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脳と睡眠の関係|必要な睡眠時間や寝不足の影響・安眠のポイントを解説
更新日:2026-05-26

脳と睡眠の関係|必要な睡眠時間や寝不足の影響・安眠のポイントを解説

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青い寝具で左側を下にして寝ている
そのもの忘れ、年齢のせい?それともMCI?

「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」、このような悩みはありませんか。

もしかしたら、普段何気なく行っている習慣が、睡眠の質を下げる原因になっているかもしれません。
睡眠は、単に身体を休めるだけでなく、脳の働きを整えるためにも欠かせないものです。そして、睡眠の質は、生活を少し見直すことで改善できる可能性があります。

この記事では、睡眠と脳の関係や、今日からできる脳によい睡眠習慣について解説します。

脳の活動と睡眠の関係

睡眠は、単に身体を休ませるための時間ではありません。
眠っている間も、脳では記憶の整理や、脳内のメンテナンスなど、さまざまな活動が行われています。

ここでは脳と睡眠の関係や、睡眠中に脳で何が起きているのか、詳しくみていきましょう。

睡眠を司るのは視床下部と脳幹

睡眠は、脳の一部である視床下部(ししょうかぶ)や脳幹(のうかん)によって調節されています1

視床下部と脳幹には、それぞれ睡眠と覚醒を促す神経細胞があります。
また、睡眠と覚醒を促す神経細胞は互いに抑制しあう関係にあります。これらが協調して働くことで、夜に眠くなり、朝に目覚めるというリズムの切り替えがスムーズに行われているのです1

レム睡眠とノンレム睡眠

人の睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠という性質の異なる二つの睡眠で構成されています。これらは、睡眠中に約90分周期で交互に現れます2

レム睡眠のレム(REM)は、英語のRapid Eye Movement(急速眼球運動)の略で、その名のとおり、眠っている間に眼が素早く動くのが特徴です2。ノンレム睡眠と比較すると、脳の活動が比較的活発であり2、夢を見る時間の多くは、レム睡眠とされています1

また、レム睡眠中は、身体の筋肉の緊張が和らぐことから、身体を休める睡眠ともいわれています2

一方、ノンレム睡眠は、大脳を休めるための睡眠といわれており、脳の活動が低下して深い眠りについている状態を指します。また、ノンレム睡眠には深さの異なる段階があり、特に入眠後しばらくは、深いノンレム睡眠が多く現れます2

ノンレム睡眠中は、自律神経系の活動が低下しており、心拍や呼吸、血圧などの変動が小さくなります。朝に近づくにつれてレム睡眠の割合が増えて、これらが大きく変動するようになり、自然な覚醒への準備が進められます1

脳の休息に必要な睡眠時間

一般的に、成人では6時間以上の睡眠がひとつの目安とされており、多くの人にとって6~8時間程度の睡眠が、脳の働きや体調を保ちやすいと考えられています。

ただし、必要な睡眠時間には個人差があります。6時間で十分な人もいれば、8時間以上の睡眠が必要な人もいるのです3

日中に強い眠気が出ないか、集中力を保てているかを目安に、自分に合った睡眠時間を見つけましょう。

脳にとって睡眠が重要な3つの理由

睡眠中、脳では私たちが気づかないところで、さまざまな作業が行われています。
脳にとって睡眠が必要である理由を、3つの視点から見ていきましょう。

情報の整理と記憶の定着

睡眠中、脳ではその日に得た情報を整理し、記憶として定着させるための活動が行われています。
ノンレム睡眠中には、デルタ波や紡錘波(ぼうすいは)という脳波が現れます。このとき、記憶の形成に深く関わる海馬(かいば)で、起きている間に学んだ内容が繰り返し再生され、記憶が定着すると考えられています1

また、レム睡眠中にはシータ波という脳波が現れ、記憶の形成、定着に関与すると考えられています。そのほか、不要な情報の整理にも関係していると考えられています1

老廃物の排出

日中、脳の活動で生じた老廃物は、睡眠中に脳の細胞同士のすき間(細胞外スペース)を通って排出されます1

睡眠中、特にノンレム睡眠中は、この細胞外スペースが広がり、老廃物が流れやすくなります。
また、アルツハイマー型認知症との関連があるアミロイドβ(ベータ)も、睡眠中に効率よく除去されることがわかっており、十分な睡眠は認知機能の維持にとって重要と考えられています1

