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介護休暇と介護休業の違いは? 介護離職を防ぐ93日間の使い方を専門家に聞く

介護休暇と介護休業の違いは? 介護離職を防ぐ93日間の使い方を専門家に聞く

親に介護が必要になったら、仕事を辞めなければいけないの?
家族の介護と仕事を両立したいけれど、どうすればいいのか分からない……。

そうした人たちを支える制度の1つが「介護休暇」と「介護休業」です。どちらも仕事と介護の両立を支える制度で、2025年4月には改正育児・介護休業法が施行。介護離職防止に向けた企業の支援も強化されました。

しかし、NPO法人となりのかいご代表理事の川内潤さんは、制度を利用するだけでは仕事と介護の両立にはつながらず、使い方によってはむしろ介護離職へのステップにもなり得ると指摘します。

また、介護休業に関しては「親を介護するための期間」ではないとも語ります。

では、介護休暇や介護休業をどう使えばいいのでしょうか。今回は川内さんに、制度の使い方やテレワークとの向き合い方、そして介護に直面する前の備えについて伺いました。

この記事でわかること

  • 「介護休暇」と「介護休業」の使い分け方

  • 介護休業は「自分で介護するための期間」ではない

  • 親が元気なうちから介護に備えておくことが大事

介護休業の93日間は「自分で介護するため」ではない

NPO法人となりのかいご代表理事の川内潤さん

NPO法人となりのかいご代表理事の川内潤さん(リモート取材を実施しました)

テヲトル:介護休暇と介護休業には、どのような違いがあるのでしょうか。

川内潤さん(以下、川内潤):介護休暇は、対象となる家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日取得できます。

ピンポイントで利用する方が多く、時間単位での取得も可能です。例えばケアマネジャーさんとの打ち合わせや、病院から退院するときのソーシャルワーカーさんとのやり取りなどに使われることが多いです。

一方、介護休業は、対象となる家族1人につき通算93日まで利用でき、3回に分けて取得できます。例えば、最初の1回は介護体制をつくる、2回目は老人ホームを選ぶ、3回目は看取りに立ち会うといった使い方が考えられます。

いずれも「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」が対象となりますが、必ずしも要介護認定を受けている必要はありません。

介護保険制度で要介護2以上と認定されている場合に限らず、厚生労働省が示す『常時介護を必要とする状態』の判断基準を満たす場合も利用できます。例えば、脳梗塞で入院し、要介護認定の手続き中でも対象になる場合があります。

テヲトル:介護休暇や介護休業を取った場合、給与はどうなるのでしょうか。

川内潤:介護休暇中の賃金について、法律上の支払義務はなく、各社の就業規則等によります。

一方、介護休業中は、一定の要件を満たせば、原則として休業開始時の賃金の67%相当の介護休業給付金が支給されます。

介護休暇と介護休業の違い


介護休暇

介護休業

主な使い方

通院の付き添い、ケアマネジャーとの打ち合わせなど

仕事と介護を両立する体制づくり

取得できる期間

1人なら年5日、2人以上なら年10日

1人につき通算93日

分割

時間単位でも取得可能

3回まで

給与・給付

有給・無給は会社による

一定の要件で67%相当の給付

cap:介護休暇と介護休業の違い(文献1、2を参考に作成)

テヲトル:介護休暇や介護休業について、特に誤解されやすい点はありますか。

川内潤:介護休業については、直接介護をするためのお休みだと理解されている方が多いです。でも、介護休業は仕事と介護を両立できる「環境を整える」ための期間なんです。

もちろん、家族が直接介護をしてはいけないということではありません。ただ、介護の平均期間は4年7カ月といわれています。

一方、介護休業は93日しかありません。その期間を家族が直接介護するためだけに使っていては、到底足りないんです。

実際、NPO法人となりのかいごが発行した『介護離職白書2026』では、介護離職した人の約6割が、介護休業や介護休暇、テレワークなどの両立支援制度を利用していました。制度を利用している間は「両立できている」と思うかもしれません。

しかし、その間に仕事へ戻るための体制をつくらなければ、制度の利用が離職へのステップになってしまうこともあります。だからこそ、介護休業の間にケアマネジャーさんやヘルパーさんなどとつながり、家族だけで抱え込まない体制をつくることが大切です。

