認知症に関する相談事例(要介護認定の仕組み・認定調査・介護保険の入所施設など)

「要介護認定の仕組みを知りたい」認知症の相談事例
相談者・介護対象者
- 相談者
息子Sさん/50歳台
母と妻と子どもとの四人暮らし - 介護対象者
母/80歳台
脳梗塞の後遺症がある。要介護2
相談内容
母は2年前に脳梗塞で倒れ、リハビリテーションでかなり改善したものの、左半身が不自由になってしまいました。母は以前から手足がしびれる、めまいがするとよく言っていたのですが、「太ったせいだ、歳をとったせいだ」と真剣に取り合いませんでした。それらが軽い脳梗塞の症状だったということを知り、もっと気をつければよかったとくやみました。
母は入院中に要介護認定を受け、在宅介護の準備をしました。祖母が認知症だったので母も脳血管性認知症になるのではないかと心配したのですが、話し方が少したどたどしくはなりましたが、認知機能は大丈夫でした。私たちが忘れてしまったことまでよく覚えているので、今でも母を頼りにしています。
母は私の妻に介護してもらうのは申し訳ないと、訪問介護やデイサービスを利用しています。当初は要介護4の認定を受けて限度額いっぱいサービスを利用していました。それが、要介護認定の更新で、要介護2になってしまいました。母の状態がそんなに変わったとは思えないので不思議でしかたありません。これでは、サービスを大幅に減らさなければなりません。ケアマネジャーは、国の方針だからしかたがないと言います。そんな説明では納得できません。
ポイント
母親が脳梗塞の後遺症で半身麻痺になった
限度額いっぱいのサービスを利用して暮らしていた
更新で要介護4から2になって、サービスを減らすことになり困っている
相談員の対応
Sさんは「母が要介護4から2になって困っています」と話しはじめました。介護保険制度に対する疑問や苦情なのか、それとも母親の介護に関する個別の悩みを相談したいのかと考えながら、次の言葉を待ちました。
Sさんは母親の状況を淡々と話しはじめました。そして「要介護度がどのように決まるか教えてほしい」と言うので、要介護度は病気の重さではなく「介護の手間」によって判定されること、介護の手間は時間に換算され、認定調査の際に聞かれる74項目について自立であれば0分、一部介助で何分、全介助で何分と項目ごとに決まっていて、さらにいくつかの項目を掛け合わせて集計し、そのうえで合計時聞によって機械的に一次判定が出ること、一次判定の結果に主治医の意見書と特記事項を加味して、介護認定審査会で決定されることを説明しました。
また、もしも判定が適切でないということであれば、その理由として、認定調査が適切に行われなかった、主治医意見書と特記事項の内容が適切でなかった、介護認定審査会の審査が不十分だったことなどが考えられると伝えました。
Sさんは「母は、実際にはできないのに『できる』と答えたかもしれません」 と、母親が人の世話にはなりたくなくて時間がかかっても自分でやろうとしていたことを思い出していました。本人は要介護度が2になって喜んでいるかもしれない、と言います。「本来ならよかったですねと言いたいのですが、サービスがからむので何とも」とSさんの思いを共有しました。
さらに、要介護2になった理由を役所の担当窓口に問い合わせ、納得できない場合は都道府県の介護保険審査会に不服申し立てができること、実際には区分変更の申請をするケースが多いことを説明しました。Sさんは「要介護認定のしくみがわかったので少し気持ちが落ち着きました。新しいケアプランをケアマネジャーに相談してみます」と言いました。
「認定調査について知りたい」認知症の相談事例
相談者・介護対象者
- 相談者
娘Tさん/50歳台
独身で両親と暮らす。介護のために退職、うつ病の診断を受けている。 - 介護対象者
父/80歳台
認知症。要介護認定申請中。
相談内容
70歳まで現役でバリバリ働いていた父でしたが、80歳を超えてから徐々に生気がなくなり性格も変わってしまいました。
うつ病かと思って大学病院の精神科で診てもらったところ、アルツハイマー病であることがわかりました。母と私で認知症について調べ、父に自信を取り戻してもらうような対応をしようと話し合い、介護をスタートさせました。
最初のころは穏やかに介護できたのですが、母は生来自己中心的なところがあり、今では父に禁句を並べ立て、命令するようになりました。父は母の言葉に怒り、暴力までふるいます。私にはそれを止めることができず、わが家は修羅場になってしまいました。私はとても仕事を続けられるような状態ではなくなり、退職しました。
