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脳と栄養の関係|脳の健康にいい食事や栄養素・食生活のポイントを解説

脳と栄養の関係|脳の健康にいい食事や栄養素・食生活のポイントを解説

「最近、集中力が続かない」「なんだかもの忘れが増えた気がする」と感じることはありませんか。

集中力や記憶力など、脳の働きに大きく関わるのが毎日の食事です。
食事内容や食習慣の乱れは、脳の機能だけでなく、脳の将来的な健康にも影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、脳と食事の関係、脳の健康に役立つ食事や食生活のポイントについて解説します。

脳と食事・食生活の関係

食事や食生活は、どのように脳機能や脳の病気に影響するのでしょうか。

脳機能・脳のパフォーマンスへの影響

はじめに、脳の構造についてご紹介します。

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(脳の構造のイメージ図:文献1を参考に編集部作成)

脳の断面を見てみると、脳は大きく二層に分かれています。
表面の層は、灰白質や大脳皮質と呼ばれ、情報伝達を行う神経細胞が多く集まっています。白質と呼ばれる内側の層は、神経細胞から出た神経線維が多く存在します

灰白質の約30%、白質の約55%は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やARA(アラキドン酸)などの脂質(脂肪酸)で構成されています

これらの脂質は、脳の情報伝達を担う神経伝達物質が働く環境を整え、記憶や学習能力、認知機能といった脳の機能を支えていると考えられています

また、脳の主なエネルギー源はブドウ糖です。ブドウ糖が不足すると集中力の低下や疲労感につながります

栄養素は脳自体や脳機能の維持に大きな関わりがあり、栄養の過不足は脳の働きに影響を及ぼすことがあります。

ホルモンバランスへの影響

ホルモンは、私たちの身体の機能を支えるために欠かせない物質で、脳はホルモンのコントロールに重要な役割を担っています。

ホルモンの材料となるタンパク質や脂質が不足すると、ホルモンバランスが乱れ、心身の不調を招く場合があります

また、ホルモンには、脳内で「神経伝達物質」として働くものもあります。神経伝達物質は、主に神経細胞同士で情報を伝える物質です
神経伝達物質の合成や働きには、タンパク質やビタミンなどの栄養素が関わっています

このように、日々食事から摂取する栄養が、ホルモンや神経伝達物質の安定を支えているのです。

脳疾患・精神疾患への影響

偏った食生活は高血圧や糖尿病、肥満といった生活習慣病を招きます
生活習慣病は、脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)や認知症などのリスクを高めるとされています

脳血管障害の予防や認知症のリスク低下のためには、日々の食事で栄養バランスを整えることが大切です。
また、食生活がうつ病などの精神疾患の予防に関わる可能性を示す研究報告もあります

食生活や栄養バランスは、脳の健康維持や精神の安定にも欠かせません。

脳に必要な栄養素と主な働き

ここでは、脳に必要とされる主な栄養素と、その働きについてご紹介します。

栄養素

主な働き

炭水化物(糖質)

脳の活動のエネルギー源となる

脂質

エネルギー源や細胞膜をつくる成分となる

タンパク質(アミノ酸)

タンパク質の構成成分であるアミノ酸は、ホルモンや神経伝達物質などの材料となる

ビタミン

抗酸化作用(増え過ぎた活性酸素による影響を抑え、身体や細胞を守る作用)や神経細胞の機能維持などに関わる

ミネラル

抗酸化作用や神経伝達物質の生成などに関わる

炭水化物(糖質・炭水化物)

炭水化物は、糖質と食物繊維の総称です。
脳や身体を動かすためのエネルギーとして使われるのは糖質で、ブドウ糖(グルコース)に分解されることでエネルギーに変換可能な状態になります。

成分名

主な働き

ブドウ糖

  • 脳や身体を動かすエネルギー源となる
  • 不足すると、疲労感や集中力の低下が見られる
  • 過剰になると、生活習慣病の要因となる

食物繊維

  • 血糖値の上昇を抑える
  • 血液中のコレステロールの濃度を下げる

脂質・脂肪酸

脂質・脂肪酸は、脳を構成する材料になるほか、ホルモンや脳細胞をつくるうえで重要な役割を持ちます。

分類1

成分名

主な働き

脂肪酸

α-リノレン酸

  • DHAやEPAの材料となる

DHA(ドコサヘキサエン酸)

  • 脳をつくる成分となる
  • 記憶力や認知機能など脳機能の調節に働く

EPA(エイコサペンタエン酸)

