症にみられる関連症状(文献1,2,9を参考に編集部作成)

周辺症状の性差について

周辺症状の一部の症状は、性別により頻度や重症度が高くなりやすいことがわかっています。

男性:アパシー(意欲低下・無関心)の重症度が高い

女性:うつ・精神病症状、異常行動の頻度、うつ、妄想、異常行動の重症度が高い

ただし、必ずその症状が出る・重症化するとは限りません。介護・ケアの参考程度に把握しておくとよいでしょう。

アルツハイマー病のステージ別の症状の変化

アルツハイマー病によって認知機能がどのぐらい低下し、どのような認知症の症状が現れるかは進行状況(脳の変化の程度など)に応じて異なります。

アルツハイマー病のステージと症状の特徴

アルツハイマー病は初期の頃は自立した生活が送れますが、徐々に単純な作業や身の回りのことができなくなります。

また、アルツハイマー型認知症と診断される前のMCI(軽度認知障害)の段階から、行動・心理症状が現れるという報告もあるため、ご自身や家族の不調を見逃さないことが重要です。

アルツハイマー型認知症の進行とステージごとの症状、日常生活における自立度の目安は以下の通りです。

ステージ

MCI(軽度認知障害)

軽度(初期)

中等度(中期)

重度(後期)

特徴

日常生活は自立しているものの、複雑な動作においては時間がかかったり効率が落ちたりといった影響が生じ始める段階です

記憶障害の他、家事や買い物などの日常生活に支障がで始めますが、食事やトイレといった基本的な動作は自立できる段階です

認知機能障害の進行により、基本的な日常生活動作においても障害が生じ、生活において介助を要するようになる段階です

認知機能および生活機能の障害が著しく進行し、食事やトイレなど基本的な動作において完全に介助に依存する状態となる段階です

日常生活自立度の目安

自立

自立〜自立困難(Ⅰ、Ⅱ)

要介護〜介護困難(Ⅲ、Ⅳ)

介護困難・施設入所(M)

中核症状

同じことを何度も尋ねる、財布や鍵の置き場所を忘れる、約束を忘れる

記憶障害(近時記憶・出来事記憶)、見当識障害(時間)、手段的ADLの困難

記憶障害(即時記憶・長期記憶・意味記憶)、見当識障害(場所・人)

記憶障害(記憶全般)、意思疎通が困難

周辺症状(BPSD)

意欲低下、不安、易怒性、興奮、共感の欠如など

うつ、不安、物盗られ妄想、アパシー、誤認、妄想など

易怒性、暴言・暴力、焦燥、興奮、拒絶、幻覚、せん妄、不眠、ひとり歩きなど

歩行能力の喪失、痙攣

アルツハイマー型認知症の進行とステージごとの自立度の目安(文献1,2,10,11を参考に編集部作成)

アルツハイマー病の進行と余命

アルツハイマー型認知症は、基本的には年単位でゆっくりと進行します。

アルツハイマー型認知症診断後の平均生存期間は4〜10年、20年間生存する場合もあり、ばらつきが大きいという報告があります。また、治療薬やケアで進行を遅らせることも期待できるため、初期の段階で余命・寿命を示すことはできません。

命に直接関わるのは、アルツハイマー病そのものよりも、進行した後に起こりやすくなる低栄養や脱水、誤嚥性肺炎などの合併症が原因とされています。

近年では、早期発見と治療、そして生活習慣の改善などにより、認知機能の低下を抑え、穏やかな生活を長く維持できるケースも増えています。

  • 岩田先生

    認知症と診断されると、寿命や余命が気になってしまうこともあるでしょう。この気持ちはとても自然なことです。しかし、私はそれと同じくらい、あるいはそれ以上に、毎日楽しく、充実して、ご家族と接しながら生き甲斐を持って生きた結果、寿命を迎えられるように、「これからどのように過ごしていくか」を大切にしていただきたいと思っています。

非定型アルツハイマー病の症状

アルツハイマー型認知症の最も代表的な症状は記憶障害(もの忘れ)ですが、一部では空間の認識が難しくなる、言葉が出にくくなるといった症状から始まる「非定型アルツハイマー病」と呼ばれるケースがあります。 

非定型アルツハイマー病は、高齢になってから発症した場合では全体の6%程度ですが、若くして発症した場合は約3分の1を占めるとされており、年齢によって現れやすい症状の傾向が異なることがわかっています。

分類

特徴

後部大脳皮質萎縮症

初期の記憶障害は比較的軽い。早期から視空間・視覚認知機能の障害が目立つケース(後頭側頭葉型)や、頭頂葉の萎縮によりゲルストマン症候群、バリント症候群、肢節運動失行、無視などが表れるケース(両頭頂葉型)がある。

ロゴペニック型失語症

早期から喚語困難や文の復唱障害がみられる。左側頭葉後部・下頭頂葉に萎縮が認められることが多い。

前頭葉型

早期から遂行機能障害やアパシー、常同行動、感情・行動のコントロール困難などがみられる。一方で、記憶・構成障害もみられ、前頭側頭型認知症とパターンが異なる。

非定型アルツハイマー病の例(文献1,2を参考に編集部作成)

  • 岩田先生

    アルツハイマー病は患者さんの数が多いため、「典型例」ではない症状の患者さんも数多くいらっしゃいます。臨床症状だけでは診断する事の出来ないアルツハイマー病がある事を知っていただき、それらの非典型例の経験が多い専門医療機関を受診することが重要です。

