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「認知症の親が施設の入所を嫌がる場合、どのように対応すべきでしょうか?」ご本人との向き合い方や説得のポイントを解説
更新日:2026-04-28

「認知症の親が施設の入所を嫌がる場合、どのように対応すべきでしょうか?」ご本人との向き合い方や説得のポイントを解説

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外出を嫌がっている高齢者

認知症の親の介護を続けるなかで、施設入所を検討し始めたものの「本人が嫌がっている」「どう伝えればいいかわからない」と悩む方は少なくありません。施設への入所を拒否されると、家族としても「無理に入れていいのだろうか」と迷ってしまうものです。本記事では、親が施設入所を嫌がる理由をはじめ、説得の際に避けたいNG行動、話し合いのポイント、そして入所後に大切にしたいことを解説します。

認知症の親が施設入所を嫌がる・拒否する主な理由

親が施設への入所を拒む背景には、さまざまな要因があります。無理に説得しようとする前に、まずはご本人がなぜ嫌がるのかを理解することが大切です。

慣れない環境の不安・恐怖

認知症のご本人にとって、長年暮らしてきた自宅は安心できる場所です。顔なじみのご近所の方々、使い慣れた家具、長年の生活リズムが日常の一部になっています。こうした環境を離れて新しい場所へ移ることは、想像以上に大きなストレスになります¹。また「施設に入る=もう家に帰れない」というイメージから、恐怖心を抱く方も少なくありません。

判断が難しくなっている

認知機能の低下が進行すると、ご自身の状態を客観的に把握することが難しくなります。「まだ自分で生活できる」「家族に迷惑はかけていない」と考え、施設入所の必要性を感じられないケースは多くあります。

このような状況で家族が施設の話を持ちかけると、「自分を厄介者扱いしている」「追い出そうとしている」と受け取られ、強い拒否につながることも少なくありません。ご本人なりの理由があって拒否していることを理解しておきましょう。

他人の世話になることへの抵抗感

「まだそこまで衰えていない」「人に迷惑をかけたくない」という思いは、多くの高齢者に共通するものです。特に自立心が強い方ほど、他人の世話になることそのものに強い抵抗を感じやすい傾向があります。

施設では介護スタッフのサポートを受けながら生活することになるため、「そこまでしてもらう必要はない」と感じ、拒否につながることも少なくありません。

施設に対するネガティブなイメージ

「施設は暗くて寂しい場所」「自由がない」といったネガティブな印象を持つ高齢者も少なくありません。テレビや噂話などで聞いた情報から、施設に対して偏ったイメージを抱いているケースも見られます。

実際には、近年の介護施設は明るく開放的な雰囲気のところが多く、ご本人の意思を尊重したケアが行われています。しかし、こうしたネガティブな印象が先行していると、話を聞く前から拒否反応を示してしまうこともあります。

説得する時の「NG行動」と「NGワード」

施設入所の話し合いでは、伝え方を間違えると親との信頼関係を損ねてしまいます。以下のような行動や言葉は避けましょう。

感情的に怒る・責める

日々の介護疲れが蓄積していると、つい感情的になってしまうのは誰にでも起こりうることです。ご自身を責めすぎないでくださいね。ただ、話し合いの場で感情をぶつけてしまうと、ご本人は「嫌われている」と感じてしまいます2

話し合いの前に深呼吸をする、一度その場を離れて気持ちを落ち着けるなど、冷静さを保つ工夫をしましょう。

正論で論破しようとする

「転んだら大変でしょう」「火の始末ができないのに一人で暮らせるわけがない」など、正論を並べて説得しようとするのは逆効果です。理屈では正しくても、ご本人にとっては「自分を否定されている」と感じます。正しさを押し付けるのではなく、不安な気持ちに寄り添う姿勢が大切です3

無理やり連れて行く

嘘をついて施設へ連れて行ったり、無理やり連れ出したりすることは避けてください。このような方法は、ご本人の心に深い傷を残します。

「騙された」「裏切られた」という思いは、家族への不信感につながり、入所後の生活にも悪影響を及ぼします。無理に進めるのではなく、ご本人の気持ちに寄り添いながら、納得できる形で入所につなげていくことが大切です。

施設入所を話し合う際に大切なポイント

施設への入所を考え始めたとき、いきなり「施設に入ろう」と切り出しても受け入れてもらうのは難しいでしょう。ご本人に納得してもらうためには、事前の準備と伝え方の工夫が必要です。