神経細胞の修復

睡眠は、日中にダメージを受けた神経細胞の修復をするための時間でもあります。
たとえば、睡眠中に分泌されるメラトニンというホルモンには、活性酸素の中和作用があります4
活性酸素は、細胞が錆びたような状態を引き起こし、神経細胞を傷つけます。メラトニンは、ダメージを受けた神経細胞の修復を助け、脳を健やかな状態に保っているのです。

そのほか、同じく睡眠中に分泌される成長ホルモンも細胞を修復する働きがあり5、神経細胞の修復には睡眠が重要であることがわかります。

睡眠は単に身体を休めるだけでなく、記憶の定着や老廃物の除去、神経細胞の修復など、認知機能や脳の健康を保つ上でも重要な時間になっているのです。

睡眠不足が脳に与える影響

睡眠不足が続くと、脳がうまく働かず、仕事や勉強の効率が低下したり、気分が不安定になったり、心身に影響が出てきます。

「集中できない」「イライラすることが増えた」といった変化は、睡眠不足のサインかもしれません。ここでは、睡眠不足と脳の関係についてについて解説します。

集中力や判断力の低下

睡眠不足の状態が続くと、日中に強い眠気が出て、集中力や判断力が低下する可能性があります。

ある研究では、睡眠時間が7時間の場合に比べて、睡眠時間が5時間だと1.9倍、4時間だと4.3倍交通事故の発生リスクが高くなると報告されています6

また、ほかの研究では、短時間睡眠や不眠などの問題を抱えている人は、そうでない人に比べて労働災害に巻き込まれるリスクが1.6倍に上昇することが明らかになりました7

これらの研究は、睡眠の不足が注意力や判断力といった脳の機能低下を招き、日常生活や仕事に悪影響を及ぼすことを示しています。

記憶力や学習能力の低下

脳は睡眠中にその日に得た情報を整理して記憶として定着させています1。そのため、睡眠不足になると、この働きがうまく行われにくくなります。

勉強や仕事で「頭に入らない」「同じことを何度も確認してしまう」と感じる場合、睡眠不足が影響しているかもしれません。

気分の落ち込み

十分に眠れていない状態が続くと、些細なことでイライラしたり、不安を感じたりすることがあります。また、「やる気がでない」「気分が沈む」といった気分の落ち込みを感じる方も少なくありません。

ある研究では、睡眠不足になると、不安や恐怖といった感情に関わる脳の働きが過剰になり、負の感情を抑える働きが弱まることが示されました8

そのため、普段なら気にならないことにも強く反応してしまい、感情のコントロールが難しくなると考えられています。

また、このような状態が続くと、うつ病を発症するリスクが高まることも指摘されています8。気分の落ち込みが続く場合は、単なる疲れと軽く考えず、睡眠の質やリズムを見直してみましょう。

