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理学療法士が伝授!正しい歩き方の4つのポイントとトレーニング方法
更新日:2025-01-29

理学療法士が伝授!正しい歩き方の4つのポイントとトレーニング方法

理学療法士が伝授!正しい歩き方の4つのポイントとトレーニング方法

健康のために、ウォーキングを実践している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、間違った歩き方でウォーキングをつづけていると、関節や筋肉に余分な負荷がかかる恐れがあります。

では、正しい歩き方で歩行するには、どのような点を意識すればいいのでしょうか。

この記事では、正しく歩くためのポイントや正しい歩き方をすることのメリットを解説します。また、記事の後半では歩行に効果的なトレーニングを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

正しい歩き方で歩くための4つのポイント

正しい歩き方で歩くためには、以下の4つのポイントを押さえましょう。

  • 「正しい姿勢」を意識する
  • かかとから地面につける
  • 足を振り出すときはつま先で地面を蹴る
  • 歩幅を適度に広げる

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

1. 「正しい姿勢」を意識する

1つ目は、「正しい姿勢」を意識することです。

まず歩く前の立ち姿勢では、背筋をまっすぐにしつつ、顎を引きましょう。

重心は前後左右に偏らないようにして、身体の中心に位置するように心がけることが重要です1

歩く際は姿勢を保ったまま歩き、上半身や骨盤が左右にぐらつかないように注意しましょう。正しい姿勢を意識することで、スムーズな歩行につながります。

2.かかとから地面に着地する

2つ目は、かかとから地面に着地することです。

かかとから着地することで重心が前方向にスムーズに移動し、反対の足を振り出しやすくなります。また、着地時の衝撃が分散され、身体にかかる負担が軽減できるでしょう2

反対に、つま先や足の裏全体で着地すると重心が前方に移動しにくくなり、ぎこちない歩行となる恐れがあるのです。正しい歩き方を実践する際は、かかとから地面につけることを意識してみてください。


3.足を振り出すときはつま先で地面を蹴る

3つ目は、足の振り出しの際はつま先で地面を蹴ることです。つま先で地面を蹴ることで足を振り出しやすくなり、スムーズな歩行につながります。

つま先での蹴り出しが弱いと、足を振り出す際に地面に引っかかりやすくなり、転倒のリスクも高くなります3

また、足をがんばって振り出そうとして、必要以上に下半身の筋肉を使うことにもなるでしょう。そのため、歩行時は意識的につま先で地面を蹴り出すことを心がけてみてください。

4.歩幅を適度に広げる

4つ目は、歩幅を適度に広げることです。歩行時の歩幅は、「身長(cm) ー 100cm」が目安です4

たとえば、身長が160cmの方であれば、60cm前後の歩幅が理想といえるでしょう。

歩幅が狭くなると歩行時のバランスが低下して、転倒を引き起こす恐れがあります。普段から適度に歩幅を広げて歩くことを意識してみてください。

正しい歩き方をするためには準備も大切

正しい歩き方をするためには、準備も重要です。

ストレッチをして筋肉の柔軟性を高める

まず、歩行前にストレッチで筋肉をほぐすことが大切です。筋肉が硬くなった状態で歩くと、足が動かしにくくなり、ぎこちない歩行になる恐れがあります。

特に重要なのが、ふくらはぎや太ももなどの筋肉のストレッチです。これらは歩行するうえで重要な筋肉なので、しっかりとほぐしておきましょう。

具体的なストレッチ方法は、以下のとおりです。

・足を後ろに引いてアキレス腱を伸ばす(ふくらはぎのストレッチ)

・ 片手で片足を持ち、膝を曲げてかかとをお尻に近づける(太もも前面のストレッチ)

・座った状態で片足を伸ばして、その足に向かって身体を傾ける(太もも後面のストレッチ)

・上半身を左右にひねる(体幹筋のストレッチ)

歩きやすい靴を選ぶ

正しい歩き方を実践するには、足にあった靴選びも重要です。歩きやすい靴を選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。

 ・つま先に余裕を持たせる

 ・クッション性が高い

 ・足のサイズに適している

 ・つま先が上がっている

特にウォーキングシューズやスニーカーは、上記のような機能が備わっている傾向にあります。快適に歩行できる靴を履いて、正しい歩き方を実践してみましょう。

正しい歩き方で歩くメリット

正しい歩き方で歩くことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットについて解説します。

身体の不調が起こりにくくなる

正しい歩き方が実践できると、身体の不調の予防につながります。姿勢が崩れた状態で歩くと、特定の筋肉に過度な負荷がかかってしまいます。

たとえば、猫背のような前かがみの姿勢で歩くと、背中の筋肉に負荷が集中して肩こりの原因となるでしょう5

また、足のつき方や蹴り出し方が悪いと、関節や筋肉に余分な負荷がかかる可能性もあります。正しい歩き方ができていれば、全身の筋肉にバランスよく負荷がかかりやすくなります。