施設入所が必要な理由を明確にする

まず家族自身が「なぜ施設入所が必要なのか」を整理しておきましょう。以下のような点を明確にしておくと、話し合いの際に説得力が増します。

  • ・   このまま在宅介護を続けることのリスク(介護する方の体調悪化、共倒れの可能性など)
    ・  在宅生活で生じている具体的な危険(転倒、火の消し忘れなど)
    ・  施設に入ることでご本人が得られるメリット(専門的なケア、安全な環境、社会的な交流など)

感情的に「もう限界だから」と伝えるのではなく、具体的な理由を示すことで、ご本人も状況を理解しやすくなります。

親が自分らしく生活できる施設を検討する

「施設」と一口に言っても、特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホームなど種類はさまざまです。それぞれ特徴や費用、受けられるサービスが異なります。

親の身体状態、認知症の進行度、性格、経済状況などを考慮し、ご本人が自分らしく過ごせる施設を選びましょう。家族が面会に行きやすい立地かどうかも大切なポイントです。

施設選びの段階からご本人の希望を取り入れることで、「自分で決めた」という納得感につながります。

話を切り出すタイミングを見極める

認知症のご本人に施設の話を切り出すタイミングは重要です。体調が悪いときや機嫌が良くないときに話を持ちかけると、拒否反応が強くなりがちです。

以下のようなタイミングを見計らいましょう。

  • ・    体調が良く、穏やかに過ごしているとき
    ・    日常生活で困ったこと(転倒、もの忘れなど)があった直後
    ・    ご本人自身が「最近不安だ」と漏らしたとき

突然の話題として切り出すのではなく、日頃から将来の暮らし方について少しずつ話題にしておくと、いざというときに受け入れてもらいやすくなります。

親の気持ちを否定しない

説得する際にもっとも大切なのは、親の気持ちを否定しないことです。「施設は嫌だ」という言葉の裏には、さまざまな不安や恐怖が隠れています。

「そんなこと言わないで」「わがまま言わないで」と否定するのではなく、「不安だよね」「住み慣れた家がいいよね」とまずは気持ちを受け止めましょう。

そのうえで「どうしたら安心して暮らせるかな」と一緒に考える姿勢を見せることで、ご本人も心を開きやすくなります2

ケース別に見る説得時の対応方法

施設入所の話し合いを進めるなかで、親から強い拒否を示されたり、話を先送りにされたりすることがあります。状況に応じた対応方法を知っておきましょう。

強く拒否される場合

「絶対に行かない」と強く拒否される場合は、無理に説得しようとせず、いったん話を引きましょう。焦って進めると、かえって反発を招きます。

時間をかけて少しずつ受け入れてもらうことが大切です。まずは「体験入居」や「ショートステイ」など一時的な利用を提案してみましょう。実際に施設の雰囲気を知ることで、不安が和らぐ場合があります。

まだ大丈夫と考えている場合

「まだ大丈夫」「その必要はない」と話を先送りにしようとする場合は、実際の生活で起きている困りごとを具体的に伝えましょう。

たとえば「最近、転びやすくなっているよね」「薬を飲み忘れていることが多いよね」など、日常の出来事を例に挙げると伝わりやすくなります。

また、家族の言葉だけでなく、かかりつけ医やケアマネジャーなど第三者の意見を伝えることで、状況をより客観的に受け止めてもらえる場合もあります。

感情が高ぶる場合

施設の話をした途端に怒り出したり、泣き出したりする場合は、まず気持ちを受け止めることを優先しましょう。「嫌だよね」「不安だよね」と共感を示すことで、少しずつ落ち着きを取り戻せます。

感情が高ぶっているときに説得を続けても逆効果です。その日は話を切り上げ、落ち着いたタイミングで改めて話し合いましょう。

どうしても納得を得られない場合

さまざまな方法を試しても納得を得られない場合は、施設のスタッフに相談してみるのも一つの方法です。入所を拒否する方は珍しくないため、状況に合った進め方をアドバイスしてもらえます。

また、ご本人の気持ちが少しでも前向きになったタイミングで、一緒に見学や体験入居に行ってみましょう。実際の雰囲気に触れることで不安が和らぎ、入所への抵抗感が薄れることもあります。

候補先の施設にデイサービスやショートステイがあれば、入所前から利用しておくのもよいでしょう。あらかじめスタッフや環境に慣れておくことで、いざ入所となったときにご本人も安心して新しい生活をスタートしやすくなります。

家族で意見が割れる場合にはどうしたらいい?