介護離職状況別|介護⽬的の制度利⽤の⽐較

介護離職状況別|介護⽬的の制度利⽤の⽐較(NPO法人となりのかいご『介護離職白書2026』P15より)

「家族が面倒を見ること」が良い介護とは限らない

テヲトル:家族だけで抱え込まないことは、介護される本人にとっても大切なのでしょうか。

川内潤:私が十数年の活動を通して分かったのは、ご家族が直接介護をすることで、本人のケアの質が上がるわけではないということです。

私たちの中には、「家族が面倒を見ることが良いことだ」という感覚が脈々とあると思います。「面倒を見てあげたい」「親孝行したい」「恩返ししたい」という気持ちは、私も日本人なのでよく分かります。

でも、それと本当に良い介護をすることが一致しているのかどうかは、一度チェックしていただきたいと思います。

テヲトル:仕事と介護の両立支援としては、テレワークという選択肢もあると思います。2025年4月の法改正では、介護をする労働者がテレワークを選択できるよう、企業が措置を講じることも努力義務になりました。

川内潤:私はテレワークであっても、仕事と介護の両立には様々な現実的課題があると考えています。

例えば、もの忘れのある方が家にいて、家族が別室でウェブ会議をしているとします。事前に説明したり、張り紙をしたりしていても、ご本人が部屋に入ってくることはある。そこで仕事を邪魔されたと感じてしまえば、喧嘩にもなります。

感情的な衝突が起きると、ご本人はさらに不安になり、家族にもっと話しかけるようになる。そうなれば、仕事に集中できる状況ではありません。

さらに、家族が自宅にいることで、介護サービスの利用に影響する場合もあります。例えば、それまで週4日デイサービスに通っていた方が、「息子や娘が家にいるなら、私は行かなくてもいい」と、利用をやめてしまうケースもある。

つまり、家族が家にいることと、仕事と介護を両立できることは同じではないんです。

テヲトル:実際に、テレワークがうまくいかなかった方を支援したこともありますか。

川内潤:あります。もともとご両親とは別居していたのに、実家に戻ってテレワークを始めた方がいました。でも、「仕事にならない。他の人はどうやっているんだ」と相談に来られたんです。そこで、「このケースでは、実家でのテレワークを前提にした両立の仕方を見直す必要があります」とお伝えしました。

テレワークをやめた後は、きちんと介護サービスの体制をつくることができ、息子さんの負担も下がりました。結果として、ご両親を見送るまで関わることができました。

テヲトル:息子さんにとって、ご両親と再び離れて暮らす決断は簡単ではなかったのではないでしょうか。

川内潤:実家を離れるには、ものすごく勇気が必要だったと思います。周囲の人からも、「今までいられたのに、なんで帰るんだ」というようなことを言われていて、とてもつらそうでした。

でも、一番大事にするべきなのは、お母さんのケアじゃないですか、と。ご近所さんの言葉に応えることではなくて、「今、自身が限界を迎えて、お母さんに対して優しくできなくなっていることが、一番つらいことじゃないですか」とお伝えしました。

自宅に戻った後も、「ヘルパーさんにこんなことをやらせてしまった」と心配されていました。でも、「ヘルパーさんからクレームを言われているんですか」と聞くと、「一言も言われていません」と。

だったら、それはその方自身の心配事なんです。大切なのは、お母様のケアにとって何が必要かですよね。そういったことを繰り返しお伝えしながら、看取られるまでサポートしました。

2025年4月の育児・介護休業法改正で企業の介護支援はどう変わった?

NPO法人となりのかいご代表理事の川内潤さんの写真

テヲトル:2025年4月の法改正によって、企業の仕事と介護の両立支援はどのように変わりましたか。

川内潤:介護に直面する前の早い段階(40歳等)の従業員に対して、介護休業や仕事と介護の両立支援制度などの情報を提供することが企業に義務付けられました。これを正しく実施すれば、従業員が介護に直面する前から制度について知ることができます。

ただ、実態としてよく聞くのは、社内規定をメールなどで一斉に送って、対応を済ませている企業が多いということです。

テヲトル:そうした情報を受け取った記憶がない人も多そうです。

川内潤:その通りなんです。制度として情報提供が義務付けられても、メールや資料を一度送るだけでは、従業員の記憶に残らないこともあります。実際に運用して1年以上経ち、こうした周知のあり方にも課題が見えてきています。

