成長ホルモンと聞くと、「子どもの身長を伸ばすホルモン」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。でも実は、大人にとっても大切な働きを持っています。
筋肉を保つこと、脂肪をエネルギーとして使うこと、疲労から回復すること、これらすべてに成長ホルモンが関わっているのです。
この記事では、成長ホルモンが私たちの体でどんな役割を果たしているのか、分泌に関わる生活習慣にはどんなものがあるのか、日々の生活で気をつけたいポイントは何かを、わかりやすくお伝えします。
成長ホルモンが分泌されるメカニズム
成長ホルモンは、脳の奥にある下垂体という小さな器官から分泌されるホルモンです。
子どもの体の発育を促すことで広く知られていますが、成長期が終わった後も少量ながら分泌が続き、大人の体においても重要な働きを担っています。
成長ホルモンが不足すると、内臓脂肪が増えやすくなったり、記憶力や認知機能が低下しやすくなったりすることがわかっています1。
この成長ホルモンが、どこでどのように分泌されるのか、くわしくみてみましょう。
成長ホルモンは脳下垂体から分泌される
成長ホルモンは、脳の奥にある下垂体という器官から分泌されます。
この下垂体の上にある視床下部と呼ばれる領域から、下垂体に向けて「成長ホルモン放出ホルモン」が分泌されると、下垂体は成長ホルモンを分泌し、標的となる細胞や臓器に作用します2。
反対に、同じく視床下部から分泌されるソマトスタチンは、成長ホルモンの分泌を抑制する働きを持つホルモンです2。
これらのホルモンによって、成長ホルモンの分泌量が調節されているのです。
成長ホルモンは睡眠中に分泌量が増加する
成長ホルモンは一日中ずっと一定量が出ているわけではなく、波のように1日に数回ピークを迎えます。
その中でも最も大きなピークが訪れるのは、眠りに入った後の最初の深いノンレム睡眠(徐波睡眠)のときです2。
深い睡眠の量と成長ホルモンの分泌量には直線的な関係があり、深く眠るほど分泌量も増える傾向があります3。寝る子は育つという言葉がありますが、子どもにかぎらず、大人にとっても質の良い睡眠は欠かせません。
また、運動をしたとき、ストレスを感じたとき、血糖値が下がったときにも分泌は促されます4。逆に、血糖値が高い状態が続いたり、食事を取りすぎたりすると分泌は抑えられてしまいます4。
成長ホルモンは年齢で分泌量が変化する
成長ホルモンの分泌量は、人生の中で大きく変わっていきます。成長ホルモンの分泌は思春期ごろにピークを迎え、その後は年齢とともに減少していきます2,5。
その減少スピードは10年ごとに14%ずつ減っていくとされており、60代では20代と比べて分泌量が30%程度にまで落ち込むという報告もあります2。
こうした成長ホルモンの減少は誰にでも起こる自然な変化なのですが、筋肉量が減る、体脂肪が増える、体力や記憶力が落ちるといった老化のサインと重なってきます1。
年のせいかなと感じる身体の変化の一部は、成長ホルモンの減少も関係しているかもしれません。
なお、脳の病気などで若い年齢から極端に成長ホルモンが不足する場合は、自然な加齢とは別の問題で、治療が必要になることがあります。
成長ホルモンの主な働き・役割
成長ホルモンには、子どもにおける成長だけでなく、大人にとっても大切な役割がいくつもあります。
成長ホルモンが体の中でどんな働きをしているのか、詳しく見ていきましょう。
成長期の身体の成長と成人期以降の骨量の維持
成長ホルモンは、お腹の中にいる頃から子どもの時期にかけて、全身の組織に働きかけて成長を支え、特に骨に作用して身体の成長や維持に関わっています1,6,7。
成長ホルモンが骨を伸ばす仕組みには、ホルモンが「直接働きかけるルート」と「肝臓を介して間接的に働きかけるルート」の2つがあります8。
1つ目は、成長ホルモンは骨の両端にある成長板に作用することで骨の成長に作用するルートです。
成長板は軟骨でできた層で、これから骨になっていく軟骨のもとになる細胞が並んでいます5。成長ホルモンはこの成長板に直接届いて、軟骨のもとになる細胞の働きを活性化します。
このとき、成長板内ではIGF-1(インスリン様成長因子1)を作らせ、このIGF-1の働きによって軟骨の細胞が増えるとともに、サイズも大きくなります2。
2つ目のルートでは、成長ホルモンが肝臓に働きかけることでIGF-1の産生を調整し、IGF-1がさらに骨の発育を後押しすることで、間接的にも成長を支えています9。
