日本の労働力人口に占める65歳以上の割合は2024年時点で13.6%に達しています1。
また、厚生労働省の2024年の高年齢者雇用状況等報告では、 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施している企業は全体の31.9%となりました2。
企業の人手不足が深刻になるなかで高齢者(シニア)の雇用が広がり、意欲のある高齢者が働き続けられるよう後押ししたいという企業も増えてきています。
この記事では、70代の高齢者に適した仕事の例や、高齢者が得意・不得意とする業務について解説します。
70代の高齢者が仕事を選ぶ前に知っておきたい得意と不得意
70代の高齢者が安全に仕事をするためには、加齢に伴う身体・認知機能の変化に対する正しい理解が大切です。どのような得意・不得意があるのかをみていきましょう。
現役世代よりも衰えがちなスキルや能力
もちろん個人差はありますが、70代が現役世代と比較して低下しがちなスキルや能力は、以下のようなものがあります3〜5。
- ・筋力
・疲労からの回復力
・作業情報の分析と判断能力
・視覚や聴覚などの情報を認識し、思考や判断を経て即座に行動に移すこと(自動車の運転など)
複雑なマルチタスクや秒単位の判断を要する業務において、高齢者はミスを発生させやすい可能性がありますが、環境整備や周囲のフォロー体制が整っていれば70代の高齢者でも働けないわけではありません。
現役世代と同等もしくは高くなっているスキルや能力
70代が現役世代と比較して、衰えが少ないスキルや能力は以下のようなものが挙げられます3。
- ・手の指先を使う作業(手先の筋力低下は最も遅いため)
・訓練によって得た知能・技能
・経験と技能の蓄積によって得られた熟練した作業
加齢に伴う身体・精神機能の状況には個人差があります。体力や経験とを照らし合わせた仕事を提案することが望まれます。高齢者が持つ強みは、長年にわたって培ってきた知識や経験、技術や技能6です。また、中年期以降になると職業に対する「やりがい」や「満足度」は高まる傾向があるそうです4。
70代の高齢者に適した仕事・職種の例
70代の高齢者には、上記のような得意・不得意な分野があるほかに、親兄弟や配偶者の介護などのライフイベントなどがあります。
70代の高齢者にはこのようなシニア世代のワークライフバランスを考慮した仕事を提案しましょう。
技能伝承の担い手に
下記の表は、70歳までの雇用推進に関して、高齢・障害・求職者雇用支援機構が発行している「高齢社員戦力化のためのヒント集」で紹介されている「高齢社員が持つ強みをどのように活用すればよいか?」という内容をまとめたものです。
個人差の大きい70代の高齢者においても、応用できる内容が含まれています。
<高齢社員の強みを活かした働き方>
(文献6より許可を得て掲載)
活躍できる場をつくる
下記の表も「高齢社員戦力化のためのヒント集」で紹介されている内容です。高齢者であることも特性の1つとして、仕事に活かせる内容が含まれています。
<高齢社員が活躍できる働き方>
(文献6より許可を得て掲載)
70代の高齢者には負担が大きい仕事・職種
以下のような仕事は70代以上の高齢者にとって負担が大きく、危険性が高い可能性があります。また、70代以上の方には学習負荷が高いデジタル業務も不向きな可能性があります。
- ・建設現場の高所作業
・工場での重機や機械を使った作業
・重量鉄骨の運搬
・猛暑の舗装工事
・零下倉庫での仕分け
・タクシーやスクールバスなどの運転
70代高齢者とのコミュニケーション方法
70代の方と働く際は、経験への敬意を示す・身体特性を理解する・情報を共有する・互いに傾聴することがポイントです。適切なコミュニケーションがあれば世代差は武器になります。
具体的にどのような点を意識してコミュニケーションを取るべきか、4つのポイントを紹介します。
経験やスキルへの尊敬を忘れない
70代の方が役職を持っている場合は役職名で呼び、成果を可視化して感謝を伝えましょう。
たとえば「○○さんの段取りで作業時間が1時間短縮できました」と具体的に称えると、相手の自己肯定感が高まります。
さらに月例会でベテランの成功事例を共有し、社内報でインタビュー記事を掲載すると、本人のやりがいと周囲の学びが同時に連動しやすいです。
オープンクエスチョンとクローズクエスチョンをうまく使いわける
最初に「改善案はどう思いますか?」と自由回答を促し、経験に根ざした知恵を引き出します。
次に「ではA案で進めても良いでしょうか」と選択肢を提示して決定しましょう。
質問の仕方を分ければ意見を言いやすい雰囲気を保ちつつ、意思決定が円滑になります。
仕事上の指示はテキストと口頭で説明したうえでテキストでも共有する
年齢とともに記憶力に差が出るため、仕事の指示は口頭だけでなくテキストでも伝えるのが理想です。
メモを取る時間を設けたり、箇条書きでわかりやすくまとめると、聴力や記憶力の個人差を補えます。
説明のあとに、手順をメールやチャットで送る、説明に使ったメモを渡すなどの補足をしましょう。画像や図を使えば理解しやすくなり、再確認の手間も減ります。
管理側は定期的に面談の機会を設ける
継続的なフォローアップやヒアリングは、業務のスムーズな遂行だけでなく、モチベーションの維持にもつながります。
定期的な面談で悩みや体調なども含めたヒアリングをすれば、信頼関係が深まりやすくなります。管理者は高齢社員に対し、月1回を目安に面談を行うことをおすすめします。
早期に課題を共有すれば、配置転換や業務調整がスムーズに進みます。
70代高齢者を受け入れるメンバーに伝えておくべきこと
世代によって仕事のやり方や考え方に違いが出る場合があります。お互いを理解し合い、しっかり話すことが大切です。若手には「高齢者の強み」や「配慮すべき点」を伝えた上で、質問しやすい雰囲気作りを意識しましょう。
一方、高齢者には「新しいツールに挑戦する気持ち」を持ってもらうと、チームがうまく回りやすくなります。また、話し方のスピードや敬語、資料の形をそろえるなど、マナーを事前に共有しておくと、誤解が減りやすいです。
同じ目標を持つ仲間として協力できる環境づくりが、働きやすい職場につながります。
まとめ
70代の高齢者と仕事をする上で、事前に知っておきたいポイントを解説しました。
現役世代と比べると体力や記憶力の衰えはありますが、今までの経験を活かした業務に取り組めるのは高齢者ならではの強みです。
高齢者一人ひとりに合った働き方を提案し、高齢者や企業、世の中にとって新しい可能性となるように、一歩を踏み出してみませんか。