施設への入居は、家族の間でも意見が割れやすい問題です。まずは家族全員で話し合う場を設け、親の現状や介護の負担について情報を共有しましょう。

普段介護に関わっていない家族ほど、「まだ施設は早いのでは」「かわいそう」と言いがちです。しかし、日々の介護の大変さは、実際に携わっている人にしかわかりません。

それぞれの考えや感情を尊重しながら、「最善の選択は何か」を共通の目標として話し合うことが大切です。施設の立地や費用負担の分担など、全員が納得できる妥協点を見つけていきましょう。

意見がまとまらない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員など第三者を交えて話し合うのも一つの方法です。

施設へ入所した後に大切にしたいこと

入所後に大切にしたいのは、親との関わりを保ち続けることです。定期的な面会や電話、オンライン通話、手紙などを通じてつながりを維持しましょう。

施設のイベントに家族が参加するのもよい方法です。家族とのつながりを感じられることで不安が和らぎ、施設での生活にも馴染みやすくなります。

また、施設に任せきりにせず、親がどのように過ごしているかをこまめに確認することも大切です。気になることがあれば遠慮せず施設に相談しましょう。家族からの情報があることで、施設側もより良いケアを提供しやすくなります。

親が安心して暮らせる環境を一緒に整えていくことで、家族自身も「施設を選んでよかった」と前向きに思えるようになるでしょう。

施設入所をめぐる家族の葛藤とは?

家族にとって、施設入所の決断は簡単なことではありません。「介護を人任せにした」「親を見捨てることにならないか」と罪悪感を抱く方も多いでしょう。特に親が「自宅で最期まで暮らしたい」と望んでいる場合、その葛藤はさらに深まります。

罪悪感を抱かなくていい

認知症の親を施設へ預けることに罪悪感を覚える必要はありません。暮らしの場が自宅から専門的な環境に変わるだけであり、決して閉じ込めることを目的とした場所ではないからです。施設ごとのルールはありますが、好きなものを食べたり、家族との面会や外出を楽しんだりすることもできます。自宅で使っていた時計や飾り物など、馴染みのあるものを持ち込むことも可能です。

もちろん新しい環境に慣れるまでは時間がかかることもありますが、介護のプロにケアを任せることで、かえって穏やかに過ごせるようになる方もいます。

在宅介護を続けるリスクも考える

在宅介護は心身ともに大きな負担がかかります。特に認知症の介護は長期化しやすく4、無理を続けることで介護者が体調を崩したり、共倒れになるケースも珍しくありません。

施設に入所することで介護負担が軽減され、親とより穏やかに向き合えるようになることもあります。親だけでなく家族全員がより良い生活を送るための選択として、施設入所を前向きに捉えてみてください。

施設入所後に親と家族が良好な関係を築くために

親が施設入所を嫌がる場合、家族は「どう説得すればいいのか」「この判断で本当によいのか」と悩みがちです。大切なのは、無理に結論を急がず、ご本人の不安な気持ちに寄り添いながら向き合うことです。

施設入所に納得してもらうためには、施設選びや伝え方などの事前準備が欠かせません。時間がかかることもありますが、焦らず段階を踏んで進めることが、結果的にお互いの負担を軽くします。

介護に疲れや迷いを感じている場合は、早めに担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。一人で抱え込まず専門家の力を借りることで、親にとっても家族にとっても納得のいく選択が見えてくるはずです。

参考文献

1, 厚生労働省:認知症を理解する.
[https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html](最終閲覧日:2026年1月25日)
2, 厚生労働省:認知症の人と接するときの心がまえ.
[https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/a04.html](最終閲覧日:2026年1月25日)
3, 国立長寿医療研究センター 認知症の方と関わるとき〜大切な7つのポイント〜.
[https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/55.html](最終閲覧日:2026年1月25日)
4, 公益社団法人「認知症の人と家族の会」中等度・重度認知症の人の在宅生活継続に関する調査研究事業報告書.
[https://www.alzheimer.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/202303rouken-houkokusyo.pdf](最終閲覧日:2026年1月25日)

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