それから1年後、私も母も体調を崩し、心療内科を受診したところ二人ともうつ病と診断されました。こうなっては妹が頼りと、隣の県に住む妹に応援に来てもらいました。妹が間に入ってとりなしてくれたおかげで、父の状態はみるみる改善され、母も落ち着きました。妹は1ヵ月ほどいてくれたのですが、妹にも家庭があり、そう長くはいられません。妹は「お父さんのことを否定しない対応ができなければ、すぐに最悪な状態に戻ってしまう。介護保険の申請をしてサービスを利用したほうがよい」と言いました。
要介護認定を申請しようと思うのですが、具体的な方法や調査員にどこまで家庭の内情を話せばよいかなど教えてください。
ポイント
認知症の父親の介護で家が修羅場になってしまった
母も自分も、うつ病と診断された
要介護認定を受けることになったが、認定調査が不安
相談員の対応
Tさんは「父が認知症で、介護保険サービスを使おうと思います。手続きについて教えてください」と言いました。
そこで、介護保険サービスを利用するには、介護が必要な状態であるという認定を市区町村から受けなければならないことを説明しました。また、要介護認定の申請書を役所のホームページからダウンロードして記入内容を事前に確認するとよいことを加えました。さらに、申請は高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターでもできること、これは中学校区に1か所あり、役所で担当のセンターを教えてもらえることなどを伝えました。
Tさんに「申請から認定までどのくらいかかりますか」と聞かれたので、原則1か月で、その間に調査員が自宅に来る認定調査があることを説明しました。「調査員は高齢者本人に聞き取り調査をします。認知症であれば、お父さんの日ごろのようすを知っている人が立ち会うことをお勧めします。お父さんの症状や介護で困っていることをメモにして調査員に渡すと特記事項に反映されますので効果的です」と情報提供しました。訪問調査の日時に希望がある場合は、申請時に申し出ると考慮してもらえることがあることも付け加えました。
「家の事情をすべて話すのですか」と心配するので、「認定調査は1時間くらいです。お父さんの介護に必要だと思う情報にしぼって伝えたほうが調査員も助かります」と、Tさんの不安を解消するように話しました。
「医師の診断書は必要ですか」との質問に、「主治医意見書が必要ですが、これは申請書に記入した医師に役所が直接依頼します」と伝え、「お母さんがうつ病で暮らしに不安があるなら、お母さんも要介護認定を受けられますよ」と言うと、「父が落ち着いたら考えてみます」とのことでした。
「わからないことは地域包括支援センターで相談できますから安心してください」と伝えました。
「かかりつけ医とは別の医師に相談したい」認知症の相談事例
相談者・介護対象者
- 相談者
娘Wさん/40歳台
夫と子ども二人との四人暮らし - 介護対象者
義父/80歳台
一人暮らし。認知症の疑いあり。要介護認定は未申請
相談内容
義父は義母を亡くしてから一人暮らしをしています。
最初の10年くらいは、月に一度、夫と二人で義父を訪ねていました。義父は元公務員で年金も十分にあり、園芸や陶芸、友人との旅行を楽しみ、家事も自分でできるので安心していました。
それが、3年前から洗濯や掃除をせず、食事は買ってきたものですますようになったので、2週間に1回、私が訪ねて家事を手伝うことにしました。
半年前くらいから、お風呂に入っていないようで髪はくさいし、いつも同じ洋服を着ています。家の中もすぐに足の踏み場がなくなり、生ゴミの悪臭がします。訪ねて行くと寝ていることもあり、引きこもっている感じです。
私が質問すれば返事をしますが、自分から話すことはなくなりました。以前の義父とは明らかに違います。
先日、義父がお世話になっている内科医に相談に行ったのですが、「何を言っているんですか。お父さんは年相応です。私が診ているんだから大丈夫です」と怒られてしまいました。「先生の前ではちゃんとしていても、家ではおかしいのです」と言いたかったのですが、とても言えませんでした。
結局、認知症の専門医を紹介してもらうこともできませんでした。私は別の医師に相談したいのですが、夫は「父は歳をとっただけだ。これからも先生のお世話になるのだから言う通りにする」と言って聞きません。認知症だとしたら早期診断・早期治療が大切だと思うので、悩んでいます。
ポイント
一人暮らしの義父のようすが気になる
かかりつけ医は「年相応だ」と取り合ってくれない
夫が別の医師の診察に反対する
相談員の対応
Wさんは、「認知症には、早期診断・早期治療が大事ですよね」と切り出しました。