アルツハイマー型認知症の症状の対処法やケア

一見病気と思えない変化も含め、アルツハイマー型認知症の症状は多岐にわたります。

早期の治療や適切なケアはその後の経過を左右するため、気になる症状があればまずは医療機関を受診し、ご自身・ご家庭に合ったサポートを受けてください。

  • 岩田先生

    「認知症と診断されたらどうしよう」そう思うと、受診をためらってしまうお気持ちはとてもよく分かります。「診断がこわい、家族に知られたくない、これからの生活がどうなるのか不安」それは決して特別なことではなく、多くの方が抱く自然な気持ちです。

    けれども、受診をためらっている間にも時間は進みます。

    ここで知っておいていただきたいのは、「早く調べること」には、「こわさ」を上回るメリットがあるということです。

    まず、もの忘れの原因は認知症だけではありません。治療で改善する病気が隠れていることも少なくありません。調べてみたら「治せるものだった」というケースは実際にたくさんあります。「調べる=認知症の宣告」ではないのです。

    そして、たとえ認知症であっても、早く分かるほど打てる手は多くなります。早い段階なら、進行を穏やかにするための新規治療や生活の工夫を始められますし、ご本人の意思がはっきりしているうちに、これからの暮らしや大切なことをご家族と話し合っておくこともできます。早期発見は「悪い知らせを早く受け取ること」ではなく、「これからの時間を自分らしく過ごすための準備を早く始められること」なのです。

    受診のハードルが高いと感じる方は、いきなり「認知症の検査」と身構えず、健康診断の延長のような気持ちで、脳ドックや脳機能検査を受けてみるのも一つの入り口です。かかりつけの先生に「最近もの忘れが気になって」と相談するだけでも十分な第一歩ですし、お住まいの地域包括支援センターに、ご本人でもご家族でも気軽に相談できます。

    「気になったときが、調べどき」です。不安なままひとりで抱え込まず、まずは一歩、扉をたたいてみてください。

まとめ:アルツハイマー病の症状は進行とともに変化する。「もしかして」と思ったら早めの相談を

アルツハイマー型認知症は進行性の疾患ですが、ゆっくりと進行するため対策できることも多くあります。

「怒りっぽさ」などの変化も、病気が原因だと理解できれば対応や向き合い方も変わることでしょう。

早期発見と適切なケアによって、穏やかな時間を長く過ごせるケースは増えています。気になる兆候があれば一人で抱え込まず、ぜひ専門の相談窓口へ早めに相談してみましょう。

この記事の補足情報

参考文献

  1. 1.

    日本神経学会:認知症疾患診療ガイドライン2026. 医学書院. 2026.pp137-173,214-256

  2. 2.

    中島健二, 他:認知症ハンドブック第2版. 医学書院. 2022年.pp7,502-571

  3. 3.

    長寿科学振興財団:認知症の中核症状.健康長寿ネット.[https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/chukaku.html](最終閲覧日:2026年9月29日)

  4. 4.

    長寿科学振興財団:認知症の周辺症状.健康長寿ネット.[https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/shuhen.html](最終閲覧日:2026年9月29日)

  5. 5.

    日本老年医学会:ADLの評価法.[https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_03.html](最終閲覧日:2026年9月29日)

  6. 6.

    日本神経心理学会:失行:サヨナラなど身振りができない,自分の手なのにうまく動かせない,手は自在に動かせるけど道具は使えない.[http://www.neuropsychology.gr.jp/invit/s_shikko.html](最終閲覧日:2026年9月29日)

  7. 7.
  8. 8.

    福島貴子, 他:カプグラ症候群. 脳科学辞典.[https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%B0%E3%83%A9%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4](最終閲覧日:2026年9月29日)

  9. 9.

    杉山孝博:対応の難しい性的異常行動-若いころに戻っているだけ. 認知症の人と家族の会.[https://www.alzheimer.or.jp/?p=3407](最終閲覧日:2026年9月29日)

  10. 10.

    遠藤英俊:認知症の臨床評価について. 厚生労働省. [https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018zii-att/2r98520000018zsi.pdf](最終閲覧日:2026年9月29日)

  11. 11.

    長寿科学振興財団:認知症高齢者の日常生活自立度とは. 健康長寿ネット.[https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-hoken/ninchi-jiritsu.html](最終閲覧日:2026年9月29日)

  12. 12.

    Alzheimer's Association:日本におけるアルツハイマー病と認知症. [https://www.alz.org/jp/%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87-%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%84%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%BC-%E6%97%A5%E6%9C%AC.asp](最終閲覧日:2026年9月29日)

著者情報

  • PROFILE/ プロフィール

    岩田 淳

    東京都健康長寿医療センター 副院長 ■Profile 東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD) やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に当たる。特に早期段階でのAD、レビー小体病の診断が専門。2023年10月より現職。

おすすめの記事

  • アルツハイマー病を知る
  • 佐々木俊尚が考える、中高年世代のこれからの生き方
  • 漫画で知る、介護ケアの心得と軽度認知障害(MCI)。戦国ヘルパー〜もし武将がMCIになったら〜 「時空を超えても、この気持ちは変わらない。」
  • くるねこ大和先生の漫画『身辺雑記:オトーチャンと認知症』が一気に読めます!【会員限定】

テオワンとは?

脳と心の健康と向き合い、 自分らしく生き続けるための羅針盤に。

テオワンは、 脳と心の健康をサポートするサービスやコンテンツを 1 つに繋ぐプラットフォームです。

テオワン IDで出来ること >