食欲の増進や体重の増加

睡眠不足が続くと、食欲や体重のコントロールが難しくなることが知られています。その理由の一つが、食欲に関わるホルモンのバランスの乱れです。

睡眠不足になると、食欲を抑える働きをもつレプチンというホルモンの分泌が減少し、反対に食欲を高めるグレリンの分泌が増加します9

その結果、十分な量の食事をとっていても空腹感が続き、間食や食べ過ぎにつながるのです。

今日からできる脳によい睡眠習慣

脳によい睡眠習慣は、日々の生活習慣を整えることで作られます。ここでは、今日から無理なく取り入れられる方法を紹介します。

睡眠時間を一定にする

まずは、起きる時間と寝る時間をできるだけ一定にしてみましょう。

脳の視床下部には、体内時計と呼ばれる仕組みがあります。体内時計は、ホルモンの分泌や体温の変化などが約24時間のリズムになるように整えています10

体内時計の周期は、24時間より少し長く、毎日同じ時刻に起きて光を浴びることで、ずれが調整されます11

そのため、日によって睡眠時間が大きく変わると、体内時計に乱れが生じて、眠りが浅くなったり、朝目覚めにくくなったりする原因になるのです。

休日に寝だめはなるべく避け、できるだけ睡眠時間を一定にするよう心がけましょう。

就寝前2時間は食べ物を口にしない

食事は、就寝の2時間前には終えるようにしましょう12

寝る直前に食事をとってしまうと、体内時計を後退させて、翌朝のしっかり休めた感じや睡眠の質を下げます。

また、朝の欠食も同様に、体内時計を後退させて寝付きが悪くなり、睡眠不足につながります3

朝はしっかりと食事をとり、夜遅い食事や夜間の間食をできるだけ控えることが大切です。

夕方以降はカフェインを避ける

夕方以降にカフェインを摂取すると、睡眠に影響が出る可能性があります。
また、摂取する時間だけでなく、1日の総摂取量を減らすことも重要です。カフェインを代謝する時間は個人差があるため、たとえ朝の9時に摂取したとしても、摂取量が多ければ、夕方まで影響が出てしまう場合があるのです3

カフェインの影響が出やすいと感じる方は、特に就寝の5~6時間前11からは麦茶やトウモロコシ茶、ハーブティーなど、カフェインを含まない飲み物に置き換えるとよいでしょう3

アルコールを飲みすぎない

寝つきをよくするために、お酒を飲む方もいるかもしれません。
確かに、アルコールを摂取すると、睡眠の前半では一時的に深い眠りを増やすことがあります。しかし、睡眠の後半になると眠りが浅くなり、中途覚醒が増えてしまいます3。そのため、結果的に睡眠の質が低下してしまいます。

また、中途覚醒は飲酒量が増えるほど起こりやすくなります。加えて、お酒を飲むと顔が赤くなりやすい人はアルコールの分解が苦手な体質であることが多く、少量の飲酒でも睡眠に影響を受けてしまいます3

寝る前にスマホやパソコンを見ない

眠る前にSNSやメールを確認する習慣は、睡眠の質を下げる原因になります。

就寝の約2時間前から、体内では眠りを促すホルモンであるメラトニンが分泌されます。しかし、この時間帯にスマートフォンやパソコンの画面などから強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられてしまうのです3。その結果、寝付きが悪くなる原因になります。

寝る前に画面を見ないように、パソコンを使う時間を調整したり、寝室にスマホを持ち込まないようにしたりする工夫をしてみましょう。

寝室の環境を整える

睡眠中は、わずかな明るさの光でも中途覚醒が増えることが知られています3
豆電球や外から差し込む光も睡眠の質を下げる原因になるため、できるだけ暗い環境を整えましょう。

また、室温や音にも配慮が必要です。暑すぎたり寒すぎたりしないよう、季節に応じてエアコンや寝具を調整し、静かで落ち着いた環境を整えましょう3

睡眠と脳に関するよくある疑問

「目覚まし時計で起きるのは脳に負担がかかるの?」
「自分は短い睡眠でも平気だから、きっと自分はショートスリーパーなのかな」

睡眠に関して、このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。ここからは、よくある質問を取り上げながら、脳と睡眠の関係について解説します。

疲れているのに眠れないのは脳・精神の病気の前兆?受診の目安は?

不眠は必ずしも病気の前兆ではなく、ストレスや薬の影響、生活リズムの乱れなど、さまざまな原因が考えられます。

ただし、眠れない日が続いて気分の落ち込みを感じたり、日中の集中力が低下して仕事や家事に支障が出たりする場合は、対処が必要である可能性があります。
無理せず、専門家への相談を検討しましょう13

睡眠中に言語を習得できる・勉強できるって本当?

寝ている間に音声を流して語学学習や勉強をするといった「睡眠学習」は、難しいとされています。
睡眠中の脳は、起きているときのように新しい知識を理解し、意識的に覚えられる状態ではなく、定説として否定されています。

興味深い研究として、ある研究によると、深い睡眠中に、知らない国の単語とその意味を音声で聞かせたところ、目覚めたあとに意味をなんとなく判断できたという報告がありました14

ただし、学習できるタイミングは睡眠中の脳波のサイクルにおける特定のタイミングに限られ、簡単な単語レベルのものを「偶然より高い確率で確認できた」、というものにすぎません。

学習効果を高めたいのであれば、起きている間にしっかりと学習し、質のよい睡眠をとることが大切です。

目覚まし時計で無理やり起きるのは脳に良くない?

