認知症の妄想の対応法
事実でないことを本気で信じ込むことがありますが、これを妄想といいます。
困ったことに妄想は被害的なものが多いです。
「物盗られ妄想」は、金品などを盗まれたという思い込みです。しまい忘れたり、置き忘れたりした財布や眼鏡などの身のまわりのものを人に盗まれたと思ってしまいます。
「嫉妬妄想」といって夫や妻が浮気をしている、と信じ込む妄想もあります。
「誰かが家にいる」というものや「ここは自分の家ではない」という妄想もあります。
病気になる前には、とてもしっかりしていて周囲から頼りにされていた方が、しばしばこのような妄想を抱かれます。
また、この妄想の対象となるのはたいていご本人を身近でお世話している人です。
妄想の対象にされた方は、面と向かって暴言を吐かれるうえに、どんなに自分がその人からひどい目にあわされているかを、他の人に訴えますから、聞いているといたたまれない思いがしますし、介護する気も失いかねません。
徐々に自分が衰えてきたことの自覚から生じる不安や焦りが、金銭への執着や見捨てられるかもしれないとの恐怖に発展するのだと思われます。
これに加えて、介護して下さる方への感謝や負い目、上下関係の逆転といった変化が複雑に絡んで出現する症状といえるでしょう。
対応法
否定してもかたくなになられるだけです
「違います」と否定しても逆に「自分の言うことを信じてもらえない」と不安や怒りでかたくなになり、妄想が強くなることがあります。「そうですか。困りましたねぇ」など相槌を打ちながら訴えを聞き、否定もせず、肯定もしない態度で接することが大切です。
安心感や生きがいを大切に
「少し年をとって、弱ってこられたところもあるけれど、まだまだ家族はあなたのことを頼りにしているし、大切に思っていますよ」というメッセージをいろいろな形で送り続けてください。
たとえば、お味噌汁の味付けをしてもらう、仏壇のまつり方・法事のとり行い方を尋ねる、などご本人が得意としていたことに力を発揮していただいて、その方なりの役割を果たせているという自信を日ごろからもっていただくことは、よい方向に作用します。
周りの人の理解を得るように
周りの方には、認知症の症状として妄想が生じることを説明して理解していただきましょう。
妄想の対象となってしまった方は辛いですが、周囲に認知症を知ってもらうよい機会ができたとプラスに解釈して、介護の味方を増やしてください。
どうしても難しければ距離をとることも有効です
介護者が妄想の対象となり、ご本人が激しく混乱したり、介護する方に極度に負担がかかっている場合は、介護を別の人に代わってもらったり、施設や病院の入所・入院などを利用し、一時環境を変えてみることも有効な手段です。
ケアマネジャーやかかりつけ医、専門医とよく相談して、ご本人と介護するご家族双方にとってよい選択を行ってください。