テヲトル:どのような課題でしょうか。

川内潤:「うちの会社って、介護だったらこんなに休めるんだ」という認識だけが伝わってしまい、そのまま休んで辞めてしまうケースもあります。制度を知らせるだけでは、仕事と介護の両立にはならないんです。

もちろんきちんと取り組んでいる企業では、介護に直面する前の相談が一気に増えています。両立支援への取り組み方によって、企業間の差が明確になったのではないでしょうか。

テヲトル:会社側の介護に関する知識が十分ではない場合、従業員側からできることはありますか。

川内潤:会社が介護についての細かな知識を高めることが、業務の優先順位として高くなるかというと、難しいと思います。大切なのは、休暇・休業制度を適切に運用することです。

その上で、個人ができる最初の一歩としては、「休暇・休業制度がこういうふうになったと聞いたんですけれど、うちの会社はどうなっていますか」「実際に取ろうと思ったら、誰に相談したらいいですか」と、困る前に聞いておくことだと思います。

抜き差しならない状態になって初めて会社に聞くから、言いづらくなります。ギリギリまで制度を使わなかったり、場合によっては使わずに辞めたりすることもあります。

「仕事ができる人」ほど介護はうまくいかない?

NPO法人となりのかいご代表理事の川内潤さんの写真2

テヲトル:認知症の介護では、特にどのようなことが問題になりやすいのでしょうか。

川内潤:認知症こそ、「家族が頑張って見守らなきゃいけない」「周りに迷惑をかけてはいけない」と思われている方が、まだまだ多いと思います。

例えば、ある方のお父さんは、もともと商品マーケティングの仕事をされていました。昔からドラッグストアに行って、自社の商品と他社の商品が売れているかを確認することが趣味だったんです。認知症になってからは、商品名がなかなか出てこなかったり、「なんで自分はここに来たんだっけ」と、その場でおっしゃったりするようになりました。

娘さんは後ろからついていって、「忙しい店員さんに迷惑だから、もうお父さんが店に行くのを止めようと思う」と話していました。でも、私は「止める前に、一度立ち止まって考えてください」とお願いしました。

テヲトル:それはなぜですか?

川内潤:もの忘れのある方が地域の中で生きていくための、とても大事な一歩だからです。それに、地域の人にとっても、認知症の当事者と実際に接する経験になります。問題なのは、お父さんが一人でドラッグストアに行くことではなく、それを受け入れきれないご家族の側かもしれない、とお伝えしました。

認知症介護では、距離感がすごく大事です。家族が介護を頑張るあまり、すべてを把握しようとしても、ご本人ができることが増えるわけではありません。むしろ、ある程度距離を取って、程よく見守ることが良い介護になる場合もあります。

テヲトル:介護を頑張りすぎてしまうのは、どんな方に多いのでしょうか。

川内潤:仕事ができる人です。どれだけ頑張っても、これまでのビジネススキルを使っても、介護だけは仕事と同じようにはいきません。

例えば、「次にどんな問題が起きるかを予測して、それが起きないように対策する」という考え方は仕事では有効かもしれません。しかしそれを介護に持ち込むと、ご本人の生活を監視・管理することにもつながり、かえってケアがうまくいかなくなることがあります。

テヲトル:そういう方が自らSOSを出せない場合、どのように支えればいいのでしょうか。

川内潤:だからこそ、職場が重要なんだと思います。介護に直面していない人が、自分から認知症の講座に参加したり、介護について勉強したりすることはなかなかありません。でも、職場であれば、研修や情報提供を通じて、介護に直面する前から知識を届けることができます。

特に、先ほどお話ししたような仕事ができる人は、適切な距離感をもって関わることが重要であると理解して、「これが仕事と介護の両立なんだ」「これが認知症の介護における家族の役割なんだ」と理解すると、状況を変えるのがものすごく早いんです。

