ハリー杉山|父の認知症介護で限界を経験|地獄の日々を脱した方法とは?

人工呼吸器・胃ろうなど「延命治療をしない」選択|看取りの後悔のない決断

認知症と向き合うお父様との深い絆はずっと変わらなかった
- テヲトル

当時の様子を教えてください。
- ハリー杉山さん

2022年3月のはじめ、18時頃に施設から「ハリーさん、来たほうがよいです」と連絡がありました。
母と一緒に駆けつけると、父が呼吸困難の状態でベッドに横になっていました。入院が必要と言われ、救急車を呼びました。
でも父に熱があり、受け入れてくれる病院がありませんでした。 - テヲトル

コロナ禍の頃は、熱があると受け入れてくれる病院を探すのも大変でしたね。
- ハリー杉山さん

救急車内で待機し、備え付けられていた酸素を吸入したんです。血中酸素が下がってくると、車内にアラーム音が鳴り響いて・・・この世の終わりみたいな雰囲気でした。
救急隊員さんから「危ない状況です。亡くなってしまう可能性もゼロではありません」と言われました。
人工呼吸器を付けるかどうか、決断を迫られたんです。
- テヲトル

お父様の意思を確認するのが難しい中で、命に関わる選択をするのは大変だったと思います。
- ハリー杉山さん

人工呼吸器は一度付けると、外すのが大変だと聞きます。83歳でパーキンソン病を患っていた父は、外すときに体力を消耗してしまうのではないかと思ったんです。
これまでの父の考えなどを振り返り、人工呼吸器は付けないことにしました。
僕ほど父のことを理解している人間はいないという確信もあったから、後悔は一切ありませんでした。
- テヲトル

お父様を深く理解していたからこそ、その場で決断ができたのですね。
- ハリー杉山さん

それでも、父が元気なときから、いざというときにどうしたいかを聞いておいたらよかったです。容体が急変する中で、大きな決断を迫られるプレッシャーは計り知れないものでした。
ようやく受け入れてくれる病院が見つかり、しばらく入院することになりました。
ところが今度は食事を口から食べるのが難しくなり、胃ろうを作る必要があると言われました・・・。
- テヲトル

命に関わることを、次々と決断しないといけなかったんですね
- ハリー杉山さん

胃ろうを作るにしても手術が必要で、父の身体に負担をかけてしまう。これ以上父を苦しめていいのだろうかと思って、結局、胃ろうはしないと決断しました。
その後、介護施設に戻り、2週間くらい過ごすことができました。穏やかな時間が流れる中、家族で桜を見られたのが嬉しかったです。
父は2022年4月17日に83歳で旅立ちましたが、僕たちはできることはすべてやりきったと思っています。
親の終末期とお金の話は20代・30代のうちから話しておくべき

誕生日を祝うお父様とハリーさん
- テヲトル

介護をご経験され、お父様がお元気なうちに、どんなことをしておいたら良かったと思いますか?
- ハリー杉山さん

緊急の事態に陥ったときに、どんな対応をしてほしいかを話し合っておくべきでした。
「介護が必要になったらどうしたらよいか」とか「延命治療を希望するか」といったことですね。
もちろん、「家計や遺産分配などのお金」の話もしておきたかったです。
- テヲトル

確かにそれは大切ですね。
とはいえ、普段の会話のなかで、介護や看取りの話をするのはタブー視されているようにも感じます。
- ハリー杉山さん

でも、これは家族のためでもあるんです。
親の急変でつらい思いをしているときに、さらに追い打ちをかけるかのようにさまざまな選択をしなくてはならない。
その家族の負担を減らすためにも、普段から気軽に人生の終末期の話はできるようになっておきたいですね。僕は独身ですが、この先パートナーができたら、結婚前からいろいろ話し合いたいと思っています。
- テヲトル

介護から看取りまで経験し、今どんなことを感じますか?
- ハリー杉山さん

介護では「自分を優先する」ことがとても大事だと痛感します。
全力で尽くすのは素晴らしいことですが、自分のメンタルと身体のコンディションが整っていないと、人を支えることはできないと思っています。
自分の趣味を楽しんだり休んだりする時間は絶対に必要ですね。
- テヲトル