このように、成長ホルモンは、直接的にも間接的にも骨の発育を支えているのです。
思春期には成長ホルモンは性ホルモンと協調して、こうした成長板での働きが特に活発になります。思春期が終わる頃には成長板の軟骨はすべて骨に置き換わっていき、骨が長く伸びる働きはそこで止まります10。
これ以降は身長が伸びることはなく、成長ホルモンの役割は体の発育から、体を維持・調節する働きへと移っていきます。
大人になると骨の長さそのものは伸びませんが、成長ホルモンはIGF-1とともに骨を作る細胞の働きを高め、骨の量を保つことに関わっています。
子どもの頃に成長ホルモンが極端に不足すると低身長の原因となり、逆に過剰に分泌されると身長が異常に高くなる巨人症を引き起こすことがあります8,11。
疲労回復・免疫力の向上
成長ホルモンとIGF-1には、組織を修復する働きがあります。筋肉や腱、皮膚などの組織は、コラーゲンと呼ばれる線維で支えられています。
このコラーゲンはケガをしたあとの治りや、日々の組織の入れ替わりに欠かせない材料ですが12、健康な人に成長ホルモンを投与した研究では、14日間で筋肉と腱でのコラーゲンを作る働きが数倍にまで高まったことが報告されています12。
さらに成長ホルモンは筋肉のタンパク質を作る働きも高めています13。組織を作り直し、ダメージを修復するこうした働きが、疲労回復を支える土台にもなっています。
また、成長ホルモンは免疫の働きにも関わっていると考えられています。免疫を担う細胞には成長ホルモンを受け取るしくみが備わっていて、成長ホルモンの刺激に応じて働き方を変えることがわかっています9。
動物を使った研究を中心に、成長ホルモンによってウイルスや細菌と戦う細胞が増えたり、体を守るための抗体を作る働きが高まったりすることが報告されています9。
脂肪燃焼
成長ホルモンには、体のエネルギーの使い方をコントロールする働きがあります。
特に重要な働きとして、体内での脂肪分解を促すことがあげられ、これにより内臓脂肪の蓄積が抑えられます14。
また、空腹や絶食といった栄養が不足する状況では、脂肪を分解して得られたエネルギーを優先的に使うことで、筋肉のタンパク質を温存する方向にも働きます14。
肌のターンオーバー促進
成長ホルモンとIGF-1は、肌の健康を保つうえでも重要な役割を担っています。
成長ホルモンは皮膚の真皮でハリや弾力を支えているコラーゲンを作る働きを高めることが知られており、IGF-1は肌の細胞の増殖や移動を後押しすることがわかっています15。
表皮では古い細胞が新しい細胞に入れ替わるターンオーバーが日々行われていますが、こうした成長ホルモンのはたらきが下支えしていると考えられています。
精神の安定・認知機能の向上
成長ホルモンは脳にも作用し、気分や頭の働きにも影響していると考えられています。
脳の中には成長ホルモンを受け取るしくみがあり、特に学習や記憶に関わる部分にあることが知られています16。
成長ホルモンはこうした場所に働きかけて、脳の細胞同士が情報をやりとりするつながりを調節していると考えられており、これが記憶力や考える力にも関わっている可能性が示されています16。
実際、IGF-1の血液中の濃度が高い人ほど、年齢を重ねても考える力や判断する力の検査成績が保たれているという報告もあり、成長ホルモンは頭の働きを支える要素のひとつであることが示唆されています1。
成長ホルモンの分泌バランスが乱れたときの影響
成長ホルモンが必要な量よりも不足してしまうと、体にはどんな変化が現れるのでしょうか。
加齢によって誰でも成長ホルモンは減っていきますが、病気で極端に不足する場合には、より明らかな症状として現れてきます。
身体的な疲労感や精神的な落ち込み・不安
成長ホルモンが不足すると、まず感じやすいのが疲労感です。
夜しっかり寝ているはずなのに朝起きても疲れが残っている、ちょっとしたことで疲れてしまう、こうした症状に心当たりはないでしょうか。
成長ホルモンが大きく不足している人は、疲れがとれない、力が湧かない、気分が落ち込む、不安を感じやすい、集中できないといった症状を抱えていることが多くあります9。
生活全般のハリが失われ、日常生活の質が下がってしまうことも報告されており、こうした症状は成長ホルモンを補う治療によって改善することがあります18。
体脂肪の増加・筋力低下
成長ホルモンには脂肪を分解する働きがあるため、分泌が低下するとコレステロールの増加や内臓脂肪の蓄積、筋力低下といった変化が現れます14,9。
