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【エネルギッシュ先輩】85歳現役、駄菓子問屋の大屋商店店主・大屋律子さん「人に会うと元気になっちゃう」
更新日:2026-03-05

【エネルギッシュ先輩】85歳現役、駄菓子問屋の大屋商店店主・大屋律子さん「人に会うと元気になっちゃう」

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大屋商店の店主 大屋律子さん
「良い老後とは何か?」この問いの答えは、人によって違うかもしれません。しかし人生を謳歌している先輩たちは共通して、周囲の人々にも元気と勇気と笑顔を与え続けているように思います。

インタビュー企画「エネルギッシュ先輩」では、そんなエネルギーに満ちた高齢の先輩たちが、どのような習慣を持ち、何を大切にしているのか、その秘訣を探っていきます。

今回の出演者は、大屋律子さん、85歳。戦後すぐから続く駄菓子問屋・大屋商店の四代目店主です。60年以上、店先に立ち続ける律子さんの背筋は、今もしゃんと伸び、張りのある声は店外にも響いてきます。

160軒がたった1軒に。日暮里の歴史、私の歴史

日暮里の店で取材を受ける大屋さん  

取材チームが向かったのは日暮里駅。北口を出て、北風に吹かれながらビルのエスカレーターを上がると、どこか懐かしい光景が目に入る。棒スナックに梅味のジャム、小さな容器のヨーグルト――。あの頃夢中になって選んだ駄菓子が山のように積み重なる中から、明るい声がする。

「どうぞどうぞ、見ていって!」

年明けの晴天の日、午前中からお客さんで賑わう大屋商店の片隅をお借りし、律子さんの語りに耳を傾けてみる。

思い思いに駄菓子を手に取るお客さんたち。老若男女さまざまな人が訪れる。その姿を見つめながら律子さんは言う。

「今は一年の中でも忙しい時期なの。年末年始は幼稚園や学校、会社でもいろんな催しをするでしょ。そのためにみんなお菓子を買っていくのよ。うちは問屋だから、もともとは全国の駄菓子屋さんが買い付けに来る店だけど、近頃は一般のお客さんがどんどん増えてる。

日暮里は昔、菓子問屋の街でね。160軒もお店が並んでいたの。でも、みんな高齢でお店に立てなくなって、儲からなくなって、跡継ぎもいなくて。気が付いたらうちだけになっちゃったね」

大屋商店は戦後から店を構える老舗。日暮里は再開発が進み、店は畳まれていった。そんななか大屋商店は、日暮里菓子問屋街唯一の生き残りとして経営をつづけている。もともと木造二階建てだった店は、平成21年にタワーマンション2階のテナント部分に移転した。

大屋商店に並ぶ駄菓子

「今商品を卸している駄菓子屋は、みんな三代目・四代目と長いこと頑張っている人たちでね。その人たちが来てくれるから、私も続けていくの。あ。あと今日はあなたたち(取材陣)も来てくれるっていうから、特別嬉しくてね。元気になっちゃうわね」

つられて笑顔になってしまうくらいに顔をほころばせる律子さんは、15歳の時、集団就職で栃木の山奥から上京してきた。

「歳の近い子たちと一緒に日暮里にきて、大屋商店の近くにある菓子問屋で働いてた。そしたらねえ、昼休みに私の顔を見に来る人がいてね。それが大屋商店の息子、私が結婚したひとだよ。“りっちゃん、また大屋さんとこの息子がりっちゃんに会いに来たよ”なんて周りから茶化されてね。ふふ、私のこと好きだったんでしょう。そんな旦那と25歳の時に結婚して、この店に立ち始めたの」

お客さんが待つ店まで、リュックサックを背負って歩く

店内の一角に大屋律子さんと夫・清さんの写真が貼られている

▲お店の片隅には夫・清さんとの思い出が詰まったコーナーがある

夫の清さんは、腎臓の病で10年前にこの世を去った。大屋商店は律子さんと、息子の妻であるゆきこさん含む親族で営まれている。

「息子は日本全国や世界も駆け回る仕事だったりしてね。そのかわりお嫁さんのゆっこちゃん(ゆきこさん)がここでよく働いてくれて、助かってる。もう何年になるのかなあ。ゆっこちゃーん! 結婚して何年!?」