特定の部位への負担が軽減されれば、肩こりや腰痛などの身体の不調が起こりにくくなるでしょう。

全体的な筋力の維持・強化につながる

正しい歩き方を意識することは、筋力の維持・強化に役立ちます。正しい歩き方を心がけることで、体幹や下半身などの筋肉にバランスよく刺激を与えられます。

一方、間違った歩き方をしてしまうと、スムーズな歩行ができず、本来使うべき筋肉がうまく働かなくなる恐れがあります2普段の歩行を見直して、効率的な筋力アップを目指しましょう。

認知症の対策になる

正しい歩き方を身につけることは、認知症の対策にもつながるとされています。

ウォーキングをはじめとした運動は、認知機能の維持に関連しているという報告があります6

正しい歩き方を意識することで、歩行時の安定性の増加につながるでしょう。安定した歩行ができれば日常生活での活動量が増えやすくなり、認知症予防(※)の効果が高まる可能性があります。

認知症の対策をするためにも、正しい歩き方を意識した歩行を取り入れることをおすすめします。

※認知症の予防への取組における「予防」の意味は、認知症にならないということではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするということを意味しています。

正しい歩き方をするためのトレーニング

正しい歩き方をするには、体幹や下半身の筋肉をつけることが大切です。そのためには、どのようなトレーニングをすればいいのでしょうか。ここでは、歩行におすすめのトレーニングについてご紹介します。

今回紹介するトレーニングはリハビリの現場でも実践することがあり、どの種目も自宅で気軽に行えます。

トレーニングをはじめる際は、最初は回数を少なめにする、1日1種目からはじめるなど、無理のない範囲でつづけてみましょう。

スクワット

スクワットは、下半身全体を鍛えられるトレーニングです。下半身全体を鍛えることで、安定した歩行につながります。

スクワットのやり方

  • 立った状態で足を肩幅程度に開く
  • 両足を前に向ける
  • 姿勢をまっすぐにして、ゆっくり膝を曲げる
  • 膝を90度ほど曲げたら、ゆっくりともとに戻る
  • 3〜4の手順を20回×2〜3セット行う

運動中は、膝がつま先よりも前に出ないようにしましょう。バランスが崩れやすい方は、手すりやイスにつかまって行ってみてください。

かかと上げ

かかと上げは、ふくらはぎの筋肉である「下腿三頭筋」を鍛えるトレーニングです。下腿三頭筋は、蹴り出しの際に活用する筋肉です。

かかと上げのやり方

  • 手すりや壁、イスなどの前に立つ
  • 姿勢をまっすぐにする
  • 両方のかかとを上げてつま先立ちになる
  • できるだけ上げたら、ゆっくりと下ろす
  • 3〜4の手順を15〜20回×2〜3セット行う

横歩き

横歩きは、骨盤の横についている筋肉である「中殿筋」を鍛えるトレーニングです。中殿筋を鍛えることで、骨盤の左右のブレ予防につながります7

横歩きのやり方

  • 壁や横手すり、机などの前に立つ
  • 姿勢をまっすぐにして両足を前に向ける
  • 足を前に向けながら横歩きをする
  • 休憩を挟みつつ、横歩きを左右で行う

ゴムバンドを両足に巻いて行うことで、さらに中殿筋に効かせやすくなります。

バードドッグ

バードドッグとは、四つ這いの状態で手足を動かす体幹トレーニングです。歩行時の安定性を高めるためには、体幹筋を鍛えることも重要です。

バードドッグのやり方

  • 四つ這いになる
  • 右手を前に、左足を後ろ方向に伸ばす
  • 5〜10秒ほど伸ばした状態をキープする
  • もとに戻り、反対の手足で行う
  • それぞれ2〜3セット行う

伸ばした手足が下がらないように、まっすぐの状態を意識して力を入れてみましょう。

正しい歩き方を意識してみましょう

正しい歩き方のポイントとして、「正しい姿勢を意識する」「かかとから地面につく」「足の振り出しはつま先で蹴る」「歩幅を広げる」の4点があげられます。正しい歩き方を習慣づけることで、身体の不調の予防や認知症の対策につながることが期待できます。

また正しい歩き方を定着させるためには、トレーニングで体幹や下半身の筋力をつけることも大切です。ぜひ今回の記事を参考にして、実践してみてください。

(参考文献)
1, 竹井仁. 姿勢の評価と治療アプローチ. 脊髄外科. 2013;27(2):119-124.
2, 江原義宏. 歩行分析の基礎 ー正常歩行と異常歩行ー. 日本義肢装具学会誌. 2012;28(1):57-61.
3, 中嶋香奈子,他: 歩行時の足底圧に着目した中高年転倒経験者の特徴評価. 日本転倒予防学会誌. 2019;5(3):43-53.
4, 森耕平,他: 地域在住女性高齢者における歩幅と身体機能との関連:「身長-100cm」を基準歩幅とした検討. ヘルスプロモーション理学療法研究. 2024;13(3):111-16.
5, 佐々木和郎. 肩こりの定義およびメカニズム. 全日鍼灸会誌. 1994;44(4):361-63.
6, 長屋政博. 認知症に対する運動および身体活動の効果. リハビリテーション医学 / 日本リハビリテーション医学会. 2010;47(9):637-45.
7, 金承革,他: 中殿筋の肉眼解剖学的構造と歩行における機能. バイオメカニズム. 2020;25(0):151-65.

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