  • 記憶力など脳機能の調節に働く

ARA(アラキドン酸)

  • 脳をつくる成分となる
  • 記憶力や認知機能など脳機能の調節に働く
  • 過剰になると炎症の要因となる

オレイン酸

  • 脳をつくる成分となる

脂質の一種

MCT(中鎖脂肪酸からなる油)

  • すばやく消化・吸収されて、エネルギー源になる

コレステロール

  • ホルモンや細胞膜をつくる材料となる
  • 不足すると脳出血のリスクを高める
  • 過剰になると動脈硬化の要因となる

タンパク質(アミノ酸)

タンパク質は、神経伝達物質の材料になるほか、記憶や学習といった脳機能を支えるために重要な働きを持ちます。

成分名

主な働き

BCAA(分岐鎖アミノ酸:

バリン、ロイシン、イソロイシン)

  • タンパク質の合成を促す
  • 糖や脂質に代わるエネルギー源となる
  • 免疫力を高める

フェニルアラニン

  • 神経伝達物質の材料となる

トリプトファン

  • 神経伝達物質のセロトニンやメラトニンをつくる

ヒスチジン

  • 神経伝達物質のヒスタミンをつくる

アルギニン

  • 成長ホルモンの分泌を促す

メチオニン

  • 神経伝達物質を作るために必要なSAMe(S-アデノシル-l-メチオニン)の材料になる

ビタミン

ビタミンは、エネルギーの代謝をサポートしたり、神経伝達物質の合成をサポートしています。

成分名

主な働き

ビタミンB1

  • 神経系の機能を維持する
  • 不足すると、ウェルニッケ脳症(眼球の動きや意識、歩行に障害が出る病気)の原因となる

ビタミンB6

  • 神経伝達物質の合成を通して、認知機能の発達に関わる
  • 神経伝達物質の合成時に生成される有害物質(ホモシステイン)を無毒化し体外に排出するサポートをする

ビタミンB12

  • 中枢神経系の発達に関わる
  • 神経伝達物質の合成時に生成されるホモシステインを元物質(メチオニン)に再合成する

葉酸

  • 神経伝達物質の合成時に生成されるホモシステインを元物質(メチオニン)に再合成する
  • 妊娠初期に不足すると、赤ちゃんの神経管(脳や脊髄のもと)の形成に影響する可能性がある