成長ホルモン不足の患者さんでは、見た目は太っていなくても内臓脂肪が健康な人より多いことがわかっています9。
また、脂質を処理する働きも落ちるため、コレステロール値が上がりやすくなります19。その結果、脂質異常や心臓・血管の病気のリスクが高まることが知られています19。
ただし、加齢に伴う一般的な体重増加は、主に基礎代謝の低下や活動量の減少によるもので、必ずしも成長ホルモンの減少が主な原因とは限りません。
老化の進行・骨密度の低下
加齢に伴う成長ホルモンの減少は誰にでも起こりますが、病気で極端に不足した状態では、筋力の低下、体脂肪の増加、骨密度の低下といった変化が、若い年齢から目立ってくることがあります9。
気分の落ち込みや不安、集中力の低下、人付き合いから遠ざかるといった精神面への影響も知られています9。
実際、加齢で見られる体つきの変化や代謝の異常は、成長ホルモンが不足する病気の症状とよく似ていることが指摘されています2。
血糖値の上昇やむくみ
成長ホルモンはインスリンという血糖値を下げるホルモンの働きを妨げる方向にも作用するため、結果として血糖値は上がりやすくなります4。
また、腎臓に作用して塩分や水分を体にためこませる働きもあり、この作用が過剰だとむくみの原因にもなります4。
成長ホルモンの分泌異常と治療法
成長ホルモンの分泌が多すぎたり少なすぎたりする場合、さまざまな症状を引き起こすため、治療が必要となることがあります。
成人成長ホルモン分泌不全症
成長ホルモンの分泌不全は子どもがなる場合がよく知られていますが、大人も発症することがあります。
主な原因と自覚症状については下表のとおりです。
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主な原因 |
主な自覚症状 |
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|---|---|---|
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成長ホルモン分泌不全症 |
・重症の成長ホルモン分泌不全性低身長症の既往 ・下垂体腫瘍などの脳の病気 ・脳への手術歴(事故や脳の病気など) ・出生時のトラブル(逆子や仮死など) ・小児がん経験者 ・頭部への放射線治療 ・遺伝性疾患 |
・疲れやすい ・スタミナの低下 ・集中力の低下 ・気分の落ち込み ・性欲の低下 ・肌トラブル(乾燥や肌やせ) |
(文献20を参考に編集部作成)
症状としては、慢性的な疲労感、筋力の低下、内臓脂肪の増加、気分の落ち込みなど多岐にわたります17,20。
放っておくとメタボリックシンドロームや糖尿病、骨粗しょう症といった病気を一緒に起こしやすく、生活習慣病のリスクとなります17,19。
そのため、成長ホルモンが不足している場合には適切にホルモンを補う治療が重要です21。
治療では、成長ホルモン自己注射を行います。少量から始めて、検査値や症状の改善を見ながら、適切な量に調整していきます。
適切な量で使えば副作用は少なく、体つきの改善が期待できます。副作用としてはむくみ、関節痛、血糖値の上昇などの副作用が出る可能性があり21、定期的な通院が必要になります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症
「成長ホルモン分泌不全性低身長症」は病名のとおり、子どもの身長が伸びないのが主な症状です22。
生まれたときは正常でも、幼児期以降に身長の伸びが鈍り、年齢平均よりかなり低い身長になっていきます。原因としては、下垂体の発達が生まれつき良くないことや、下垂体の腫瘍による影響が挙げられますが、ほとんどが原因不明です22。
治療には成長ホルモンの定期的な注射が有効で、適切に治療を行えば成長の速度が改善し、最終的な身長も大きく伸ばすことができます8。
成長ホルモン治療は公的助成の対象となっており、多くの子どもが経済的な負担を抑えて治療を受けられる環境が整っています。
成長ホルモン分泌亢進症(巨人症・先端巨大症)
成長ホルモンが過剰に分泌される病気は、発症する年齢によって症状の出方が変わります。
骨が伸びる部分(成長板)が閉じる前、つまり成長期に発症した場合は巨人症と呼ばれ、異常に背が高くなり、体全体が過剰に成長するのが特徴です11。