お嫁さんのゆきこさん

▲奥の女性がゆきこさん

品出しをしていたゆきこさんが手を止めて、しばらく考えた後、「27年!」と答える。ゆきこさんは元銀行員で、律子さんの息子との結婚を機に大屋商店で働き始めた。

「27年! そんなに長いこと、この店を一緒に守ってるんだね、感謝しかないね。ゆっこちゃんは頭がよくて仕事が早い早い。私はもうあんまり動けないから、彼女がたくさん働いてくれるんですよ」

「動けない」と言っているが、律子さんは60年以上毎日、谷中の自宅から店までの道を自分の足で歩いて通っている。

段ボールの並ぶ通路に杖を持って立つ大屋さん

「朝の9時に家を出て、リュックサックを背負ってずーっと歩いてくるの。杖は必要になっちゃったけど、腰が曲がらないくらい足腰が強いのは毎日歩いてるからだろうね。歩いてるとみんなが声をかけてくれるよ。近所の人もみんな年寄りだから、お互い見守ってるんだよ。それで14時頃までお店に立って、いろいろな人とお話して、近くにいる娘の自宅に立ち寄って、そこでお風呂に入って、また家に帰ってくる。

身体はしんどくないよ。ご先祖さまが守ってくれてるからね。毎朝決まった時間に起きて、手を合わせるのが習慣なの。“今日も頑張って行ってくるからね。守ってね”って。ゆっこちゃんが用意してくれるごはんを供えて、同じものを食べて、私が大好きなコーヒーも一緒に飲む。私がいなくなったら、ご先祖さまのお世話をする人がいなくなっちゃうでしょう。ご先祖さんのためにも長生きしなくちゃね。孫たちも、“まだまだおばあちゃんを迎えに来ないでね”なんてお願いしてくれるのよ」

手を合わせ目をつぶっている大屋さん

変わっていく身体と生きながら、変わらないでいること

毎日元気に長年の習慣を続ける律子さんだが、一度、“もうお店に立てないかもしれない”と思わされる出来事があった。

「店の入り口で滑って転んで、頭を切っちゃったの。救急車がきて大騒ぎ。私は“救急車なんかいらないよ”って言ったんだけど、みんながダメだダメだって慌てて呼んで。来ちゃったら乗らなきゃいけないでしょ。病院について診てもらっていたら、家族みんながお店を空っぽにして飛んできたよ。

その時もずっとご先祖さまにお願いしてた。“入院させないでください。お得意さまがいっぱい待ってるから店に帰らせてください”ってね。結局切り傷の他には何もなくて、帰ってこられたの」

その時の傷は完治しているが、身体が年齢と共に衰えていくのを日々感じている律子さん。慢性腎臓病を患っており、かかりつけ医の元に通いながら、脳や身体の健康を維持する工夫を日常の中で行っているという。

大屋さんが椅子に座って遠くを指し説明している

「身体をあたためるのは大切だよ。夜は電気毛布をつけて、昼も身体中にカイロを貼ってね。……あら、これは昨日のだわ。剥がしてくれる?」

ダウンの下にはたくさんのカイロ。ひとつずつ剥がしていると、律子さんは言葉を続ける。

「剥がし忘れちゃったのね。物忘れはやっぱりあるね。何回もおんなじこと聞いちゃうの。あれはどこに置いた、今何をしようとしたっけってね。だから何でも紙に書く。転んで入院した時も、何十件もお見舞いをいただいたから、誰にお返しをしないといけないのかって全部書いてね。お返しをちゃんとしたら消して。それで何とかやってるの。うちに来ると紙がいっぱいあるよ」 

忘れないよう様々なことを書き留めたメモ紙

すべての人に訪れる老い。それでも律子さんがこんなに元気なのは、毎日歩いてお店に通い、店頭に立ってさまざまな人たちとコミュニケーションをとっていること、そして変わらない毎日を続けていくという強い意志と、支えてくれる家族やお客さんへの思いが理由なのかもしれない。

通りがかる人たちの、“おばあちゃん、元気?”の声かけに応えながら、律子さんは言う。

「毎年、近くの大きい神社に家族でお参りして、健康を祈るの。まだまだ大丈夫、頑張れる。来てくれるお客さんがいる限り、私はずっと変わらずここに立ってるよ」

ピンクのダウンを着て取材を受けた笑顔の大屋律子さん

取材・執筆:紡もえ
撮影:梶礼哉(Studio.ONELIFE)
編集:山口真央(ヒャクマンボルト)

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