ビタミンC

  • 抗酸化作用がある
  • ホルモンの代謝や神経伝達物質の生成に関わる

ビタミンA

  • 細胞の成長を助ける
  • 記憶力を高める働きがある

β-カロテン

  • 体内でビタミンAに変わる

ビタミンE

  • 抗酸化作用があり、動脈硬化を防ぐ働きがある

ミネラル

ミネラルは神経伝達物質の合成や情報伝達に不可欠です。

成分名

主な働き

マグネシウム

  • エネルギーの産生や神経情報の伝達に関わる
  • 高血圧や糖尿病など生活習慣病の発症予防に関わる

ナトリウム

  • 身体の水分量の調節に関わる
  • 過剰になると、高血圧など生活習慣病の要因となる

カリウム

  • 身体の水分バランスを整える
  • 神経の伝達や筋肉の動きに関わる

カルシウム

  • 神経の伝達や筋肉の動きに関わる
  • 過剰になると鉄や亜鉛の吸収が障害される

  • 脳など全身へ酸素を運ぶヘモグロビンのもととなる
  • 神経伝達物質であるセロトニンの生成に関わる
  • 不足すると貧血や運動機能、認知機能の低下を招く

亜鉛

  • 抗酸化作用がある
  • 不足するとうつ状態の要因となる

  • 神経伝達物質をつくる
  • 過不足があると、神経や精神に障害が生じる

セレン

  • 抗酸化作用がある
  • 甲状腺ホルモンの代謝に関わる

その他の栄養素

主要な栄養素の他にも、脳の健康に重要な栄養素があります。

成分名

主な働き

ポリフェノール

  • 脳への血液の流れをよくする
  • 消化管ホルモンの分泌を促し、血糖値を下げる

カテキン

  • 抗酸化作用がある
  • 個人的な体験に関する記憶の維持に関わる

各栄養素は、それぞれ脳の機能において大切な働きを担いますが、中には過剰になることで悪影響を及ぼすものもあります。

栄養は食事からの摂取を基本とし、バランスを意識した食生活を心がけてくださいね。

脳の健康のために積極的に取り入れたい食材

ここでは脳の健康に必要な栄養素を含む、主な食材について紹介します。
毎日のメニューに、まずは一品から取り入れてみるとよいでしょう。

主な食材

取り入れるメリット

青魚

【例】サバ、イワシなど

  • EPA・DHAが豊富でコレステロールを下げる作用がある

緑黄色野菜

【例】ほうれん草、かぼちゃ、ブロッコリーなど

  • ビタミンやミネラル、食物繊維を多く含み、生活習慣病の予防に関わる

きのこ

【例】しいたけ、エリンギ、なめこなど

  • 低カロリーで、ビタミンや食物繊維などの栄養素が豊富
  • コレステロールや血圧を下げる作用がある

果物

【例】みかん、バナナ、レモンなど

  • ビタミン、ミネラル、ポリフェノールを多く含み、生活習慣病や認知症の予防に関わる

乳製品

【例】牛乳、ヨーグルト、チーズなど

  • タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素がバランスよく含まれる

脳の健康維持におすすめの料理

脳の健康に関係する食事として「地中海式食事法」や「和食」が注目されています。
ここでは健康に役立つ食事法をご紹介します。

地中海式食事法

地中海沿岸のギリシャやイタリアなどの、伝統的な食事や食習慣を地中海食といいます
この食習慣をベースに健康的な食事法として実践されているのが「地中海式食事法」です。

特徴は次のようなものです。

  • 果物や野菜を豊富に使用する
  • 乳製品や肉よりも魚を多く使う
  • オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う
  • 食事と一緒に適量の赤ワインを飲む

魚介のDHAや、果物のビタミンなどが脳細胞の酸化を防ぎ、認知機能低下や認知症のリスクを抑えると考えられています

地中海式食事法は日本の食文化と異なるため、日本人が完璧に再現した食事を日常的に取り入れるのは難しいとされています

一方で、地中海食事法で使われる食材には、私たちが入手しやすく日頃使っている食材も多くあります。
完璧な地中海食を目指すのではなく、使う油をオリーブオイルに置き換えたり、肉ではなく魚を多く使うなど、取り入れやすいところから始めてみましょう。

色鮮やかな地中海料理

地中海料理は認知症予防に効果的?日常生活に取り入れるポイントやレシピを解説

「脳にうれしい地中海料理」Vol.1のサムネイル

藤岡みなみの「脳にうれしい地中海料理」Vol.1

和食

和食は日本人の伝統的な食文化で、次の4つが特徴です

  • 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
  • 健康的な食生活を支える栄養バランス
  • 自然の美しさや季節の移ろいの表現
  • 正月などの年中行事との密接な関わり

さまざまな食材をバランスよく摂ることは、認知機能の低下を抑えることにつながるとの報告もあります
一汁三菜を基本として、季節の食材を取り入れ栄養バランスがとれた和食は、私たちが取り入れやすく脳の健康維持にも意識したい食習慣といえます。

脳の健康によい食事・食生活のポイント

脳の健康を保つために取り入れたい食事や、食生活のポイントを見てみましょう。

バランスのよいメニュー

健康によい食事は「炭水化物・タンパク質・脂質」の三大栄養素のバランスが大切です。
主食・主菜・副菜の組み合わせ方の例として、次のような食事があります

  • いろいろな食材を使った料理
     焼き魚定食、サバの味噌煮定食、ミートスパゲティ+サラダなど
  • 1つのお皿に、主食・主菜・副菜を盛り合わせた料理
     ロコモコ丼、タコライスなど

パスタだけではなくサラダを追加したり、おにぎりだけでなくサラダチキンを追加したり、炭水化物・タンパク質・脂質に偏りが出ないように工夫することがポイントです。

まずは1日1食、主食・主菜・副菜がそろったメニューを選んでみる、外食するときは定食を選ぶなど、無理のない範囲で取り入れるとよいでしょう。

規則的な食生活

脳の健康を保つためには「何を食べるか」と同じくらい「いつ食べるか」も重要です。

動物を使った研究では、食事の時間が不規則になると体内時計が乱れ、脳機能に影響を及ぼす可能性が示されています

規則正しい食習慣を整えるには、次のような点がポイントです

  • エネルギー不足を防ぐため、朝食をとる習慣をつける
  • 体内時計を乱さないため、できるだけ一定の時間に食べる
  • 血糖値の上昇や体重増加を防ぐため、夜遅い時間の食べ過ぎを控える