「早期に受診するメリットはあります。厚生労働省でも早期発見・早期対応の取り組みをはじめています」と伝えると、Wさんはわが意を得たりという感じで義父のようすを話しはじめました。Wさんは、認知症に違いないと思っているようなので、「お歳を考えても認知症が心配になりますね」と同意しました。
「だから専門医に診てもらいたいのです。それなのに、かかりつけ医は頼りにならないし、夫は反対するし。早くしなければとあせってしまいます」と言いました。「お嫁さん一人で大変ですね」とねぎらうと、「そう言っていただけてうれしいです。誰も私の苦労をわかってくれません」との返事が返ってきました。
「ところで、お義父さんとはどのようなお話をしますか」とたずねると、「日付・年齢・生年月日・子どもや孫の名前・最近のニュースなどを質問します」とのこと。毎回、認知症の問診のような質問をされるのはつらいだろうなあと思う一方で、心配のあまりそうせざるを得ないWさんの気持ちも理解できます。
質問をすると、義父はわざと無視したり、にらんだりすることもあるとのことでした。「あなたも気が重いですね。認知症ケアは人間としてどう向き合うかが基本ですので、家族がそれを学んで実践すれば、お義父さんがたとえ認知症でなくてもよい対応になると思います。また、質問によってはプライドが傷つくので、わかっていても答えない人もいるようですよ」と伝えると、「義父の気持ちを考えないといけないのですね。でも、受診はさせたいです」と言います。「実の子どものほうが受診に消極的な例はあります。認知症だと診断されたくない思いが強いというか」と伝えると、「私だってそうです。不安で不安で」と言いました。「本人も家族もいちばん不安な時期ですね」と受け止めると、「改めて、主人に相談してみます」とWさんは言いました。
「介護保険の入所施設について知りたい」認知症の相談事例
相談者・介護対象者
- 相談者
息子Rさん/40歳台
妻と子どもとの三人暮らし - 介護対象者
父/70歳台
一人暮らし。認知症と診断されたばかり
相談内容
私は、郊外の団地で、父は会社人問、母は専業主婦という典型的なサラリーマン家庭で育ちました。
父が定年退職してからは夫婦二人で平穏に暮らしていたのですが、母ががんになり、あっけなく旅立ってしまいました。父は母に何でもしてもらっていたので、最初は苦労したようですが、そのうちに料理も上手になり、父の手料理をみんなで楽しむまでになりました。
実は、父が台所でボヤ騒ぎを起こしてしまいました。行ってみると、台所には黒こげの鍋ややかんがたくさんあり、これまでにも危険なことが何度もあったようです。団地の世話役の人から、一度、認知症の検査を受けてはどうかと勧められました。インターネットで探した病院で父を診てもらうと、軽度のアルツハイマー病と診断されました。結果をその人に伝えると、「火事がいちばん怖いので、お父さんを何とかしてほしい」と言われました。
わが家はせまいマンションで、高校受験を控えた息子もいて、とても父とは暮らせません。また、私の会社は不景気で、介護休業を取れるような状況ではありません。妻も仕事で忙しく父の介護に通うゆとりはなさそうです。父は、施設は嫌だと常々言っていたのですが、妻が「三度三度のご飯が出てくるマンションに引っ越せば安心ですよ」と勧めたら、「それならいい」とその気になってくれました。
今、資料を取り寄せて施設を調べているのですが、いろいろな種類があってよくわかりません。特に介護保険三施設の区別が難しいです。それを教えてもらえますか。
ポイント
父親が認知症になり、一人暮らしがむずかしくなった
父親を引き取ることや介護に通うことはできない
父親が入る施設を検討中であるが、施設の遣いがわからない
相談員の対応
Rさんは最初に、「施設の種類や違いを教えてほしい」と言い、父親や家族の状況とともに介護付きの施設を探していることを話してくれました。
賃貸マンションのように部屋を借りる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と、施設を利用する権利を買うのが一般的な「有料老人ホーム」があること、有料老人ホームには外部から介護サービスを受けるタイプとホームスタッフが介護サーピスを提供するタイプがあり、介護の必要度によっては部屋を移らなければならないケースがあることを説明しました。
介護保険三施設といわれる特養(特別養護老人ホーム)・老健(介護老人保健施設)・療養病床(介護療養型医療施設)の違いについては、入所定員100人あたりの看護職員と介護職員の人員基準を参考に説明しました。看護職員:介護職員の人数が、特養では[3:31]、老健では[9:25]、療養病床では[17:17]になっています。この数字をみれば、どのようなケアが受けられるかはイメージしやすいと思います。