もともと物事を進める力がある方々なので、正しい知識が伝われば、一気に状況を変えられる。私はそこに可能性があると思っています。

親が元気なうちに何を準備するべきか

テヲトル:介護に直面する前から、職場で介護について学ぶことには、備え以外の意味もありますか。

川内潤:介護の研修を受けると、人生観が変わる方もいます。例えば、電車の中で大汗をかきながら、腰を曲げて、杖をついて乗ってこられる高齢者を目の当たりにして、以前は「邪魔だな」「家族は何をしてるんだ」と思っていた。

でも、介護について学んだ後は、「この人が今日ここにたどり着くまでに、どれだけ大変だったんだろう。それでも自分で電車に乗ることを選んでいるのはすごいことだ」と思えるようになった、と。

あとは、最後は誰しも老いを迎え、人生の最終段階が訪れるということを考える中で、「今こうやって働けていることは大事なんだな」と思ったりする。仕事に対する考え方やモチベーションが変わることもあるんです。

人材開発という視点で見ると、介護について学ぶことが、自分が働く意味を深める研修にもなります。また、介護に直面しても両立できる職場は、例えば子どもに障害があったり、配偶者が重い病気になったりしても働き続けられる職場でもある。介護を通じて、そうした職場のあり方を考えることもできると思います。

テヲトル:では、個人でできる準備としては、何から始めればいいのでしょうか。

川内潤:まずは、親が住む地域の地域包括支援センターを調べてみることだと思います。親が元気なうちから相談しても構いません。実家が離れていて直接行くのが大変な場合なら、電話でもいいと思うんです。

「親は元気なのに地域包括支援センターに電話なんかしていいんですか」とよく聞かれます。でも、相談していいんです。地域包括支援センターは、元気な高齢者が要介護状態になるのを防いだり、健康な期間を延ばしたりすることも役割の一つです。「いざ介護が必要になったら、この地域ではどういうふうにサポートしているのですか」と聞けば、一通り教えてもらえます。

それを一度やっておけば、いざ介護に直面したときに、「地域包括支援センター」がパッと頭に思い浮かぶようになります。親の今後をきっかけに福祉との接点を持っておくこと自体が、一つの準備になると思います。

テヲトル:最後に、介護休暇や介護休業を利用する上で、最も大切にしてほしいことは何でしょうか。

川内潤:制度を使うこと自体を目的にしないことだと思います。大切なのは、自分のキャリアや親子関係も含めて、本当にその選択が親のためになるのかを考えることです。

良い介護かどうかは、どれだけ自分を犠牲にしたか、どれだけ頑張ったかで決まるものではありません。「両立」というと、仕事も介護も120%の力で頑張るようなイメージがあるかもしれません。でも、それは両立ではないと思うんです。

自分の人生も親の人生も大事にできていることが、本質的な両立ではないでしょうか。

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この記事の補足情報

参考文献

  1. 1.

    厚生労働省:介護休暇. 介護休業制度特設サイト.[https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/shorttime-leave/](最終閲覧日:2026年9月8日)

  2. 2.

    厚生労働省:介護休業. 介護休業制度特設サイト.[https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/](最終閲覧日:2026年9月8日)

  3. 3.

    厚生労働省:よくあるお問い合わせ〜事業者の方へ〜[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/otoiawase_jigyousya.html](最終閲覧日:2026年9月8日)

  4. 4.

    公益財団法人生命保険文化センター:2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査. [http://jili.or.jp/research/report/9849.html](最終閲覧日:2026年9月8日)

  5. 5.

    NPO法人となりのかいご:介護離職白書2026.(最終閲覧日:2026年9月8日)

  6. 6.

    厚生労働省:法改正のポイント. 介護休業制度特設サイト[https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/](最終閲覧日:2026年9月8日)

著者情報

  • PROFILE/ プロフィール

    川内 潤

    NPO法人となりのかいご代表理事 社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士。 1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業。 老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、社会福祉法人一廣会かないばら苑(川崎市麻生区)などでの在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。 2014年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。 厚生労働省「令和2年度仕事と介護の両立支援カリキュラム事業」委員、育児・介護休業法改正では国会に参考人として出席。 家族介護による介護離職や高齢者虐待をなくし、誰もが自然に家族の介護に関わることのできる社会の実現を目指し活動している。 NPO法人となりのかいご公式ホームページ:https://www.tonarino-kaigo.org/

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