脳に悪影響を及ぼす食事・食生活

脳に影響を及ぼすとされる食事や食生活について知り、日々の食習慣を見直してみましょう。

塩分・糖分・脂質過多な食事は生活習慣病に影響する

塩分や糖分、脂質を過剰に摂取すると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まります。

脳血管障害は、高血圧や糖尿病などによって進行する動脈硬化が原因のひとつです
また、生活習慣病は認知症との関連も指摘されています
塩分を控え、糖分や脂質をとり過ぎないよう意識することが大切です。

過度なアルコール摂取は生活習慣病や認知機能に影響する

アルコールは高カロリーなため、大量の飲酒習慣は、生活習慣病のリスクを高めるといわれています

また、大量の飲酒を続けている人やアルコール依存症の人では、認知機能の低下や認知症との関連が指摘されています

飲酒は適量を心がけ、休肝日を設けるようにしましょう。

食材を食べる順番は血糖値の上昇に影響する

肉や魚、野菜よりも先に、糖質が多いご飯やパンなどを先に食べると、血糖値が上昇しやすくなります

血糖値が高い状態が続くと認知機能の低下や認知症の進行が早まる可能性があるといわれています。また、糖尿病は認知症のリスクを高める要因のひとつです

食後に血糖値が急に上がるのを抑えるためには、次のような食べ方を意識してみましょう

  • 野菜やタンパク質を多く含む食材から食べる
  • よくかんで、ゆっくり食べる

脳と食事・栄養に関するよくある疑問

脳に関係する食事や栄養のよくある疑問について解説します。

ブレインフードとは?具体的にどのような食べ物?

脳の働きをよくするといわれる栄養素を含む食材を「ブレインフード」といいます。
主なブレインフードには次のようなものがあります。

  • 青魚
  • 貝類
  • ナッツ類
  • ベリー類
  • アマニ油やオリーブオイル など

料理の油をオリーブオイルに置き換えたり、おやつをポテトチップスからナッツにしてみたり、取り入れやすいものから試してみてくださいね。

アルミニウムを摂取するとアルツハイマー型認知症になるって本当?

今のところ、アルミニウムの摂取がアルツハイマー型認知症の原因となる科学的な証拠は見つかっていません

食事や飲み物からアルミニウムを摂取したとしても、身体に吸収されるのは0.1%とわずかです。そのほとんどは、尿と一緒に体外へ排泄されます

厚生労働省が令和2~3年度に行った調査でも、日本人のアルミニウムの摂取量は、健康に影響がないとされる量よりもさらに大きく下回っていました
そのため、日々の食事で気にし過ぎる必要はないでしょう。

トランス脂肪酸は認知症に関係あるの?健康によくないって本当?

トランス脂肪酸は、植物油を加工してマーガリンやショートニングをつくる過程や、油を高温で処理する際にできる脂肪酸の一種です

海外の研究結果では、トランス脂肪酸を多くとると、糖尿病や心臓疾患、肥満などが増える可能性が指摘されています。しかし、脳血管障害や認知症などとの関係は、はっきりとわかっていません

DHAやEPAを摂取すると頭がよくなる?

DHAやEPAが、認知機能の低下を防ぐ可能性があるとする研究結果があります。
しかし「頭がよくなる」ことや、認知症の予防・改善に役立つとする十分な根拠は、現時点ではわかっていません

学力向上や認知症を予防できるというものではありませんが、DHAやEPAは脳血管障害を予防する効果があり、脳の健康を支える大切な栄養素なので意識的に取り入れられるとよいでしょう

まとめ

脳の健康を保つためには、特定の栄養素や食材に頼るのではなく、栄養バランスのとれた食事と規則正しい食生活が大切です。

脳機能に必要とされる栄養素を意識した食生活は、脳血管障害のリスク低下や認知機能の維持などにつながると考えられています。

無理に食生活を変えるのではなく、できることから少しずつ始めてみましょう。

この記事の補足情報

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著者情報

  • PROFILE/ プロフィール

    伊藤 たえ

    赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長 ■Profile 2004年 浜松医科大学医学部 卒業 2004年 浜松医科大学付属病院 初期研修 2006年 浜松医科大学脳神経外科 2013年 河北総合病院脳神経外科 2016年 山田記念病院脳神経外科 2019年 菅原脳神経外科クリニック 2019年 現職 ■所属学会 日本脳神経外科学会専門医 日本脳卒中学会専門医 日本脳ドック学会認定医

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