糖尿病は進行性の疾患(病気)で、血糖値が高い状態が続くと全身の血管にさまざまな支障をきたす可能性があります。
合併症の発症や進行を防ぐためにも、早期発見と適切な血糖コントロールが重要です。
糖尿病の合併症はなぜ起こるのか
糖尿病になると高血糖状態が続き、血液中のブドウ糖が過剰になると、血管内皮細胞や神経細胞に直接的なダメージを与え、過剰な糖が体内のタンパク質と結合して「終末糖化産物(AGEs)」という物質を形成し、血管壁や神経組織を傷つけます1。
1型糖尿病においては、HbA1c値が7.0%より高くなると細小血管障害のリスクが増加するとされていますが、2型糖尿病においても高血糖状態の継続と細小血管障害は関連性が高いとされています2。
血管の損傷は自覚症状に乏しいため、定期的な検査による早期発見が重要となります。
糖尿病が引き起こす主な合併症
糖尿病で引き起こされる合併症は、大きく2種類に分類することができます。それぞれの血管障害のなかでさまざまな疾患が引き起こされます。
・細小血管障害
・大血管障害
細小血管障害
細小血管障害は網膜や腎臓、神経など、全身の細い血管に影響を及ぼす合併症で、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症の三大合併症を引き起こす可能性があります3。
大血管障害
大血管障害は動脈硬化を促進し、重要臓器に深刻な影響を及ぼし、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患を引き起こす可能性があります。
糖尿病の合併症は早期発見が重要
糖尿病は自覚症状がないまま進行する疾患(病気)であるため、身体に違和感を感じ始めた時にすでに合併症を発症、進行している可能性もあります。
合併症の発症を防ぐためにも、検診を受けるべき頻度や症状が出現するタイミングについて理解しておきましょう。
定期的な検診
糖尿病の合併症の早期発見・予防のため、薬物治療の開始・変更・追加時には2~4週ごと、安定期には2~3か月ごとの受診が推奨されています4。足の診察や神経所見、眼底検査などは最低1年ごとに行い、症状や進行具合に応じて適宜頻回に経過を確認しましょう。
合併症の進行順序と出現時期
糖尿病の細小血管障害において、神経障害は早ければ半年から1年、網膜症においては10年以上、糖尿病性腎症は10~15年の糖尿病罹患期間があると発症リスクが上昇します5,6。
大血管障害は、糖尿病を始め脂質異常症や高血圧症の予防を行うことで進行速度を遅らせる可能性があります7。
糖尿病は認知症を引き起こす要因にも
糖尿病を患っている場合、アルツハイマー病を1.5倍、血管性認知症を2倍発症しやすいと言われています8。このことからも血糖値に異常が見つかった場合は早めに受診し、適切な対処や治療を受けることが大切です。
糖尿病の合併症を防ぐための対策
糖尿病の合併症を予防するには血糖や体重、血圧、脂質の良好なコントロールを維持しなければなりません9。
そのためにもさまざまな対策が必要となります。
治療薬を自己判断で中止しない
糖尿病の進行を遅らせるためには食事療法や運動療法はもちろん、医療機関への受診を継続して行うことが重要です。
薬物治療による血糖コントロールが合併症抑制効果と強く関連しており、定期的な受診により適切な治療を継続することが大切です9。
また血糖値の自己管理と定期的な検査を組み合わせることで、早期に異常を発見できる可能性もあります。
目の違和感を見逃さない
糖尿病網膜症の早期発見には、定期的な眼科検査が不可欠です。
・視界がぼやける
・急に見えにくくなる
・視界に黒い点が浮かぶ
上記の症状があらわれる段階では、網膜症がすでに進行している可能性があります10。
適切な食事管理
以下の点に注意して食事管理を行いましょう。
・適切なエネルギー摂取量を維持する
・バランスの良い食事をとる
・規則正しい時間に食事をする
運動習慣をつける
運動療法は以下の点に注意して実施しましょう11。
・レジスタンス運動(筋肉トレーニング)、有酸素運動の順に実施する
・運動の強度は身体の状態にあわせ、医師と相談したうえで決める
・総エネルギーの消費量として、家事や通勤など低~中等度の強度も考慮する
まとめ|糖尿病の気をつけたい合併症とは?早期発見と予防が大切です
糖尿病の合併症は、高血糖症状が続き、終末糖化産物(AGEs)という物質が形成されて血管壁や神経組織を傷つけることから起こりますが、早期発見と適切な治療により予防したり進行を抑制できる可能性があります。
初期段階ではほとんど自覚症状がないため、定期的に医療機関を受診すると同時に生活習慣の改善を継続しましょう。