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認知症ケアの現場で使われている「認知症マフ」をご存知ですか?活用事例と作り方のポイントを解説します
更新日:2025-06-13

認知症ケアの現場で使われている「認知症マフ」をご存知ですか?活用事例と作り方のポイントを解説します

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認知症ケアの現場で使われている「認知症マフ」をご存知ですか?活用事例と作り方のポイントを解説します

近年、ケアの現場で「認知症マフ」を導入している施設がみられます。2018年に高齢者福祉や地域づくりの一環として日本に導入され、用いられるようになりました1,2

認知症マフは手を温かく包むための筒の形をしたニットの小物です1。マフの両端から手を入れられるようになっており、マフの中や表面に取り付けられているアクセサリーに触れることで感覚的な刺激を得られます1

この記事では、ケアの現場での認知症マフの活用事例、作り方のポイントや使用に関する注意点を解説します。

 認知症マフ。横25〜40cm、縦15cm程度のものが一般的です。

マフに手を入れた写真です。

認知症マフのケアの現場での活用事例

認知症マフを実際に使っている病院で、以下のような活用事例が報告されています1

注意をそらすツールとして

ケアの現場では、安全を確保するために身体拘束が必要になることがあります3。しかし、身体拘束は当事者の身体や精神状態、スタッフとの関係性に悪影響をもたらす可能性があり、身体拘束を減らす方針も出されています3, 4

身体拘束が必要になる一例として、当事者が点滴や経管栄養などのチューブを抜いてしまったり、皮膚をかきむしったりしてしまうことが挙げられています3が、認知症マフは、このような場面で点滴チューブなどへの注意をそらすツールとして活用されています1, 2

コミュニケーションツールとして

認知症マフがコミュニケーションをとるきっかけになったり、編み物が得意だったなどの話題ができ、当事者の理解につながることがあります1

当事者とスタッフの間だけでなく、当事者同士の交流を深めることができたという報告もあります2

リハビリテーションを促進するために

認知症のご本人には、目に入ったものを握ってしまい離さなくなる、強制把握と呼ばれる症状がみられる方もいます1,2。リハビリテーションを行う際に移動が必要なことがありますが、強制把握によって周囲のチューブやベッド柵を握ってしまうと移動が困難です。

認知症マフによって強制把握を減らし、移動が容易になるため、リハビリテーションの促進につながります。また、麻痺のある当事者も認知症マフで手を動かすことで、感覚刺激を得るためのリハビリテーションになります1

認知症マフの作り方

当院で使用している認知症マフの作り方をご紹介します。

①:毛糸、手芸用のわた、かぎ針、とじ針を用意します。100円ショップなどで揃えることができます。毛糸は好みに合った肌触りのものを選びましょう。

 

②:毛糸でくさり編みを35cm程度作り、わっかを作ります。

 

③:そのまま30cm程度の筒になるように編みます。編み方は長編みと細編みどちらでも構いません(写真は長編み)。

 

④:③の筒の中で握るために小さめの筒を新たに作ります。綿が出てこないよう細編みしましょう。綿を適度に詰めてとじ針で閉じます。

 

⑤:③で編んだ30cm程度の筒の内側に、④を縫い付けます。

 

⑥使用するご本人の好みに合わせ、花などのアクセサリー小物を固定し完成です。大きさは18cm×30cm程度を目安としていますが、手の大きさや使い方で調整しています。

 

認知症マフの作り方のポイント

認知症マフのアクセサリーにはニットのボタンや花、リボンなど当事者の好みに合わせて用意しましょう2。ご本人の周囲の環境次第では、音が鳴るアクセサリーもいいかもしれません1

ご本人が誤飲して窒息するのを避けるため、繊維がほつれやすい毛糸を使わないようにしましょう。

認知症マフを使用する際の注意点

認知症マフの使用を検討できる判断基準と、安全に使用するための注意点をご紹介します。

使用する判断基準

次のような場合は、認知症マフの使用を検討してみるとよいかもしれません2

  • ・   触ることによる心地よい刺激を好む
    ・   視力の低下などで外部からの刺激が得られにくい
    ・   スタッフとの言語的コミュニケーションが難しい
    ・   布団やベッド柵など掴んだものを離さない
    ・   ミトンにより身体拘束されている

一方で、次のような当事者は認知症マフの使い方や形状に注意が必要です1,2

  • ・   注意力が低下し、認知症マフに注意を向けられない
    ・   認知症マフを強く引っ張ってしまう
    ・   誤って認知症マフを口に入れてしまう可能性がある
    ・   認知症マフに対して不快感がある
    ・   認知症マフを汚染してしまう

安全に使用するために

認知症マフのアクセサリーは、当事者が取り外せないように確実に縫い付けましょう。定期的に洗濯し、清潔にしましょう2。認知症マフの使用は、日ごろケアを行っているスタッフがご本人の様子を見て総合的に判断することが大切です1

まとめ|認知症ケアの現場で使われている「認知症マフ」について

認知症ケアの現場で活用されている認知症マフについて、その概要から実際の使用事例、作り方、そして安全な使用のための注意点を解説しました。

認知症マフは使用上で気を付けるべきこともありますが、手作りで比較的簡単に作成でき、ご本人一人ひとりの好みや状態に合わせてカスタマイズできる点が特徴です。


認知症関連のイベントでも認知症マフの展示などが行われているようです。関心がある方は、ぜひ一度手にしてみてください。

(参考文献)

1, 鈴木みずえ, 他:ミトン装着低減を目的にTwiddle muffを活用したスタッフの主観的効果と安全性の検討. 日老医誌. 2023;60(4):414-23.

2, 鈴木みずえ.他:認知症マフを活用した事例報告と地域における展開.認知症ケア学会誌.2024;23(3):563-8.

3, 厚生労働省:1. 身体拘束廃止・防止の意義. 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き. p.3-7.
[https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf]
(最終閲覧日:2025年6月6日)

4, 厚生労働省:2. 身体拘束廃止・防止に向けて. 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き. p. 8-18.
[https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf](最終閲覧日:2025年6月6日)

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