健康診断などで「腹囲が基準値を超えています」などと言われたことはありませんか?
ひょっとすると、お腹の内臓まわりに脂肪(内臓脂肪)が蓄積しているのかもしれません。
この記事では、メタボリックシンドロームにおける腹囲の意味や正しい測定方法、腹囲が基準を超えた場合に注意すべき健康リスクについて、また、認知症との関連性や改善に向けた生活習慣の見直しポイントも詳しく解説します。
メタボリックシンドロームにおける腹囲とは
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型の肥満に高血圧、高血糖、脂質異常といった複数の危険因子が重なった状態を指します。この状態になると動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳卒中など危険な病気のリスクが高まります1。
単にお腹周りが大きいだけではメタボリックシンドロームとは診断されず、血圧や血糖値、血中脂質の異常を合併していることが診断の基準になります。ここでは、メタボリックシンドロームにおける腹囲の意味と役割について説明します。
腹囲で内臓脂肪の蓄積がわかる
腹囲は、内臓脂肪の量を推定するための簡便な指標です。
腹部のCTスキャンなどで正確に内臓脂肪面積を測定する方法もありますが、健診の場など一般には難しいため、代わりに腹囲の値が用いられています。日本では腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合、内臓脂肪の蓄積が多いと判定します2。
このように腹囲の値が基準値を超えて大きいほど内臓脂肪が多い傾向があり、内臓脂肪型肥満と判断されます。
メタボリックシンドロームの診断基準
- メタボリックシンドロームの診断には、腹囲に加えて、以下のような検査値が基準値以上という条件があります2。
・ 脂質異常:中性脂肪が150mg/dL以上 または HDLコレステロールが40mg/dL未満
・ 高血圧:収縮期血圧が130mmHg以上 または 拡張期血圧が85mmHg以上
・ 高血糖:空腹時血糖値が110mg/dL以上
以上の3項目のうち 2つ以上が当てはまる場合に、腹囲の基準超えと合わせてメタボリックシンドロームと診断されます。なお、これらの項目で薬物治療を受けている場合も該当項目ありとみなされます。
腹囲の正しい測定方法
腹囲は自宅でも測定できますが、正しい方法で測らないと正確な値は得られません。ここでは腹囲を正しく測る手順とポイントについて説明します。
まず立位でおへその高さにメジャーを水平に当て、軽く息を吐いた状態で測定するのがポイントです。腹囲を測るときは足を肩幅程度に揃えて真っ直ぐ立ち、両腕は体の横に自然に垂らしてリラックスします。お腹に力を入れないようにしながら、ちょうどおへその高さの位置に柔らかいメジャーを当てて腹囲を一周させます。
この時、メジャーが床と平行になるよう腰回り全体に水平に巻きつけ、きつく締め付けすぎないよう注意しましょう。普通の呼吸で軽く息を吐いたところのタイミングで、メジャーの目盛りを読み取ります。できれば下着や薄着の上から直接測るようにし、食事直後や飲酒直後は腹囲が一時的に増えることがあるため避けたほうが良いでしょう3。
以上の方法で定期的に自分の腹囲を測定して記録しておくと、増減の傾向が把握でき健康管理に役立ちます。
メタボリックシンドロームの健康リスク
メタボリックシンドロームの方は動脈硬化が進行しやすくなります。内臓脂肪の蓄積により高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が引き起こされ、これらが重複することで血管への負担が高まるためです。
その結果、将来的に心疾患や脳卒中などの重篤な心血管疾患を発症するリスクが高まります1。実際、日本人の死因上位を占める心臓病や脳卒中は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満などの危険因子が重なった方ほど起こりやすいことがわかっています2。
さらに、メタボリックシンドロームは、動脈硬化を介して心臓や脳の病気以外にもさまざまな疾患リスクを高めます。危険因子が1つ増えるごとに、心血管疾患の発症リスクが段階的に上昇することも明らかになっており、なるべく早めに予防、改善に取り組むことが重要です2。
メタボリックシンドロームにより認知症のリスクが高まる?
メタボリックシンドロームと関連のある肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症は、認知症の修正可能なリスク因子としても知られています4。
肥満と認知症
肥満は認知症のリスク要因の1つと考えられています4。過剰な内臓脂肪は全身に慢性的な炎症を引き起こしやすく、また糖尿病や高血圧など他のリスクも誘発します。
実際、中年期(35〜65歳)に肥満であった方は、後年に認知症を発症するリスクがおよそ30%高かったと報告されています5。
高血圧と認知症
高血圧の状態が長く続くと動脈硬化が進行し、脳の細い血管が詰まったり破れたりして脳梗塞や脳出血を起こしやすくなります。脳血管障害は、そのまま血管性認知症の原因にもなります。
高血圧を予防、治療し適正な血圧を維持することは、脳卒中や認知症といった他の疾患への影響という観点からも重要です。
糖尿病と認知症
糖尿病も認知症のリスク要因の1つと考えられています4。
糖尿病患者では中高年期における認知症の発症率が明らかに高く、メタ分析では糖尿病の人は糖尿病ではない方に比べて認知症になるリスクがおよそ1.5〜2倍と報告されています6。
糖尿病の予防と適切な血糖コントロールを行いましょう。
脂質異常症と認知症
脂質異常症と認知症の関係としては、近年の大規模研究により、中年期(18〜65歳)において高LDLコレステロールに対応することで、認知症のリスクを7%低減できる可能性が示されています4。
動脈硬化の危険因子である脂質異常症を放置することは脳血管障害のリスクが高まり、血管性認知症の要因になることがあるため、食事や運動などの生活習慣の改善を2~3カ月行い、それでもコレステロール値や中性脂肪の数値が改善しない際は医師に相談してみましょう。
腹囲が基準値を超えている場合にやるべきこと
もし健康診断などで腹囲が基準値を超えている、あるいはメタボリックシンドローム予備群または該当と判定された場合でも悲観する必要はありません。
以下のような生活習慣の見直しを継続することで、腹囲の減少ひいてはメタボリックシンドロームの改善、解消が期待できます。焦らず、できることからコツコツと実践していきましょう。
- ・ 食生活の改善
・ 適度な運動習慣
・ 禁煙
・ 十分な睡眠
・ ストレス管理
・ 定期的な健康チェック
まとめ
腹囲はメタボリックシンドロームの重要な指標です。腹囲が基準値を超え、さらに高血圧、高血糖、脂質異常といった危険因子が重なる状態になると、動脈硬化が促進され、心筋梗塞や脳卒中の要因にもなります。
これらは改善不可能なものではなく、適切な食事や運動などによる生活習慣の見直しによって改善、予防が期待できます。健康的な生活を続けることで、年齢を重ねても健やかで自立した毎日を送れるよう、今からしっかりと備えていきましょう。