地中海料理は認知症予防に効果的?日常生活に取り入れるポイントやレシピを解説

「最近うっかりミスが増えた」「忘れっぽくなった」と悩んでいる方に試していただきたいのが「地中海式食事法」です。
地中海式食事法は、認知機能や健康の維持に関する研究が進められており、世界的に注目されている食事法のひとつです
本記事では、地中海式食事法とその効果、日常生活に取り入れるヒントについて解説します。
認知症予防で注目される地中海式食事法とは
地中海式食事法とは、ギリシャやイタリアなどの地中海地方の食習慣(地中海料理)をベースに、健康維持を目的に考えられた食事法です。
オリーブオイル、魚、野菜、果物、豆類、ナッツなどを中心にした食事です。
健康長寿の食事法として世界的に研究されており、さまざまな健康効果が示されています。
地中海式食事法の特徴
地中海式食事法とは、地中海の食事で使われている食材を取り入れる食事法です。
- 野菜・果物・豆類・低精製の穀物を中心に食べる
- 魚や乳製品を適量に摂取する
- 赤身肉やその他の肉の摂取は控える
- オリーブオイルやn-3系脂肪酸(オメガ3)を含む油を使用する
- ワインを適量摂取する
上記の点が特徴で、食材の摂取目標量がピラミッドの形で設定されています。
地中海で食べられている料理でなくても、同じような特徴をもつ食事であれば「地中海式食事法」と呼ばれます。アメリカでは糖尿病、心臓病、脳卒中の治療食としても推奨されている食事法です。
地中海食スコア(Mediterranean Diet Score, MDS)
地中海式食事法には、「どれくらい地中海式食事法を守っているか」を評価するための「地中海食スコア(MDS)」と呼ばれる指標があります。
食材と栄養素を組み合わせて、食事の質と健康への影響を計算します。
野菜、果物とナッツ、穀類、豆、魚、乳製品、赤身肉や鶏肉、オリーブオイル(MUFA/SFA)、アルコール(赤ワイン)の9項目で構成されて、全体の摂取量の中央値を基準として以下のように採点します。
- 野菜、果物とナッツ、穀類、豆類、魚、オリーブオイルは中央値以上を1点、中央値未満を0点
- 乳製品と赤身肉・鶏肉は中央値以上を0点、中央値未満を1点
- 赤ワインはエタノール換算の基準量以内で1点
合計で9点満点になり、スコアの値が高いほど地中海食に近い食事になります。
地中海式食事法とMIND食との違い
地中海式食事法を活用した「MIND(マインド)食」と呼ばれるものがあります。
MIND食とは、地中海式食事法と、高血圧を予防する「DASH(ダッシュ)」食を組み合わせたもので、脳の健康に特化した食事法です。
MIND食では、特に次の点を重視しています。
- 天然の植物性食品を重視する
- バターやチーズなどの動物性食品と揚げ物などの高飽和脂肪食品の摂取を制限する
- ベリー類(ブルーベリーやイチゴ)や葉物野菜の摂取を重視
この食事法は、認知機能低下を予防するため、脳の酸化や炎症を抑える神経保護効果が科学的に示されている食事成分に基づいています。
地中海式食事法が認知症予防に効果的と言われる理由
地中海式食事法は、科学的な根拠を持って認知症の対策に効果があるとされています。
アルツハイマー病の原因物質(アミロイドβ)の蓄積を防いだり、脳の炎症や酸化ストレスを防ぐと考えられている成分を含む食材が豊富に使われるためです。
「地中海式食事法は認知症の対策に効果がある」と示す具体的な研究をご紹介します。
認知症リスクが低下する?
英国バイオバンクが行った調査では、地中海式食事法をどれだけ守っているかをスコア化し、「低・中・高」の3群に分けて将来の認知症発症リスクを追跡しました。
その結果、スコアが低い群の認知症発症率が1.73%だったのに対し、中等度群は1.50%、高い群は1.18%と、スコアが高いほど発症リスクが低くなりました。
この研究結果からは、地中海式食事法を守っている割合が高いほど認知症リスクが低いことが示されました。
オリーブオイルが脳の健康維持に活躍?
エキストラバージンオリーブオイルは、地中海式食事法の中でも重要な食材です。オレオカンタールなど、軽度認知障害やアルツハイマー病の発症リスクを減らす抗炎症成分が豊富に含まれています。
さまざまな実験結果から、エキストラバージンオリーブオイルは、アミロイドβやリン酸化タウなどの脳にたまる有害なタンパク質の蓄積を防ぎ、酸化ストレスや脳の炎症を和らげ、脳を守るバリア(BBB)を強くする可能性が示されました。
予防や治療につなげるためにはさらに研究が必要とされていますが、脳の健康のために日頃からの食事に取り入れたい食材です。
アルツハイマー病の原因タンパクを減らす?