一方、思春期以降の大人で発症した場合は先端巨大症と呼ばれます。すでに身長は伸びないので、代わりに手足や額・顎といった体の末端や顔つきが少しずつ大きく変化していきます4。
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見た目の変化 |
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|---|---|
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巨人症 |
年間成長速度が標準値の2倍以上の著明な身長の増加(両親の身長や時代の平均値も参考に判断される) |
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先端巨大症 |
・手足の容積が大きい ・特有の顔つき(まゆ部分のふくらみが大きい、鼻・くちびるの肥大、下あごが出る) ・巨大な舌 |
(文献23を参考に編集部作成)
また、その他の症状として発汗が多い、頭痛、視力や視野の障害、月経の異常、睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が止まることを繰り返す病気)血糖の異常、高血圧などがあります23。
成長ホルモンが過剰になる病気のほとんどは、脳の下垂体にできた良性の腫瘍が原因です4。
治療は、腫瘍を手術で取り除くことが第一選択で、手術によって成長ホルモンの分泌が正常になれば、症状の進行は止まります。
手術で取り切れなかった場合や、手術前に状態を改善しておきたい場合には、薬による治療が行われます4。
成長ホルモンの分泌を促す・ホルモンバランスを整えるポイント
成長ホルモンの分泌量は、日々の生活習慣と深く関わっています。どのような生活を送ればいいのか、ホルモンバランスを整えるポイントをご紹介します。
良質な睡眠がホルモンの分泌量を増やす
最も重要なのは睡眠です。
ただし、長く寝ればいいというわけではなく、深く眠れているかどうかが鍵になります。成長ホルモンは主に夜間の睡眠中、特に眠りに入った後の最初の深い睡眠のときに大量に分泌されます2。
深く眠れるほど分泌量も多くなるため、寝つきが悪かったり睡眠時間が短すぎたりすると、それだけピークも小さくなってしまいます3。
寝る前のお酒には特に注意が必要です。
過剰な飲酒で成長ホルモンの分泌が低下することが報告されており、寝つきは良くなったように感じても、夜の分泌は損なわれてしまいます24。
寝る前のカフェインの摂取やスマートフォンの使用も睡眠の質を下げる原因になります。
適度な運動・筋トレが成長ホルモンの分泌を促す
運動は、睡眠と並んで成長ホルモンの分泌を強く促すとされています25。
息が上がるくらいの短時間の運動でも成長ホルモンの分泌は大きく増えることが知られており、日頃から運動を続けていると、1日全体の分泌量が増える可能性も報告されています25。
短時間の高強度運動と休息を交互に繰り返す「HIIT(高強度インターバルトレーニング)とよばれる運動では、運動後に成長ホルモンが一時的に増加しやすいとされています26。
具体例としては、全力の80%程度のスピードでフィットネスバイクを疲れ切るまで漕ぎ続け、3分間休み、また同じ条件でフィットネスバイクを漕ぐのを繰り返すという方法があります26。
ただ、日ごろ運動不足の人が、いきなり高強度の運動を繰り返すのは身体に思わぬ負担がかかることもあります。まずは、ストレッチやウォーキングなどの有酸素運動から始め、慣れてきたら徐々に強度を上げていくとよいでしょう。
バランスの取れた食生活がホルモンバランスを整える
栄養状態は成長ホルモンの分泌量そのものよりも、成長ホルモンの働き方を変えると考えられています。
十分に食べているときは筋肉などを作る方向に、空腹のときには脂肪を分解する方向に、それぞれ働きやすくなります4。
実際、空腹のときには成長ホルモンの分泌が高まることが報告されており、逆に食事が十分で血糖値が高い状態では分泌が抑えられることが知られています4,27。
そのため、夜遅い時間の食事や、甘いものの食べすぎは避けたいところです。また、太りすぎると成長ホルモンの分泌が落ちやすくなることもわかっています1。
一方でこれを食べれば成長ホルモンが増えるという魔法のような食品やサプリメントはありません。偏りのない、バランスの取れた食事を続けることが何より大切です。
ストレス解消
短時間のストレスは成長ホルモンの分泌をむしろ高めますが、ストレスが長く続くと話は変わります。
