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介護美容と認知症の関係。高齢者向け「ネイルペン」を開発した起業家・堀口カストゥリさん

介護美容と認知症の関係。高齢者向け「ネイルペン」を開発した起業家・堀口カストゥリさん

認知症は「優しい病気」。認知症が教えてくれた新たな絆 

テヲトル
テヲトル編集部

起業から5年が経ちましたが、今後の事業の展望を聞かせていただけますか?

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

高齢者向けのコスメメーカーとして今後もプロダクトの充実に力を入れていきたいです。特に口紅やファンデーションが欲しいといった要望が多いので、開発を進めていきたいですね。加えて施設向けのネイルレクリエーションや介護美容塾などを通じて、<介護美容>のさらなる普及に努めていきたいと考えています。

テヲトル
テヲトル編集部

豊かな時代を生きた団塊の世代も後期高齢者となり、今後はさらに<介護美容>の需要が高まりそうです。

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

期待したいですね。私は<介護美容>には介護業界を明るく照らす力があると信じています。家族を施設に預けることに罪悪感のある方は少なからずいて、その結果として自宅介護に疲弊してしまうケースもよく聞きますが、利用者さまがイキイキと楽しんでいる施設もいっぱいあるということを知っていただきたいんです。

テヲトル
テヲトル編集部

<介護美容>も利用者が楽しめる要素の1つなり得ると。

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

その可能性は大いにあると思います。ちなみに私の祖母も施設に通うようになってから元気を取り戻しました。その施設では<介護美容>は導入していなかったのですが、職員さんや利用者さんにネイルを褒められるのがうれしくてたまらなかったようです。

テヲトル
テヲトル編集部

ネイルペンの開発や起業と、おばあさまの認知症をきっかけに堀口カストゥリさんの新たな人生も開いたのですね。

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

本当にそうだったなと思います。

テヲトル
テヲトル編集部

ちなみにおばあさまが認知症になる前後で、認知症についてのイメージが変わったことはありますか?

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

それまで認知症の方と交流した経験がなかったので、正直、認知症にはネガティブなイメージしかなかったです。「暴力を振るう」とか「暴言を吐く」とか。ところが祖母は真逆で、むしろ認知症と診断されて性格が穏やかになったんですよ。

テヲトル
テヲトル編集部

おしゃれが好きなのは変わらなくても。

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

そうですね。認知症の先入観がなくなったのも祖母のおかげでした。それともう1つ、祖母が認知症になって救われたと感じたことがあったんです。

テヲトル
テヲトル編集部

どういうことですか?

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

祖母と住んでいた高校の頃、私も思春期だったので祖母にひどいことを言ってしまったことがあったんですね。そのことがずっと心残りで、ネイルペンの試作をしていた時に祖母に「あの時はごめんね」と謝ったんです。ところが祖母は「何のこと?」って。

テヲトル
テヲトル編集部

忘れていたのでしょうか?

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

わからないです。もしかしたらとぼけただけかもしれません。だけどその一言に私は心から救われて、変な言い方ですけど「認知症って優しい病気だな」と思ったんです。

テヲトル
テヲトル編集部

優しい病気。そうかもしれないですね。

堀口さんのお母様とお祖母様との写真

左から堀口さんのお母さま、おばあさま、堀口さん 

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

2025年6月に90歳で祖母が旅立ちました。その際、私は自身の開発したネイルで祖母に「エンゼルメイク」を施しました。起業のきっかけをくれた祖母を、最後は自分の手で作った「彩り」で送ってあげることができた。それは、介護美容が単なるおしゃれではなく、人生の尊厳を最後まで守るためのものだと再確認した瞬間でした。
認知症は確かに記憶を奪いますが、最期までその人らしさを保つことはできる。そう確信しています。

テヲトル
テヲトル編集部

晩年の堀口さんとおばあさまは、お互いの人生に深い影響を与え合う関係になったのですね。

堀口 カストゥリさんの写真
堀口さん

祖母がどう感じていたかまではわかりません。だけど少なくとも私は、祖母が認知症になったことが不幸だったとは、まったく思っていないです。

「介護業界を、もっと明るく照らしたい」

29歳で起業し、全国を飛び回る堀口カストゥリさんの瞳には、曇りのない決意が宿っています。かつておばあさまの指先を彩った藤色は、今や日本中の高齢者たちの「生きる意欲」へと伝播しています。

介護は、ただのケアではなく、その人がその人らしく輝くためのサポートであるべき。堀口カストゥリさんが提唱する<介護美容>は、私たちの社会が「老い」とどう向き合うべきか、大切なヒントを提示しています。

鏡を見るのが楽しみになる。誰かに会いたくなる。そんな当たり前の幸せを、誰もが最期まで享受できる社会へ。指先から始まる革命は、まだ始まったばかりです。

この記事の補足情報

著者情報

  • PROFILE/ プロフィール

    堀口 カストゥリ

    ラヴィーナ株式会社 代表取締役 ■経歴 <プロフィール> アパレルメーカーにて勤務後、かねてより興味があったネイルの勉強をするためにネイルスクールに通い、ネイリスト資格を取得。その後ネイル製造メーカーに勤務。コロナ禍に祖母が認知症を患ったことをきっかけに、介護の資格を取得。祖母がネイルによって元気を取り戻したことがきっかけで介護美容の可能性を感じ、福祉業界初のペン型マニキュアの開発に着手。1年半の開発期間を経て、製品(ネイルペン)を完成させる。 2021年12月 ラヴィーナ株式会社を設立 2022年6月   ネイルペン「アキュレ」販売開始 2022年11月 美容レクリエーション代行業を開始 2023年12月 介護美容セミナー講師として、全国の大学や企業で講義を展開 年間約200施設/述べ5,000人の方に介護美容サービスを提供、各地で介護美容セミナー講師として活躍中

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