脳内のゴミと言われる「アミロイドβ」は、アルツハイマー病の原因とされる物質のひとつです。
地中海式食事法とアミロイドβについて調べた研究では、野菜の摂取量が増えると、脳内に蓄積されるアミロイドβの量が低下することが示唆されました。
これは、野菜や果物に含まれるビタミンAやβ-カロテンをはじめ、ビタミンC、Eなどのビタミン群、そしてポリフェノールなどが持つ抗酸化作用が、アミロイドβの沈着リスクを抑えるためと考えられます。
地中海式食事法のような食事が、脳の炎症や酸化ストレスを軽減し、健康な脳にするために役立つ可能性があります。
脳の健康のために積極的に取り入れたい栄養素と豊富に含む食材
地中海式食事法で大切な栄養素と働き、豊富に含む食材をご紹介します。
スーパーで簡単に手に入るものばかりですので、ぜひ取り入れてみてください。
栄養素 | 働き | 豊富に含む食材 |
|---|---|---|
オメガ3脂肪酸 (DHA・EPA) | 抗炎症作用 神経保護作用 腸内の微生物叢の構成の調節 | サバ、イワシなどの新鮮な魚、えごま油、クルミ、大豆油など |
ポリフェノール | 抗酸化作用 神経保護作用 腸内の微生物叢の構成の調節 アミロイドβの蓄積の抑制 | 赤ワイン、紅茶、緑茶、コーヒー、ベリー類など |
ビタミンA | 抗酸化作用 アミロイドβの蓄積の抑制 | ニンジン、ホウレンソウ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜 |
ビタミンC | 抗酸化作用 | グレープフルーツなどの柑橘類、イチゴ、ブロッコリー、トマト、キウイ、赤ピーマンなど |
ビタミンE | ビタミンCと相互作用 抗酸化作用 | アーモンドなどのナッツ類、ホウレンソウ、ブロッコリーなど |
β-カロテン | ビタミンAの前駆体となる | ニンジン、ホウレンソウ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜 |
地中海式食事法を日常に取り入れる食生活のコツ
地中海式食事法は、実は日常生活に簡単に取り入れられます。
和食によく使われる豆腐や納豆も「豆類」として、立派な地中海食の要素のひとつです。
普段の食事の食材を少し変えたり、足したりするだけで実践できます。
「地中海料理を作る」と意気込むのではなく普段の食事に「少しプラスする」という感覚で取り入れてみましょう。
ここでは普段の食生活に取り入れやすい方法をご紹介します。
和食に地中海食の要素を取り入れる
和食には、地中海食で使われる食材と相性がいい料理が多くあります。
どちらの食事も魚や植物性食品が中心という共通点があり、和食をベースにしながら無理なく地中海食のエッセンスを取り入れることができます。
たとえば、次のようなアレンジなら、普段の食事にも取り入れやすいでしょう。
- 青魚をオリーブオイルと香草でマリネ風にしてみる
- 納豆にオリーブオイルをひとさじたらす
- ほうれんそうの胡麻和えに砕いたナッツも加える
- 味噌とクルミを和えて味付けに使う
海外の研究は欧米人を対象としたものですが、食材の共通点が多い和食を食べる日本人は、すでに地中海食の一部を実践していると言えます。
おなじみの食事を、少し工夫するところから始めてみましょう。
普段使う食材・食品を置き換えてみる
普段使う食材を置き換えたり、少し足したりするだけでも地中海食に近づけられます。毎日の食生活を丸ごと変えなくても大丈夫です。
これまで食べていたものを禁止するのではなく、食材を置き換える・追加する、という意識で取り組んでみましょう。
今日からできる工夫をご紹介します。
- 炒め物やドレッシングに使う油をオリーブオイルにする
- 週2〜3回の夕食のおかずを、サバ・イワシなどの青魚にする
- 間食のチョコやスナックを、ひとつかみのくるみやアーモンドにする
- サラダにツナ缶やサバ缶をプラスする
- 鍋やスープにレンズ豆やひよこ豆を入れる
手軽にできそうなものからぜひ試してみてください。
地中海式のおすすめ料理レシピ
ここでは、地中海式食事法を手軽に取り入れられる、おすすめのレシピをご紹介します。
サバ缶のアヒージョ風
サバの缶詰を使うと、簡単に一品が完成します。10分ほどで、フライパン1つでできて手軽です。ぜひお試しください。
材料(2人分)
- サバ水煮缶1缶
- にんにくチューブ1cm程度
- ミニトマト6粒
- お好みのキノコ類適量
- オリーブオイル適量
- 鷹の爪一片
- 塩1つまみ
- キノコは食べやすい大きさに、ミニトマトは半分に切る。サバ水煮缶は缶汁を軽く切っておく。
- 小さめのフライパンにオリーブオイルを入れ、にんにくチューブと鷹の爪を加えて弱火にかける。じっくり加熱してにんにくの香りを引き出す。
- にんにくが薄く色づいたら、ミニトマトとさらに1〜2分加熱する。
- ミニトマトがしんなりしてきたらサバ水煮缶を大きめにほぐしながら加え、崩れすぎないよう優しく混ぜる。
- 塩で味を整えたら完成。
具だくさんラタトゥイユ