慢性的なストレスがかかった状態では、副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンが下垂体での成長ホルモンの分泌を抑え、IGF-1の働きも妨げてしまうことがわかっています28。
さらに強いストレスは睡眠や食欲を乱すことで、間接的にも成長ホルモンの分泌のリズムを崩しがちです。
成長ホルモンの分泌低下を防ぐためにも、ストレスをため込みすぎない工夫が大切です。適度な運動を日常に取り入れたり、趣味の時間を意識的に確保したりして、自分に合った方法でストレスを上手に発散しましょう。
飲酒・喫煙習慣の改善
お酒が好きな方、タバコを吸う方にとっては耳の痛い話かもしれませんが、成長ホルモンの観点からも、過度の飲酒や喫煙は避けたいところです。
お酒は睡眠の質を下げるだけでなく、成長ホルモンの分泌そのものも低下させてしまいます。
過剰なアルコール摂取により血中の成長ホルモン濃度が低下することが報告されており24、毎晩の深酒が続けば、慢性的に成長ホルモンが不足する状態となり、筋肉が減ったり脂肪がつきやすくなったりといった影響が出てくる可能性もあります。
タバコも全身の血の巡りを悪くし、睡眠の質を下げるため、結果として成長ホルモンの分泌リズムにも悪影響を与えると考えられます。
成長ホルモンに関するよくある疑問
最後に、成長ホルモンについてよく聞かれる疑問をQ&A形式で解説します。
成長ホルモンを注射すると身長は伸びる?費用は?
成長期であれば、成長ホルモン注射により身長を伸ばす効果が期待できます。子どもの低身長に対しては治療法が確立しており、早めに適切な治療を行えば、最終的な身長を大きく伸ばすことができます。
一方、骨の成長が完了した大人では、成長ホルモンを補っても身長は変わりません29。
成長ホルモン注射の費用は高額で、子どもの場合、保険適用や公的助成の対象となれば自己負担は大幅に減りますが、それでも年間数十万円程度かかります。加えて、毎日の自己注射が必要で、副作用の管理も重要です30。
身長を伸ばす目的で安易に成長ホルモン注射を試すことは現実的ではなく、費用対効果も見合いません。身長を伸ばすには、思春期までの適切な生活習慣と、必要に応じた医学的な対応が大切です。大人になってから身長を伸ばす方法は、基本的に存在しないと考えましょう。
成長ホルモンが分泌されやすいゴールデンタイムはある?
成長ホルモン分泌のカギは、眠りに入った後、最初の深い睡眠にあります。何時に寝るかによって成長ホルモンが大量に分泌されるタイミングも変わります。
一般的に睡眠のゴールデンタイムとされるのが、午後10時〜午前2時です。成長ホルモンにとっては、その時間帯に眠ることよりも、入眠直後の深い睡眠(ノンレム睡眠)の質が重要となります31。静かな環境でゆったりと眠ることが大切です。
成長期の子どもの場合、夜10時〜11時頃までに寝付けると成長ホルモンの良い影響を十分に受けられると考えられます。大人でも同様に、規則正しい生活と質の高い睡眠が何より大切です。
成長ホルモンの分泌をサポートするサプリメント・栄養素はある?
成長ホルモンの分泌を促すとうたうサプリメントは多く出回っていますが、健康な大人がそうしたサプリで成長ホルモンを実際に増やせるという確かな根拠は乏しいのが実情です。
研究レベルで成長ホルモンを刺激する作用が確かめられている代表は、アミノ酸の一種であるアルギニンです。医療現場でも、成長ホルモンが十分に出るかを調べる検査でアルギニンが使われています。
ただし、サプリメントに含まれる量は子どもの試験に用いる量の1/50~1/5と非常に少ない量です32。そのため、アルギニンのサプリメントを飲んでも、成長ホルモンの分泌が増えることは考えにくいとされています。
まとめ:成長ホルモンは大人にも子どもにも重要!規則正しい生活が大切
成長ホルモンは子どもの身長を伸ばすだけでなく、大人にとっても疲労回復や免疫機能の維持、老化の抑制など、さまざまな効果をもたらします。エネルギーの使い方を調整したり、筋肉や骨を保ったり、疲労から回復したりするためには欠かせない存在です。
成長ホルモンの分泌量は年齢とともに自然に減っていきますが、睡眠、運動、食事、ストレス管理といった日々の生活習慣が、分泌の質と量に大きく影響する可能性が示されています。
質の良い睡眠をとる、体を動かす、食事のバランスを整えるといった今の生活でできそうなことから始めてみましょう。


