認知症のご本人が入れ歯を外してしまうケースは少なくありません。このような行動は記憶の混乱や認識力の低下が関係しています。
入れ歯を紛失した場合は探したり、作り直したりする必要があり、ご家族への負担にもつながります。
認知症のご本人が入れ歯を外す理由
下記などの理由が考えられます。
- ・新しい入れ歯へ適応するのが難しい1。「入れ歯の着脱」という行為そのものを忘れてしまい、拒否するようになる2
・医療者の開閉口等の指示に応じられず、痛みを知覚しても適切に表現ができないために義歯調整が十分に行えない1
・義歯を使用しない軟食の摂取が習慣化していることにより、入れ歯装着の必要性が少なくなっていること1
ご家族はどのような対策を取ると良いか
認知症の当事者は入れ歯を装着している方もいますが、認知機能が低くなるにつれてセルフケアが困難になり、入れ歯の衛生状態が不良になります。そのため、ご家族などの介護者が衛生管理を行う必要性が出てきます3。
洗浄時の入れ歯の破損や洗浄剤の誤飲・誤嚥、装着時・取り外し時の歯牙や粘膜の損傷など、入れ歯の衛生管理時に発生しうる有害事象に対して、介護者もご本人と一緒に歯科医の説明を受けるようにしましょう3。
入れ歯の保管方法
必ず専用のケースに入れて保管するようにして下さい。ティッシュに包んで保管し、ゴミと一緒に捨ててしまう事例が多くあります。
入れ歯に名前を書く
入れ歯の取り違えや紛失を防止し、入れ歯の管理をより確実にするために、義歯に名前を入れて個人識別ができるようにしておくこと(デンチャーマーキング)は、ひとり歩きや災害時の身元確認にも有効であると考えられます4。
ご家族の負担を軽減する方法
ご家族が認知症のご本人を介護する際、入れ歯に関する問題がストレスとなることもあります。その場合、ご家族だけで悩まずに、負担を軽減できる方法を専門家に相談しましょう。訪問歯科を行っている歯科医院を探してみたり、デイサービスを利用したり、認知症の支援を行っている団体に相談するのも良いでしょう。
まとめ
認知症のご本人が入れ歯を外す背景には、さまざまな要因があります。適切な入れ歯の管理、声かけの工夫、安全な環境づくりなどを無理の無い範囲で行いましょう。
また、ご家族の皆さんが疲れてしまわないように、専門家に相談することも大切です。症状に合わせた対応を心がけながら、無理のない範囲でご本人をサポートしていきましょう。