その通りだと思います。
一方で、介護中は自分の時間を持つことそのものに罪悪感を抱いてしまう人もいるのではないでしょうか。 - ハリー杉山さん

そう、日本では特に「自己犠牲は美しい」という価値観が根強いような気がしますね。
もちろん、誰かのために尽くすのは素晴らしいことです。でも、全力で向き合いすぎると疲弊してしまいます。以前、タレントでエッセイストの阿川佐和子さんと対談させていただいたとき「介護は線ではなく点で見るのが大切」とお話されていました。
これは本当に大事な視点だと思います。
認知症介護は「線ではなく点」で捉える|自分の趣味も優先して周囲に頼ることが大事
- テヲトル

「線ではなく点で見る」というのはどういうことでしょうか?
- ハリー杉山さん

介護を「ずっと続く1本の長い線」として考えると、「24時間365日、ずっと100%で頑張り続けなきゃいけない」と思い詰めてしまいますよね。でも、そんなの絶対に無理なんです。
だから「この時間は介護」「この時間は自分の趣味や息抜き」と、ハッキリ句読点を打ち、点としてとらえるんです。
自分の時間もちゃんと確保して、メリハリをつけること。それが長続きする介護のコツです。
- テヲトル

なるほど。
先ほどお話のなかにもあったように「家族だけで抱え込まない」のも大切だと感じました。 - ハリー杉山さん

周囲に相談して頼ることは本当に大切です。
僕も、父を愛しているからこそ、自分たちだけでなんとかしようと思ったものの限界がありました。あのつらい経験は、他の誰にもしてほしくありません。
困っていると声を上げれば、かならず手を差し伸べてくれる人がいるはず。介護のプロとして働く人たちは、本当に頼もしいですから。
- テヲトル

ハリーさんも、介護の現場で働く人たちに助けられたわけですものね。
- ハリー杉山さん

入居を勧めてくれたケアマネジャーさん、介護施設でケアをしてくれたスタッフの方たち・・・本当にたくさんの方が親身になってくれました。
介護従事者の方たちは社会を支えるヒーローです。
一方で残念ながら、今の介護施設は「離島」のような存在になっている気もします。
- テヲトル

「離島」ですか?
- ハリー杉山さん

気軽に訪れることのない、少し遠い存在というのでしょうか。どんな場所なのかあまり知られていないように感じます。
もっと介護従事者の方たちのかっこよさが伝わるようになってほしいですね。
- テヲトル

今まさに介護と向き合っている方へメッセージをお願いします。
- ハリー杉山さん

介護は大変なことも多いと思いますが、介護と向き合うご自身を、ちゃんと褒めてあげてください。もちろん、イライラしてしまうときもあると思うんです。
そういったときは、いったんその場から離れて、深呼吸してください。別の部屋に行って、思いのたけを叫んでもいいと思います。
自分のご褒美と趣味を楽しむ時間をしっかり確保してほしいですね。

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この記事の補足情報
著者情報
- PROFILE/ プロフィール

ハリー 杉山
タレント 1985年東京都生まれ。英国人の父と日本人の母を持ち、11歳でイギリスへ渡る。英国の名門ウィンチェスター・カレッジを経て、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)で学ぶ。日本語・英語・中国語・フランス語の4か国語を操るマルチリンガル。 2008年にスペースシャワーTVのMCとして芸能活動をスタート。以来、テレビやラジオのMC・ナビゲーターをはじめ、リポーター、モデル、俳優など幅広い分野で活躍している。フジテレビ「ノンストップ!」、フジテレビ「サイドbyサイド」、J-WAVE「POP OF THE WORLD」、J-WAVE「MIDDAY LOUNGE」、BS11「Weeklyワールドサッカー」、テレビ東京「東京GOOD! TREASURE MAP」などに出演。 ランニングやサッカーを得意とし、フルマラソンではサブ3を達成。英国と日本、双方の文化的バックグラウンドと高い語学力、スポーツへの深い造詣を生かし、国際色豊かなタレント・MCとして活動している。
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