さらに、特養の入所には本人の要介護度と住まいや家族の状況を勘案した優先順位があること、老健は病院から自宅に戻る際の中間施設でリハビリテーションに力を入れていること、療養病床は将来的に廃止される予定であることも説明しました。費用は、施設介護サービス費の1割と食費・居住費・日常生活費を負担しますが、本人の年収に応じた負担軽減措置があり、いずれの施設も入居一時金はないことを加えました。また、Rさんの父親は軽度のアルツ八イマ一病なので、グループホームについても説明しました。
入所を決めるときには必ず見学して、交通の便や環境、建物や設備を見て、何よりもスタッフと入所者の雰囲気を味わうことが大切だと伝えました。Rさんは「実際に見に行かないとダメですね。月の支払いが父の年金内で収まるといいのですが」と言うので、「費用のことも含めて、疑問点は遠慮せずに質問するといいですよ」と伝えました。
「サービスは利用しなければならないのか」認知症の相談事例
相談者・介護対象者
- 相談者
娘Kさん/50歳台
母と20歳台の娘との三人暮らし - 介護対象者
母/80歳台
認知症で要介護4
相談内容
母はきつい性格で、かわいがってもらった覚えがありません。10年前、私は離婚して娘を連れて実家に戻りました。私たちを温かく迎えてくれた父が急死したとき、母は私のせいだとなじりました。
その後、母に認知症の症状が出たのですが、病院嫌いなので私と娘で面倒をみてきました。2~3年前からは昼も夜もひとり歩きをし、暴言や暴力もあるという地獄の日々になり、私は精神的にまいってしまい、精神科に通いました。
半年前、母は転倒して腰を打ち、立ち上がれなくなりました。病院に連れて行こうとすると嫌だと暴れるのでそのままになってしまい、それ以来一人では歩けなくなりました。
2か月ほど前に、地域包括支媛センターの人が来て要介護認定を勧められ、言われるままに申請しました。認定調査があり、医師も往診に来て、要介護4と認定されました。それ以来、担当になったというケアマネジャーは、訪問介護、リハビリテーション、入浴サービス、デイサービスなどを次々に勧めてきます。昨日は、往診に来た医師が突然訪ねて来て、「これからは月に2回往診します」と言ったので驚いてしまいました。
ケアマネジャーと医師は「母のために」と言いますが、これまでさんざん苦労してきて、やっと母が寝たきりになって今は天国なのだから、このまま放っておいてもらいたいのです。
ポイント
「かわいがってもらった覚えがない」と、母親に対して複雑な思いがある
介護疲れで精神科に通っていた
次々にサービスが提案され、とまどいと怒りを感じている
相談員の対応
Kさんは、娘と二人きりで認知症の母親をみてきたこと、転倒をきっかけに 母親は一人で歩けなくなってしまったことなどを矢継ぎ早に話しました。かわいがってくれなかった母親への複雑な思いに配慮しながら、ていねいに話を聴きました。
母親のBPSD(行動・心理症状)がひどかったときにうつになったと間き、「どれほどご苦労されたことか」とこころからねぎらいました。また、母親を受診させられなかったことに負い目を感じていたので、「女性二人で病院に連れて行くのはむずかしかったと思いますよ」とそのときの情景を想像しながら言いました。
Kさんは、次々にサービスを勧めてくるケアマネジャーと医師への不満を訴えます。苦労を重ねてきた自分の気持ちが置き去りにされ、とまどいと怒りを感じているようすでした。その気持ちを受け止めながら話を聴きました。ケアマネジャーは、認知症の母親をどうにかしなければという職業意識で先走ってしまったのではないでしょうか。そこで、「介護保険サービスは本人と家族をサポー卜するもので、家族の意向を踏まえて計画を立てます。利用したくなければ断ればいいし、利用しようと思ったら遠慮しないで要望を伝えるといいですよ」と助言しました。
Kさんは、母親が寝たきりになった今が天国だと言いましたが、地獄のような日々に比べればということであり、「放っておいてほしい」と言いながら相談の電話をしてきたのは、助けてほしいというサインではないかと思いました。
今後は地域の介護者支援ネットワークにつながってほしいと願い、「地域包括支援センターとパイプができてよかったと思います。いざというときに連絡できる専門家を知っていると安心ですよ」と伝えました。「娘さんと一緒に、あなたの身体をいたわりながら介護してくださいね」と言うと、Kさんは安心したように「また相談させてください」と言いました。
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