目覚まし時計で無理やり起きたとしても、脳に直接的なダメージが生じるわけではありません。
一方で、深い眠りの最中に起こされると、睡眠慣性(すいみんかんせい)が長くなることがあります15

睡眠慣性とは、起きてからしばらく頭がぼんやりとしている状態のことで、脳が覚醒に追いつかず、一時的に注意力や判断力などの認知機能が低下するために起こります。睡眠慣性は通常の睡眠のあとでも起こることがあり、多くの場合は30分程度でおさまります15。しかし、深い眠りのタイミングに目覚まし時計で強制的に起こされると、その時間が長くなってしまうのです。

したがって、目覚ましに頼らなくても自然と起きられるように、睡眠時間を確保できるのが望ましいといえるでしょう。

ショートスリーパーでも脳は疲れない?特別な遺伝子がある?

一部のショートスリーパーには、睡眠と覚醒を調整する遺伝子の変異が見つかっています。そして、この遺伝子を持つ人は、ノンレム睡眠を効率よく確保できるため、睡眠時間が短くても脳の疲労がたまりにくいと考えられています16

ただし、このような体質はごく一部の人に限られた、生まれ持ったものです16
短時間睡眠でも問題がない人はまれであり、多くの人にとって睡眠時間の短縮は単なる睡眠不足になります。

睡眠時間が短くても平気だからといって、「自分はショートスリーパーだから大丈夫」と判断するのではなく、日中の眠気や疲労感がないかを一つの目安に、適切な睡眠を確保しましょう。

まとめ:脳の健康やパフォーマンスの維持のために、適切な睡眠時間と質の良い睡眠をとろう

睡眠は、脳を休ませ、気分や集中力を整えるために欠かせない時間です。

普段の生活を見直し、少し工夫するだけでも睡眠の質を高めることができます。

決まった時間に寝起きしたり、寝る前のスマホを控えたりするなど、できることから始めてみましょう。

参考文献


1, 小山純正:ノンレム睡眠とレム睡眠.日本睡眠学会. [https://www.jssr.jp/basicofsleep2](最終閲覧日:2026年4月2日)
2, 厚生労働省:眠りのメカニズム.健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~.[https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002](最終閲覧日:2026年4月2日)
3, 厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023.[https://www.dietitian.or.jp/trends/upload/data/342_Guide.pdf](最終閲覧日:2026年4月2日)
4, Ikram M,et al.Melatonin as a Potential Regulator of Oxidative Stress, and Neuroinflammation: Mechanisms and Implications for the Management of Brain Injury-Induced Neurodegeneration.Journal of Inflammation Research.2021;2021(14):6251-64.
5, 名古屋大学:脳とこころの研究センター.[https://www.med.nagoya-u.ac.jp/noutokokoro/introduction/kankyouigaku_shinkei.html](最終閲覧日:2026年4月2日)
6, Brian C.Tefft,et al.Acute Sleep Deprivation and Risk of Motor Vehicle Crash Involvement.Sleep. 2018;41(10).
7, Katrin Uehli,et al.Sleep problems and work injuries: A systematic review and meta-analysis.Sleep Medicine Reviews.2014;(18):61-73.
8, Yuki Motomura,et al.Sleep Debt Elicits Negative Emotional Reaction through Diminished Amygdala-Anterior Cingulate Functional Connectivity.PLOS ONE.2013;8(10)e56578.
9, 厚生労働省:睡眠と生活習慣の深い関係.健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~.[https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-008](最終閲覧日:2026年4月2日)
10, 厚生労働省:体内時計.健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~.[https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-039](最終閲覧日:2026年4月2日)
11, 厚生労働省:快眠と生活習慣.健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~.[https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004](最終閲覧日:2026年4月2日)
12, 厚生労働省:良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと.[https://kennet.mhlw.go.jp/tools/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/leaf-sleep.pdf](最終閲覧日:2026年4月2日)
13, 東京保健医療局:睡眠障害は理解して早期受診!が重要.[https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/rest/kiduku.html](最終閲覧日:2026年4月2日)
14, Marc Alain Züst,et al.Implicit Vocabulary Learning during Sleep Is Bound to Slow-Wave Peaks.Current Biology.2019;(29):541-53.
15, Keiko Ogawa,et al.Effects of using a snooze alarm on sleep inertia after morning awakening.journal of PhysiologicalAnthropology.2022;(31)41-43.
16, Guangsen Shi,et al.A rare mutation of β1-adrenergic receptor affects sleep/wake behaviors.Neuron.2019;103(6):1044-55.

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