野菜をたっぷりとれる作り置きメニューで、毎日の食生活に取り入れやすくしましょう。野菜はお好みのもので代用できます。
材料(2人分)
- トマト缶1缶
- ズッキーニ1本
- ナス2本
- 玉ねぎ1個
- パプリカ1個
- にんにくチューブ適量
- 顆粒コンソメ小さじ1杯
- 塩こしょう適量
- ズッキーニ、ナス、パプリカは2cm角に、玉ねぎはくし切りにする。ナスは切ったら水にさらしてアクを抜く。
- 鍋に オリーブオイルとにんにくチューブを入れて弱火にかけ、香りが立ったら玉ねぎを加えて中火で炒める。玉ねぎが透き通ったらナス、ズッキーニ、パプリカを加えてさらに炒める。
- トマト缶とコンソメを加え、よく混ぜる。あればバジル、オレガノを入れる。沸騰したら弱火にして蓋をし、じっくり煮込む。
- 野菜がやわらかくなったら塩・こしょうで味を整える。仕上げにオリーブオイルをひとたらしして完成。
認知機能の維持のために避けたい食事の注意点
認知機能を維持するために、避けたい食事内容もご紹介します。
良いものを摂るだけでなく、悪いものを避けるとより健康的な食生活になりますよ。
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む高脂肪食は、生活習慣病につながる一方で、記憶・注意・実行機能など、脳の健康にも有害な影響を与える可能性があると示唆されています。
高脂肪食で引き起こされる神経の炎症、酸化ストレス、インスリン抵抗性、腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れなどが脳細胞に悪影響を与えるためです。
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、マーガリン、ショートニング、ケーキ、ドーナツ、バター、肉の脂身、パーム油などに多く含まれています。
摂りすぎには注意しましょう。
塩分・糖分の過剰摂取
塩分や糖分の摂りすぎが招く高血圧や糖尿病は、認知症の原因になる可能性があります。
高血圧になると動脈硬化が起こりやすく、血流が悪くなるとアルツハイマー病の原因となるタンパク質(アミロイドβ)が排出されにくくなります。
原因タンパク質が蓄積されると、アルツハイマー病の進行が早まることがわかっているため、高血圧は間接的に認知症リスクを高めるのです。
また、砂糖や甘味料の摂りすぎは、高脂肪食と同じように脳細胞に悪影響を与え、特に女性において認知症のリスクを上昇させることが示唆されました。
味付けの際に塩分を控えめにする、ジュースやスポーツドリンクを常飲しない、といった日常的な習慣を見直してみましょう。
過度なアルコールの摂取
ポリフェノールを豊富に含む赤ワインは地中海式食事法の要素ですが、飲みすぎはかえって悪影響です。
認知症やアルツハイマー病の予防に効果があるとされる適量は、少量~中程度の赤ワイン摂取です。
慢性的なアルコールの飲みすぎは早期発症の認知症のリスク因子になります。
また、アルコール摂取量に比例して脳萎縮の程度が増し、認知機能に悪影響を与えることが分かっています。
赤ワインなら1〜2杯程度を楽しむ程度にしましょう。
ハムやインスタントラーメンなどの加工食品の摂取
ハムやインスタントラーメンなど、加工肉や超加工食品の摂取量が多いと認知症のリスクが高くなる、という結果が示されました。
超加工食品とは、家庭や飲食店では使わないような添加物を加えて工業的に大量製造した食品です。
一方、超加工食品の重さの10%相当量を、未加工や最小限に加工された食品に置き換えると、認知症のリスクが低くなることも示されています。
加工食品は便利ですが、使用頻度に注意し、一部をミニトマトなどのすぐ食べられる野菜に置き換えるような工夫をしましょう。
まとめ:毎日の食事に少しずつ、地中海式食事法を取り入れてみよう!
地中海式食事法は、工夫次第で日常生活に取り入れやすく、科学的根拠もある認知症の予防法です。
健康的な食生活は、継続が大切です。完璧な再現や食生活の大幅な変更は負担が大きいもの。手に入れやすいものを「ちょい足し」する意識で、無理なく取り入れてみてくださいね。
この記事の補足情報
参考文献
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著者情報
- PROFILE/ プロフィール

伊藤 たえ
赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長 ■Profile 2004年 浜松医科大学医学部 卒業 2004年 浜松医科大学付属病院 初期研修 2006年 浜松医科大学脳神経外科 2013年 河北総合病院脳神経外科 2016年 山田記念病院脳神経外科 2019年 菅原脳神経外科クリニック 2019年 現職 ■所属学会 日本脳神経外科学会専門医 日本脳卒中学会専門医 日本脳ドック学会認定医
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